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ベートーヴェンを毎日聴く111(2020年4月20日)
『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a「告別」』を聴いた。
ベートーヴェンを毎日聴く111
— Harayan (Herbert von) (@HarayanV) April 20, 2020
op.81a ピアノ・ソナタ第26番「告別」。1809〜10年
今後世に出るピアノ・ソナタ達に繋がる、新しい香りが漂っている。田園同様、一種の標題音楽と言っても良いのでは。終楽章の子供のようなはしゃぎよう。その様を想像するとなかなか面白い。
演奏:ポリーニ。1988年 pic.twitter.com/p6x62PNsQN
わたしはこのピアノ・ソナタをなかなか好きになれなかった。
これまでのピアノ・ソナタのように、例えばメロディが口ずさめるとか、心にグッと入ってくるものではなく、とても複雑で理解が難しいものだったからだ。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタは第32番まであるので、第26番はもう最後のほうの作品になるのだが、後期の作品はこれまでの様式とは異なるものとなっている。
それは今までのピアノ・ソナタの殻を破って新たな生命体が孵化したようなものにも思える。
ベートーヴェンがピアノ・ソナタという分野を、さらに発展させたと評価されている所以である。
「告別」というのは、パトロンで友人でもあるルドルフ大公が、ナポレオン戦争によるフランス軍の侵攻から避難するため、一時的にウィーンを離れることになる。その際にベートーヴェンが作ったのが第1楽章にあたるものだ
。
ルドルフ大公が去ってから間もなく、フランス軍はウィーンを砲撃。ベートーヴェンは地下室で枕で頭を覆いながら震えていたという。
その後ルドルフ大公はウィーンへ戻ってくるが、その際に第2楽章「不在」、第3楽章「再開」が作られ、ピアノ・ソナタとしてまとめられた。
各楽章にタイトルがついているので、そのタイトルにあわせた心情が音楽になっている、いわば標題音楽。
「不在」の寂しい気持ち、「再開」の子供の様にはしゃいでいるような喜びの表現は、それまでのピアノ・ソナタの表現では、きっと不十分であったのだろう。
第1楽章にはドイツ語で’Das Lebewohl’(告別)と書かれるが、面白いのは最初の3つの音符の上それぞれに上記を分解した「 Le」「be」「wohl」 と付けられていること。告別の動機とも言えるだろうこの動機があちこち顔を出す。
でもなぜか、出版社はフランス語で 'les adieux'というタイトルを付けてしまったため、ベートーヴェンは激怒したという。
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a「告別」
(ピアノ)スチュワート・グッドイヤー
(記:2020年12月16日)