冬から春に変わる季節に合う。シューベルト/ピアノ三重奏曲 第1番を聴いた。
『シューベルト/ピアノ三重奏曲 第1番 変ロ長調 op.99, D.898』
季節は冬から春へ。寒さで縮こまった体を解き放ってくれるような曲。
でも、この作品はシューベルトが亡くなる1年前、体調が思わしくない頃の1827年に作曲された作品である。
シューベルトは同じ年に歌曲集「冬の旅」を作った。シューベルトの不朽の名作とされているが、「死」というものを心の奥底に持ちながら作られたとも言われる。
あの暗くて絶望的な世界が続き、わたしにとっては聴き続けるには相当の覚悟を持って臨まなくてはならない作品である。
そして、前年の1826年には、大きな憧れを抱いていたベートーヴェンが亡くなった。
これはシューベルトにとっては相当な衝撃的な事件であったはずで、「死」というものを更に近い存在にしたことだろう。
しかし、このピアノ三重奏曲は、作曲された時代のシューベルトの内面を全く感じさせない。
堂々と勇ましく行進するような第1楽章、胸に秘めた憧れを謳うような美しい第2楽章、飛び跳ねるように愉快な第3楽章、終楽章は再び堂々した音楽で締めくくられる。
シューベルトはどのように思いながらこの作品を作ったのか?
季節が冬から春へ変わる様に、花が咲き、木々の若葉が芽吹くように、自分自身も変えてしまいたい、と思っていたのかもしれない。
40分を超える大きな作品だが、春を感じる季節にピッタリな曲。