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ロビンフットの真実

ロビンフットのことは都市伝説だと思っていた
先輩が達成した時、あ、ホントに出来るんだ。
それが第一印象。

3回生の春頃のことだった
ソレは全体練習も終えて自主練の時に起きた
前触れもなく突然に

自主練は歩いて矢取りに行くので私もみんなと歩く

50mを射っていた
前後に後輩を挟んで頼まれた時には、射形を見ながらの練習だった

私は数週間前に矢を全替えしたばかりで何となく機嫌が良かった
矢羽は相変わらず赤を一枚入れたものの残り2枚は黄色にした

黄色は的に当たった時見えやすいからだ
今は矢の価格は当時よりも安くなっているが
当時はべらぼうに高かった
しかもダース売り
オプションでネームも入れていた
まぁ歴代大体の人は入れてある

そして使わなくなった矢は矢の回収箱にいれる
主に春の勧誘で使うのだ

とゆうか、自分で持ち帰っても
ぶっちゃけ捨て方が分からない
アルミ矢からカーボン矢に変えてさらに分からなくなった 燃えるのか?
矢の先端は金属だし番えるノックはプラスティックだし分解するのも思い入れがある分難しい

ACCからACEに移行して長らく愛用していた
まだ上級者向けの種類もあるが、矢の速度が落ちることと懐具合を鑑みてACEにしていた
なんか名前の縁起もいい
エース。


矢が的に当たった時いつもと違うパキィィィインという音がした。
嫌な予感がした
残りの矢も射ち終わり矢取りに行った

矢に矢が刺さっていた

これがいわゆる継ぎ矢だ
ロビンフットとも言う
あの音はカーボンが割れる音だったのだ
勉強になる

数年に一度起こる
前回は男子のエースが達成した

歴代部室に飾られて記念写真も撮られている
みんな複雑な表情で写真に写っている
大体ションボリ顔
その心情を理解した

矢が2本逝った
約25,000円
頭の中で電卓をはじいて、損害額を時給で割ってしまう
あぁ、労働とは…。泣きそうになる。

でもこれは本来ならば嬉しいことで一生自慢してもいい。

金の事情…そんなのことはお構いなしで他の部員たちは拍手してくれる

去年の先輩が成し遂げた時も私もあっち側だった。体感して分かるこの複雑な心情…。

「おめでとうございます!」
「やりましたね!」
「ちょっと部室からデジカメ撮って来ます!」

矢を抜こうとすると
「写真撮りましょ〜よ!」と制止された

「…そうだね」
それ以外の矢を抜いた

切り替えよ

吹っ切れて満面の笑みで写真を撮った
その日一緒に自主練していた可愛い後輩たちと一緒に写った
ちゃんとデジカメで撮ってもらってよかった

卒業まで部室の掲示板に貼った

女子部には飾る場所が無いので、矢を廃棄のところに入れようとすると止められた

「ちょっ!何してるんですか?!勿体無い、とりあえず部室に持っていきましょ」

「でももう使えないよ?」

「縁起物として飾りましょう」と後日
部室に100均のフックを取り付けた
その上に引っ掛ける

お祭り騒ぎが終わり、はぁ…とため息をついた
主務の同回生が「おめでとう」と声をかけてくれる。

「ねぇ、部費からお見舞金出ない?」
「お祝い金だろ?出ないけどね、ご愁傷様」

稼ごう。堅実に働こう。

いつも通りバイトに励む
商品の下ごしらえも苦にならない

私は玉ねぎを大量に切っても一切目に沁みない
そういう体質らしい
店主の奥さんはゴーグルをつけても泣きながら切っているので、雇って頂いた時から私がいる日は私が担当している

大量の野菜の皮を剥くのは楽しい

大学生になって腕力がついてからは業務用の大釜でご飯が炊けたらそれを軽々と運べるようになった。
いい米を使ってたくさんの量で炊くので美味しいのだ
ご飯単品で注文が入ることも割とあった。
近所の飲食店から「米なくなった!!20個用意しといて!」と電話が入ることもあった。助け合いだなと思う


常連さんとはすっかり仲良しだ

近所に住んでる高齢の方も買いに来てくれる
注文されたものを詰めてもらう間、少し話をしながら待つ。すっかり顔見知りだ。

「ちゃんと高血圧のお薬飲んでくださいよ〜」
「分かってるよぉ」
「また来てくださいね〜」

家族連れも来る
ちっちゃい子もいて可愛い
待ってる間に退屈したのか、カウンターに入ってきて「れじ!れじ!」と大騒ぎしている

「ピッピする?」
抱っこしてレジを見せる
押すだけで会計ボタンを押さなければリセットしたらいい。
キャッキャしている間に出来上がる

接客は楽しい
穏やかで家庭的なバイト先が大好きだった


大学生になり配達も任されるようになった
出来ることが増えるのは嬉しかったし楽しかった
最低金額がほぼ無いに等しくどんな場所でも行く

一般家庭に運ぶことが通常だが
工事現場に特別にお弁当にしたものを届けたりすることもあった

男性の1人暮らしの家に届けた時に
「ちょっと上がっていく?」と聞かれて
「すみません、次の配達がありますので!」
と脱兎の如く逃げた
セクハラだ、怖い

店長に報告して場所によっては行かないで済むようになった

私は下ごしらえが終われば、主にレジでの接客と会計、伝票整理が担当になった

暇な時間もチラシを折ったり意外とやることが多い

そんなふうに地道にお金を稼ぐ
堅実に貯金する
金銭的な面で心配があるとスコアも伸びにくい気がする
バイトと練習のバランスを考えながらじゃないとダメなのだ


その日はHくんがケーキでお祝いしてくれた
もう2人とも成人しているのでお互い好きなお酒を飲んだ
果実酒が好きでロックでゆっくり溶かす

お酒を飲むと感情が緩む
「あ〜…バイト代ぶっとんだ〜…一瞬で〜…」
「気分は葬式やのにみんながお祝いしてくるねん」
「情緒おかしなってまうわ」
「アニメエヴァの最終話みたいな気分やってん」

Hくんはゲラゲラ笑っていた

「ねぇ、苺ちょうだい」
「嫌だよ、自分の食えよ」
「もう食べた、もう一個欲しい」
欲張りだなぁとフォークを自分の苺に刺す
「…あーん」
「ありがと、美味しい」

「まぁでも嬉しかったな」
いい日だった

眠たい
家で飲む時のアルコールは突然眠くなる

「寝る準備する、暑い」
歯を磨いて夏の服装のままベッドに横になる

「なぁ、まだ明け方冷えるから服着ろよ」

「暑いんだよ」

顔も首も二の腕も太ももの皮膚の薄いところが真っ赤だった

変な模様の魚みたいになる

「分かったよ、明け方に暖房いれる設定にしとく」

「うん、ありがとう」

「素直じゃん、おやすみ」
枕元に服置いとくから途中で起きて寒かったら着ろよと言われる

「おやすみ」

長い1日が終わった

無印良品のポチ菓子で書く気力を養っています。 お気に入りはブールドネージュです。