私の城下町
おいでませ。玻璃です。
古い武家屋敷に引っ越してから集団下校の恐怖から逃れることができた。
というのも、引っ越してすぐに近くに住んでいるヨシムラさんとタナカさんが武家屋敷に訪ねてくれて
「明日から一緒に学校に行こうね。」
と、言ってくれたからだ。
当然帰りも一緒だし、集団下校の教室も一緒に行ってくれた。
もちろん針の椅子ももうない。
もしかしたら、こっそり逃亡してたのが先生や親にバレていたのかもしれない。
毎日三人で登下校。
朝は話しながら歩く程度だが、帰りは時間に縛りがないためブラブラ寄り道をしながら帰る。
学校は市の中心にあり、そこから観光地で有名な萩城跡を目指して白壁のある城下町の景色を眺めながらの下校となる。
街から段々と離れてくると風情豊かな黒板壁が連なる「江戸屋横町」や、日本の道100選に選定された白壁の道「菊屋横丁」を左手に眺めながら歩く。
その道の突き当りに堂々と第26代内閣総理大臣、田中義一の銅像が立っている。
この銅像のある広場の事を萩市民は「田中大将(たなかたいしょう)」と呼んでいた。
この田中大将は私が小学生の頃、遊具が置いてあったので必ずここでひと遊びするのが恒例だった。
銅像の下のコンクリート部分にはちいさな石が埋め込まれていて、その中にハートの形をしたお気に入りの石があった。
なんと、昨年の帰郷でそのハートの石を見つけた。
40年以上経った今でも、その石の場所は何となく覚えていたので、当時よっぽど眺めていたのだろう。
ひと遊びするとお腹がすく。
私たちは田中大将を出て城跡の方に向かって帰っていく。
道沿いに白壁や土塀が続く細い道で、「THE 城下町」というような光景だ。
お天気の良い日には、どこからか花のような植物の香りに混ざり土塀の土の香りが鼻をくすぐる。故郷、萩の香り。
少し行くと土産物店が右手に見える。
その土産物店では萩の名産、夏みかんの皮を砂糖漬けにしたお菓子を作って販売していた。
お店の前を通るといかにも優しそうな女性が店から笑顔で出てきて手招きをする。商品にならない形のバラバラな夏みかん砂糖漬けをおやつにくれるのだ。
「少しやけどおやつに食べてね。」
少しづつティッシュに包んで三人の手に持たせてくれた。
甘くてほんのりほろ苦い夏みかんの皮の砂糖漬け。
このお店はもうないが、今でもこのお菓子が大好きで帰郷の際は必ず購入する。
オヤツをゲットした後は、道沿いの生垣の葉っぱを千切って丸め、口に付ける部分を少しつまんで草笛を作る。
ブー
プー
良い音ではないが何となく鳴る。それだけで楽しい。
萩城跡の手前の交差点にかかる橋を渡るとそろそろお別れの時間。
「また明日ね~」
今回は私が小学生の時に見た景色を残しておきたくて写真多めだ。
これも人生の棚卸し。
死ぬまで私の心に残り続けるであろう景色だ。
お付き合いに感謝。
ではまたお会いしましょう。
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