ベートーヴェンを毎日聴く325(2020年11月20日)
『ベートーヴェン/カノン「聖ペテロは岩なり、ベルナルトゥスは聖者なり」WoO175』を聴いた。
聖ペテロはキリスト教の聖人であることは知っているが、なぜ「岩なり」なのかが良くわからなかった。調べてみると
ペテロの本名は「シモン」であったが、イエスにより「ケファ」というあだ名で呼ばれた。これはアラム語で「岩の断片、石」という意味。「ペテロ」と呼ばれているのは、この「ケファ」のギリシア語訳「ペトロス」からきている。
ということで「聖ペテロは岩なり」となる。
そしてもうひとり登場するベルナルトゥスであるが、これも良くわからなかったので調べてみた。
クレルヴォーのベルナルドゥス(※ドと濁る)は12世紀のフランス出身の神学者ですぐれた説教家としても有名。聖公会とカトリック教会の聖人であり、35人の教会博士のうちの一人でもある。
ということで「ベルナルトゥスは聖人なり」となる。
2つの知られたことを歌ったことになるのだが、
このカノンは、ロヴコヴィッツ家の評議員であったカール・ペータースに送られた手紙の中に書かれているもの。聖ペテロはこのペータースにかけられている。
ではベルナルトゥスは?
これはベートーヴェンの親友である作家で、ベートーヴェンのカンタータ「栄光の瞬間」op.136の詩も書いたヨーゼフ・カール・ベルナルドの名前からきているという。
2人の知人の名前がたまたま聖人と同じ名前であったが、聖人にかけられてこのカノンが作られたとすると、ベートーヴェンはこのふたりに対して最大級の感謝の意を示したのではないだろうか。
そしてこのカノンは、1819年末に「ミサ・ソレムニス」のクレドを作っているときに書かれたと考えられている。それも聖人につながる要素だったのかもしれない。
確かに宗教的な音楽のように重なりあう音が重厚で、そして清らかな響きである。教会の中で聴きたくなる音楽になっている。
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