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【色エッセイ#4】私が「青」から思い出すもの

旅先で出会い、心に残った景色や食べ物、
日常で心動かされたものたちを「色」から捉え直す試み。
私が「青」から思い出すのは、こんなもの。

1   十日町「光の館」で見上げた空
光のアーティスト、ジェームズ・タレルの作品「光の館」が新潟県十日町にある。宿泊もできる世界で例を見ない作品だ。
「光の館」の屋根は開閉式で、屋根を開くとぼっかりと空いた天井から、青い空が見えた。天井からは、十日町の冷たい風が入ってくる。
青空の天井を見つめていると、空の光の表情は一瞬も同じときがないのだとわかる。空をこんなにも集中して眺めたのは、おそらく初めてだったと思う。


2   青池
青森県深浦。ここで見た青は、透き通った青。
ブナの木漏れ日の中を抜けてたどり着く青池には太陽の光が差し込み、
池の奥は、吸い込まれそうな青、手前は緑がかった青色をしていた。写真でよく見る青池だけど、実際はその何倍も美しかった。

3   青の多い私の台所
私の台所は青いものばかり。
お気に入りの青のArabiaのマグカップやお皿。自作した江戸切子の青いグラスに、青の台布巾。ぶら下げている薄い青のディフューザーは、以前イギリス、コッツウォルズのサイレンセスターの蚤の市で購入したもの。それから、壁に貼っているお土産のボストカードも青ばかり。
今後も青のお気に入りを仲間入りさせたい。


4   隠岐の海
ちょうど平成から令和に切り替わる頃、私は島根県の隠岐諸島に滞在し、美しい青を見ていた。
中之島の明屋海岸では、ハッとするような美しい日本海の青を、
西之島の国賀海岸では、観光船から海の洞窟のコバルトブルーを楽しんだ。観光船は、天然の洞窟、明暗の岩屋をスレスレで通り抜ける。波の高い日は洞窟くぐりが出来ないため、3分の1の確率でしか出会えない青だったそう。


5   タリンのポストオフィス
エストニア、タリンの旧市街で見つけたポストオフィスは、かわいらしい、パステルカラーの水色の建物だった。すぐ隣はアレクサンドル・ネフスキー大聖堂という立地。
私はここで、ハガキと切手を買って、日本に便りを出した。ポストオフィスなのに、週に3回しか集荷がないようだったが、1週間ほどで日本に届いた。

6   与謝野ブルームーン
「許したまへあらずばこその今のわが身
うすむらさきの酒うつくしき」
与謝野晶子が詠んだとされるカクテルが与謝野ブルームーンだ。
銀座8丁目のバー、月のはなれには、会社帰りに何度か訪れた。くすんだブルーと薄紫の中間のような美しいカクテルは、塩漬けのさくらんぼを浮かべて楽しむ。私は最後に注文するのがこのカクテルと決めている。


7   東海道線から見える海
青春 18切符を多用する私は、熱海行の東海道線からの海を見て、少しずつ、旅が始まっているという感覚になる。特に国府津からの海は美しいと思う。
東海道線から海の手前に見える西湘バイパスは、たいてい渋滞していて、渋滞の車内の人々の様子なんかを想像するのも密かな楽しみの一つだ。


8   夕暮れ時の東の空
夕暮れ時。赤やオレンジに染まる空を眺めている時、ふと東の空を見る。
東の空では、一足早く夜が始まっていて、落ち着いた青色をしている。まだ夜の闇に吸い込まれる前の、昼間の名残を残した、何ともいえない淡い色が好きだ。


9   ウルのスタンダード
高校1年生のとき、世界史の授業が始まって、すっかり世界史にハマった私。学校帰り、上野の美術館で開かれていた大英博物館展を友人と見学した。
特に印象的だったのは、「ウルのスタンダード」。紀元前2600年ごろのシュメール人の遺跡から見つかった工芸品だ。教科書と違って、実物はずっと青く、そして螺鈿の白が輝いて美しかった。
ちなみに、博物館では、同じクラスの別の友人とも偶然会った。世界史の先生、先生のおかげで、世界史好きの生徒が増えました。


10   串本の海
大学時代、大学の実習で通っていた串本町。太平洋にせり出した、本州最南端の潮岬がある町だ。
串本の海は、心がスカッと晴れるような青をしていると思う。夏の日、大学の仲間とレンタサイクルで潮岬まで走ったものだ。
串本の海の青と、夏のあの日々の思い出に会いに、あの時みたいに青春 18切符で半日以上かけて再訪したい。


11   飛行機から見た北極
飛行機で夏の北極上空を移動していた時に見た、いくつもの湖。白い大地のところどころに突如現れる湖は、深い青のような、緑のような色をして、白夜の太陽を反射させていた。蔵王で見た釜を彷彿とさせる色だった。


12  ブルーベリー摘み
夏のフィンランド。
森の中のハイキング中、足もとには野生のブルーベリーが実っていた。自然享受権のあるフィンランド。甘いベリー、酸っぱいベリー、夏の森の恵みを一粒ずつ、口に入れながら歩いた。


13   フィンランドの湖
ヌークシオ国立公園で見た湖は、快晴の空をきれいに映していた。
湖を手漕ぎボートでゆっくりと進む。空の青と雲の白が映り込んだ湖面は静けさで満ちていて、水草が黄色い花を咲かせながら漂っていた。
空色の湖面に、ボートから手を出して、水面を撫でながら進む。私も、空や湖と一体になれたかな。

14   三鷹のバタフライピー
青い花を咲かせるバタフライピー。ハーブティーとして使われることが多く、レモンなど酸性の液体を入れると、一気に青から紫に変化するので、その華やかさで人気だ。
国内でバタフライピーを栽培する農家はまだ少ないが、なんと東京三鷹に農家があるらしい。先日出会った生産者さんにバタフライピーの紅茶をご馳走になった。毎朝咲く青い花に、「採りきれない」と漏らしていたから、来年は花摘みのお手伝いに伺いたい。

15   和歌山 古座川
和歌山県古座川町。透き通った古座川は、夏の緑の色も映して、川岸近くは緑に、中央の方は青く見えた。
古座川に掛けられた、欄干のない橋に、足を投げ出して座った夏の日。この橋が気に入った私たちは、何もないこの橋で長い時間過ごした。



これから、どんな青と出会えるのだろう。
地中海の青やモロッコ、シャウエンの青の街並みなど、見てみたい青はまだまだたくさんある。

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