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デュッセルドルフの美術館・博物館

久しぶりにデュッセルドルフの美術館を訪れたので、今回はデュッセルドルフ市内の美術館・博物館について。

まず、デュッセルドルフと芸術について。
この街には、デュッセルドルフ美術アカデミーと呼ばれる美術大学がある。
その歴史は1762年に遡り、ランベルト・クラーエLambert Kraheが作った私立学校が基だそうだ。
1609年、ベルク侯爵家の断絶により、デュッセルドルフはプファルツ選帝侯領となったが、この頃のデュッセルドルフの街と芸術の成長は、特に目覚ましかったそうだ。
市民からは、ヤン・ヴェーレンJan Wellemとして親しまれているJohann Wilhelm II。
彼はトスカーナ大公コジモ・ディ・メディチ家のアンナと再婚している。
彼らの音楽や芸術への功績は非常に大きいと、後世に語り継がれているようだ。

旧市庁舎前のヤン・ヴェレン騎馬像

1773年、この私立学校はプファルツ選帝侯領絵画、彫刻、建築アカデミー(Kurfürstlich-Pfälzische Academie der Maler, Bildhauer- und Baukunst)として土台が出来上がった。
その後、1800年頃に今の名前に改名された。

スイス生まれ、20世紀を代表する画家パウル・クルー。
後にカディンスキーに知り合い「青騎士(die Blaue Reiter)」の一員でもあった彼は、このアカデミーで教鞭を取った事がある。
(因みにデュッセルドルフの前は、ベルリンのバウハウスにて教鞭を取っていた。)
ケルン大聖堂のステンドグラスを作ったゲアハルト・リヒター(Gerhard Richter)も、同じくこのアカデミーで教鞭に立っている。
このように、デュッセルドルフは芸術と深く繋がっている街でもある。

デュッセルドルフ出身画家Peter von Cornelius。彼もアカデミー学長。

メディエンハーフェン MedienHafen

メディエンハーフェンMedienHafenは、ラインタワーの真下にある地域。
この街に引越して来たばかりの私を、この地域連れて行ってくれた友達は「ここは天井のない美術館」と紹介した。
現代アートの建物が造られていて、観光地にもなっている。
写真はラインタワーからの眺め。

その中でもフランク・ゲーリーの作品、Gehry-Bautenという建物は、デュッセルドルフの顔とも言える場所だ。
白、銀色、茶色の建物が3つ並び、明らかに他の建物とは違い、目を引く。
建物はオフィスや賃貸アパートとして使われており、内部には入れないが外から見るだけでもとても面白い。

この他にも、近くには現代アートの建物が多く、まさに天井のない美術館という言葉が相応しい。

クンストパラスト Kunstpalast

先日再訪したのは、この美術館。
Kunstは芸術、Palastは宮殿。

私がここを初めて訪れたのは、ルーベンスのマリア昇天が目的だった。
ルーベンスはマリア昇天を4枚描いているが、そのうちの一つがデュッセルドルフにある。
縦4メートル、横2メートルの大きな作品だ。

常設展とガラス細工のコーナー、現代アートのコーナーなど幅広い。
時間を忘れて見入ってしまうので、見終わった頃には足が棒のようになる。

現在こちらの建物は修復中で、作品は見る事ができない。
その代わり、Christo & Jeanne-Claudeの特別展が開催されていたので訪れた。
(期間延長され、1/29日まで開催中)

代表作、布に包まれたパリ凱旋門。

同じ日に生まれたという、このご夫婦。
妻に先立たれた後も、二人の構想案を実現させるべく奮闘していたクリスト。
残念ながら、完成を見る事なく亡くなってしまったが、その意思を継ぐ人たちによって、2021年9月に完成。

他にも、たくさんの作品や写真、構想スケッチが展示されている。

館内では、作品が出来上がるまでのドキュメンタリーが放送されていた。
作品となる場所は、まるで工事現場。
たくさんの人々がヘルメットを被り、命綱を着けて建物の頂上から布を被せていく。

