#映画感想文 「ラストマイル」⭐︎3 物足りない!
野木脚本×塚原監督×新井プロデューサーによる期待の作品
朝から、ビールとポップコーンで鑑賞
普通におもしろいのですが、物足りない。。
世界線が「アンナチュラル」×「MIU」と同じ軸ということなのですが、
キャスト以外はなかなかわかりにくい
さらに、尺が足りず、核心を描ききれていないのでは?
◯共通点1 立地
立川モノレールあたりの巨大倉庫、西武蔵野署管内
確かに、UDIラボは中央線沿線のイメージ
近そうではある
◯共通点2 生活感ある職場
このワールドは、職場に生活感を持ち込む
UDIには中堂が住み着き、MIUはみんなで料理する
本作では、エレナがポチって、倉庫から調達した
テント・スエットで宿泊し、マグカップのスープで落ち着く
ホームワークは声を大にして反対!
仕事場に生活を!
◯物語の核心
企画を通すために
UDI×MIUワールドを組み込み、
尺が延びてしまい・・・
映画の2時間では物足りない感
塚原監督得意の遠景使うロケも少なめ
これ日曜劇場でやればよかったのでは?
爆弾はさておき、物流問題がテーマになっている
届くかどうかだけでなく、
働くことへの制作陣の優しく厳しい眼差しがある
この映画は「お仕事系」だが、
物流関係はほんとにココに核心がある思う
2000年あたりまでは、
宅配ドライバーは高給取りだったと聞く
金はないが力はある男たちが、
2-3年も宅配ドライバーやればひと財産でき、
自分のトラックを買って自立できたらしい
マジックワードの「カスタマー・セントリック」どおり、私自身もポチっと押すECをよく使うようになり、物流は爆発的に増えた
物流大手は数を追い単価をさげ、規模を拡大する戦略をとった
結果、プラットフォーマーからは荷物を回さないと脅されるポジションになっている
運ぶ男たちからすれば、ある日突然、
誇りも金もあった仕事が、
なぜか辛いワンコイン労働に転換された
運送する高齢者に、自転車ではなく、演技する火野正平が出演しているが、
まさにこの年代の人たちの思いだろう
この背景が理解できていないと、
山崎の「ブラックフライデーが怖い」が結びついたエレナ提案の物流ストや
「いい仕事した」と「たった20円」のギャップが理解し辛いのではないか?
ラストのラストに
母へのプレゼント=羊枕をエレナが手持ちするほうが早い!
という、物流・ECビジネスに対する、ある種の皮肉で丸め込んでいるわけだが。。
◯隠喩としての「オッペンハイマー」
夏の映画には似つかわしくない、冬めいた映像が多い
豪華なキャスティングを考えると、ここでしか作れないタイミングで撮った風
一方で、10月からの日曜劇場が本作の制作陣であることを考えると
当然番宣的な要素もあり、
夏に上映することは、かなり早い時期に決まっていたのだろう
突然、物語のラストへ加速させる、婚約者まりかの死の悲惨な業火
自ら炎に包まれ、爆弾を炸裂する
VFXというより、アニメーション的な塚原節だ
ノーランがオッペンハイマーで
描ききれなかった「原爆による死」を、
映像として超えている
制作陣の読みがあったとすれば、
観にくる客層は社会問題を観たい「オッペンハイマー層」
たぶん、その映像も知った上での演出だろう
本作のメインテーマの物流問題は、
確実にアメリカのECビジネスが流れ込んだ結果であり、
便利になったが、有無を言わせない論理や数字で働く人たちには辛い環境を作り出した
さらには本来ビジネス構造に関係のない恋人が自死する
生命の搾取!
焼身するとは「反意の表明」でもある
アメリカ>戦争と関係ない民間人を焼いた「原爆」と大差がないのではないか?!
野木脚本らしくエスプリの効いた中堂の「根性あるな」で丸め込んでいるが、
どうにもならない、シニカルだが、古くさくて新しい左翼的な「NO!」が感じられるのは私だけだろうか?
◯最後にお願い
本チーム制作の「海に眠るダイヤモンド」も期待してますが、
3年後あたりで、本作を日曜劇場の尺でリメイクして欲しい!!