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ケルン チョコレート博物館へ

いつでも行けると思っていると、なかなか行けない場所がある。
ケルンにあるチョコレート博物館も、そんな場所の一つだった。
友達に誘われ、私はようやくこの博物館を訪れることができた。
ライン川の中洲に建てられた博物館。

屋上からの眺めは、まるで船の先頭にいるかのよう。

見学前に、博物館に併設されたカフェで、チョコフォンデュとケーキをいただく。

いよいよ博物館へ。

博物館見学に加え、90分のガイドツアーを申し込んでみた。
最初の説明場所は、カカオの樹の模型。
カカオの実は枝に成るのではなく、幹に直接成るという珍しい植物だそうだ。
これは、カカオの実が1キロ程にもなるため、枝では支えられないからだという。

カカオは、元々は南米が原産地。
生産量はアフリカ、特にコートジボワール産が一番多い。
その量は2位を大きく引き離し、断トツの212万トン。

アフリカ、アメリカ、そしてアジアが、カカオ豆の三大生産地。

一年中カカオの花が咲き、一本の木に熟していない実も収穫できる実も、全て同時期に成っているという。
そして、一本の木から収穫できるカカオの実は、一年間で多くても30個ほどだそう。
上記の通り、一気に収穫できる時期はなく、手作業で分別しながら木から切り離すので、とても手間のかかる作業だ。
そして、カカオの実一つから生産できる量は、なんと板チョコたった一枚だそうで、とても貴重なものだと知ることができた。

カカオの実を割り、中の豆を取り出す。
この中味も美味だそう。
この豆を発酵させ乾燥した状態で、世界各地に輸出されるが、この乾燥作業も手作業らしい。

ドイツの主要港はハンブルク。
コンテナに乗せられたカカオ豆は、港の倉庫で更に保管され、生産者工場へ出荷される。

このコンテナの前で、ツアー見学者一人一人にカカオ豆が配られた。
匂いを確認するように促されて嗅いでみると、少し酸っぱい感じだ。
割って食べてみると(当然ながら)カカオ濃度の高いビターチョコのよう。

ヨーロッパでは、ドイツが最大のチョコ生産国。消費量もスイスに次ぐ2位。

チョコのカカオ含有量を可視化した展示。 
ビター、ミルク、そしてホワイトチョコ。
例えばビターチョコ70%の場合、カカオの含有量は55%程で、カカオバターを含めて70%。
そして残りは砂糖。

ここからは、カカオ豆からチョコへの生産工程の展示。
この階にやってくると甘〜いチョコの香りが漂ってくる。
焙煎機、グラインド、ミキサーを通しチョコが出来上がる。

この先には、この博物館の目玉でもあるチョコフォンデュが!
この階の甘い香りは、このフォンデュからのもので、誰もが、うわぁ!と声をあげてしまう。
このフォンデュは高さ3メートル、金色のカカオが80個装飾され、常に200キロのチョコで満たされているそうだ。

かつては、見学者が自由にチョコをすくっていたそうだが、今はスタッフのかたがウエハースにチョコをかけて手渡しして下さる。

ここからは、チョコの歴史に触れるコーナー。
チョコは、紀元前3500年頃から人々の生活の中にあったと推測されているそうだ。

発掘された食器には、猿がカカオの実を手にしている絵が描かれている。

チョコは長い間、飲む物として扱われてきた。かつ、高貴な身分の者だけが口にできるものだった。
後には、カカオが貨幣と同等の価値を持った時代もあったというから面白い。
チョコレートの語源は、xocolliとati。
意味は、苦い水だそう。

チョコが、薬として使われていた時代も。

砂糖が加えられるようになると、チョコは嗜好品として爆発的な人気となったそう。

ガイドさんのお話によると、1847年がチョコにとって大切な年だと言う。
現代の私達にとって身近な存在である、板チョコが発明された年で、液体から固体チョコへの変換期といえる。

ここからは、ツアーでしか入れない部屋。
チョコの自動販売機がずらりと並んだ部屋で、それまで説明されたチョコ成分について、実際に試食しながら説明して下さる。

チョコレート、カカオバター、ミルク、そして砂糖が主な成分。

ピュアなカカオはとても苦く、思わず吐き出してしまうお子さんも。

カカオバターは、カカオニブをペースト状にして圧搾して作られる。
味は、まるでリップクリームをかじってしまったかのよう。 

実際にカカオバターは、リップクリームをはじめとして、美容クリームなどに使われており、とても高価だそうだ。

こうしてチョコ成分が紹介され、それらが一つずつ加えられていったチョコを食べ比べると、段々と私達の知っているチョコに近づいていくのが面白い。
チリ入り、コーンフレーク入り、最後にはパチパチキャンディーの入ったチョコが配られ、子供さん達は大喜び。

ここで、ツアーは終了。
残りの時間は、自由に博物館を見学できる。
ドイツ国内でよく知られているチョコブランドの紹介コーナー。

手作業を見学できるコーナーも。
世界でたった一つの、自分好みのチョコをオーダーできるコーナーも。

入り口近くには、熱帯雨林を再現した温室も。
カカオだけでなく、パパイヤの木も栽培されていて、大きな実を付けていた。

入り口には、博物館のパートナー、リンツショップがある。
博物館で毎日作られているチョコも、ここで販売されていた。

綺麗に並べられた美味しそうなチョコ。

入り口で、博物館チケットと共にリンツのチョコを手渡されたのだが、館内でも籠をチョコでいっぱいにしたスタッフさんが、歩きながらチョコを配っている。
見て楽しく、食べて美味しい博物館だ。

こちらが博物館正面入り口。
私達は、屋上に出てからカフェに入り、そのまま博物館見学を始めたので、正面入り口を最後に見ることになった。

この博物館で特記すべきなのは、年間65万人以上が訪れるというケルンの一大観光名所でもあるこの博物館が、家族経営だということ。
リンツはあくまでパートナーであって、スポンサーや所有者ではない。
1993年にこの博物館が設立されてから2006年までは、Barry Callebaut社がパートナーだったそうだ。

ケルン出身のHans Immhof氏は、赤字だったStollwerk社を買収し、ヨーロッパ有数のチョコレート製造会社に成長させた。
彼は有能な経営者だっただけでなく、彼自身の言葉を借りるなら、チョコを愛していた。
そして、人々をチョコで喜ばせたいという夢から、この博物館を設立したのだそう。

ガイドツアーには子供さんがたくさんいたが、ガイドさんの質問に対して、競うように手を挙げて発言し、また積極的に質問していた。
その様子が可愛くて、思わずクスッと笑ってしまう場面が何度もあった。
チョコの製造過程から歴史に至るまでどの分野も、子供から大人まで誰もが興味深く楽しめるように作られている。
まさに、Immhoff氏のチョコ愛を感じる体験であった。

他にも、チョコを作る体験コース、テイスティングに焦点を当てたコースなど、時間ごとに様々なコースが準備されている。
博物館の見学だけでも充分楽しいが、ほんの少し時間をかけて、チョコをより深く知るのも面白いのではないだろうか。

ケルン大聖堂が象られたチョコをお土産にし、駅に戻る途中、夕焼けに染まり始めたケルン大聖堂。
美し過ぎて、思わず一枚。

デュッセルドルフのある州は、今週金曜日が祝日のため三連休。
お天気も良さそうなので、ケルンにお出かけするのはいかがだろうか。

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