ドイツで有名な作品は、ベルリンの連邦議会議事堂。

他にはケルンの大聖堂も。

日本の茨城でも、傘プロジェクトを実行できたそうだ。

また、白い布だと思っていたものは、実際にはポリエチレン製で銀色だった。
実際に作品に使われた布が、一部展示されていた。  
ドイツで使われた布は、全てドイツ国内で生産されたものだそうだ。

ゲーテ博物館 Goethe Museum

ゲーテの生家はフランクフルトにあり、そこは現在ゲーテ博物館となっている。
そして、デュッセルドルフにもゲーテ博物館がある。
かつてはヤコブ氏の住まいであり、ゲーテは知り合いであった彼を訪ね、この屋敷を何度か訪れた事があるそうだ。
そのような理由から、ゲーテにまつわる資料が集められている。

博物館の周りは美しい公園になっており、ここを散歩するのは私の楽しみの一つでもある。

蛇足だが、日本食レストランが並ぶインマーマン通りの由来、カール・インマーマンKarl Immermannの銅像は、この公園の一部Schauspielhausという劇場近くにある。
彼は司法官、作家、そして音楽家として活動していたので、劇場近くに銅像が建てられているのも頷ける。 

長い並木路の奥に、ゲーテ博物館がある。

若きウェルテルの悩み、ファウストの直筆の書や、一人の女性の肖像画を見たくて、この博物館を訪れた。
ベートーヴェンの「エリーゼのために」という曲はあまりにも有名だが、その女性の肖像画がここにあるというのだ。

しかし、どこを探しても目当ての物が見つからない。
私は、出口近くにいた係のかたに、どこにあるのか聞かねばならなかった。
その答えは、私をとても悲しませた。
なんと、別の博物館に貸し出し中という事で、ここにはなかったのだ。

これは、博物館があなたにもう一度ここに来て欲しいという、密かな願いかもしれないね。

心優しい係のかたの言葉で、残念な気持ちが薄れ、またここに来れば良いと思えた。

博物館内には、知人宛の直筆の手紙と、ゲーテの髪の毛などが展示されていた。

親切な係のかたに、Tschüss(さようなら)ではなく、Bis zum nächsten Mal! (また次回ね!)と声を掛けた。
係のかたは私の意図を理解してくださり、同じ言葉を返して下さった。

あれから、博物館の近くを何度も通っている。
次回はすぐにやって来ると思っていたのに、いつでも行ける環境が、その機会を後回しにさせてしまっているようだ。

映画博物館 Filmmuseum

アルトシュタットにある映画博物館も、とても面白い。
映画に使われた衣装、映画撮影装置、映画の歴史、また体験型のコーナーなど幅広い。

時々、日本の映画が上映される期間があり、現在ちょうど上映月間となっている。(2/4まで)
ご興味のあるかたはこちらを。

ネアンデルタール博物館 Neanderthal Museum

ネアンダルタール人の事は誰もが知っていると思うが、その骨が発見されたのは、デュッセルドルフのお隣メットマンMettmannという街だ。
ネアンダルタールとは、「ネアンデルの谷」の意味で、谷の地名である。
近くをデュッセル川が流れており、自然保護地域にも指定されている自然豊かな地域だ。

骨の発見場所は公園のような外部にあり、その近くに博物館が建てられている。
当時の生活を再現した内部は、とても興味深い。
子供から大人まで楽しめる博物館だ。

目の前に広がる起伏の大きい畑や森を見て、この土地に昔から人々が住み、博物館で再現されているような生活をしていたのだと想像すると、なぜか胸がドキドキした。

写真は博物館HPより

デュッセルドルフには、まだたくさんの美術館や博物館がある。
訪れた時の写真がないが、 K20と呼ばれる大きな美術館も、ライン川沿い、アルトシュタットの外れにある。

今年、Kunstpalastは修復を終え、館内全体の見学が再開される予定だ。
新しく生まれ変わった美術館が、今から楽しみだ。
また、美術館特有のあの空気を、思いっきり吸い込みたい。

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記事内で紹介した美術館、博物館のHP。

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