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ぱっとしない症状。。。膵炎の猫の話

1、食欲不振、嘔吐を繰り返す猫


「前々から時々吐くんです。食欲も無いです」

雑種の猫ちゃんオス、10歳。

数日前から食欲不振と嘔吐で来院して、メトクロプラミドや制吐剤を使って二日間点滴を続けていました。今日は3日目。

1日数回、胃液のような透明な液体を吐くとのこと。水を飲む量が増えたもする、、、、との事でした。

今までも吐いて来院した事がありましたが、1回の点滴ですっかり治っていたのが、今回はあまり変わらない。

今は嘔吐は少し落ち着きましたが、元気食欲が戻ってないみたい。

一時的な消化器疾患じゃないなら、、、ホルモン性の病気もしや隠れてる?(・・;)けど皮膚症状は無いなあ。。。

異物の摂取歴は無し。腹部触診での膨満感や腸ガス、痛みはなし。
下痢もなし。一般身体検査では特に異常は無さそう。

初期の慢性腎臓病でも吐くのか?

「なんだろう。。」と思いながらまず血液検査をしてみました。

2、血液検査の結果


結果は目立った所見は無いけど、ややTPとGLOBが高め、慢性炎症の可能性は考えられました。

次に腹部エコーで確認するも異常所見はみつかりません。

血液検査・エコーで特徴的な症状ははいものの、まだ調べていない項目を思い出しました。

膵臓測ってない!!

腹部エコーで膵臓の病変は描出するのが難しく、そもそも画像に反映されてないかもしれないため除外はできません。

そこで追加の血液検査でリパーゼ活性を測ろうとすると、先輩獣医さんに止められました。

「猫は膵炎の評価にリパーゼはあんまり有用じゃないよ!」

3、リパーゼ・アミラーゼ活性と膵リパーゼ免疫活性


人の膵炎では血中膵酵素(膵アミラーゼ、膵リパーゼなど膵臓に特異性の高い酵素)の上昇で膵炎を疑うのがスタンダードですが、

犬や猫の場合アミラーゼやリパーゼともに膵臓以外の臓器からも生産されているため、感度・特異度両方あまり高くないとのこと。

先輩から渡されたのはSpec fPLという猫用のスナップキット。

膵リパーゼ免疫活性といい、アミラーゼやリパーゼ活性とは異なり、膵臓に特異的なリパーゼのタンパク質としての濃度を免疫学的に測定する方法だそうです。

膵臓のリパーゼを特異的に測る事が出来、さらに免疫学的に測定することで検出感度も高いため、犬や猫の膵炎はこのスナップキットをよく使うそう。

スナップキットを使った結果は「陽性」。

膵炎と診断してステロイドや鎮痛薬などを入れて点滴をしました。

4、終わりに


膵炎をちゃんと診断できてひとまず安心。

でも実は今回見つけられてないだけで、本当は炎症は膵臓以外にもあるかもしれない。

もしかしたら、急性膵炎が結構前から起こってたけど見逃してきたのかもしれない。

腸炎や胆管炎も併発してるかもしれない。

注意深く疑って治療していこう、と思った出来事でした。おわり。

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