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【犬猫】血液検査の読み方の練習!ふわっと肝数値が高い時の考え方

よく無症状や、非特異的症状の血液検査をしたときに、若干肝臓の数値が高いことが時々あります。

先輩獣医さんは、特定の疾患の時に少し肝数値が上がることを「ふわっと肝数値が高いパターンはこういう病気でよく起こるよね。」と、臨床症状は出ていないけど肝数値の上昇のみ伴う場合に疑うべき疾患のパターンを知っているみたいです。

もちろん経験値も勉強量も足りない私はこの「ふわっと肝数値上昇だけ」(次回から省略してふわっと肝数値と呼ぶことにします)では何か病気が頭に思い浮かぶはずもありません。

肝数値上昇があれば肝炎?、リパーゼが高ければ膵炎?と、だめだめなド直球解釈しか出来ないため、「私もふわっと肝数値克服したい、、、!!!!」という思いが強くなりました。

今回読んで参考にしたのはインターズーから出ている「ベーシック診療 犬と猫の肝・胆・膵」大野耕一先生の本です。

血液検査項目の定義

ALTとAST

ALTは主に肝細胞の細胞質に存在する酵素です。肝臓の特異性が一番強く、肝臓が障害を受けた時に血液中に漏れ出して、血中濃度が上昇します。

ASTは肝臓以外に骨格筋や赤血球でもAST活性が高いため、ALTと違って肝臓以外での障害でも血中濃度は上昇します。

ALTやASTの上昇の程度は影響を受けている肝細胞数と関連しますが、症状や予後、肝機能には関連しません。

ALPとGGT

ALPやGGTは胆管上皮細胞などに存在する酵素です。ALTやASTのように血管に漏れ出てくる酵素ではなく、胆汁うっ滞などの刺激で生産が誘導されます。

猫の肝臓のALPの半減期は6時間で、犬は70時間に比べるととても短く、肝臓内含量も少ないそうです。なので、猫は軽度のALP上昇でも肝障害を重度に捉えなくてはいけません。

ALPとGGTの違いは?

ALPとGGTの挙動はほとんど同じですが、違いとしては

  1. GGTは骨では生産されないため、骨由来のALPの鑑別に利用できる!

  2. GGTは犬では抗てんかん薬で上昇しにくいため、ALPとGGTセットで測る事で抗てんかん薬の影響の鑑別が出来る!

  3. GGTは猫の肝リピドーシスでALPが顕著に増加する一方GGTの上昇は軽度!

肝数値、異常値の捉え方

犬や猫では肝数値が低いことは問題ではなく、高値の時に異常ととらえます。

高いかどうかの判断は、肝酵素活性の場合「基準範囲の何倍か?」で評価するのが良いそうです。

色んな検査機器メーカーによって数値にかなり幅があるのもあり、基準値を覚えてそれを少しはみ出しただけで異常!と判断するのは良くなく、実際は肝臓の異常じゃない場合も多いです。

ベーシック診療犬と猫の肝・胆・膵によると、肝酵素活性は基準範囲の上限値の2倍以上の時に明らかな高値であると判断すると良いそうです。

ただし、猫のALPは半減期が短くて特異度が高いため、基準値を上回った時点で高い!と判断するそうです。

なるほどね!犬も猫も一緒にとらえてたよ!( ;∀;)

肝数値が高くても肝炎じゃない?

肝臓は色んな肝外疾患の影響を受けているため、肝臓自体に大きな問題は無くても肝酵素の上昇がみられることが多いです。

このような、別の疾患が根底にあるけど肝酵素の値が軽度~中程度に上昇する事を「反応性肝障害」と言います。

反応性肝障害が起こる代表的な疾患としては胃腸・膵臓疾患、感染性の敗血症、代謝性疾患、心疾患(右心不全)などが挙げられます。

なかでも非典型的な症状の犬の副腎皮質機能亢進症や、猫の甲状腺機能亢進症は肝数値が上昇しやすいため注意が必要です。

膵炎で肝数値が上昇する事が多い原因としては、胆管炎や肝外胆管閉塞の併発によるところが多いみたい。そりゃあ管でつながってるもんね。。(';')

だから、肝臓の疾患と診断した後も「ふわっと肝数値」を念頭において、「肝疾患でない可能性」を頭に入れて考えないといけないんだ!

肝疾患なのに肝数値上昇がみられないこともある!?

肝数値が上昇してるのに、肝臓の疾患じゃないこともあるのは分かったけど、今度は逆もあるみたい。

どうやら肝臓がゆるやかに変化していくような疾患では肝数値の上昇は顕著には見られないそう。

また初期の肝細胞癌や悪性腫瘍の肝内の転移でも、影響を受けている領域が小さい場合は肝酵素の上昇は見られないケースもあるそうです。

だから肝数値が低くても予後が悪い場合もあるし、肝数値が重度でも肝臓の疾患じゃないこともあるんだね。

つまり、肝酵素活性の程度は重症度や予後とは関係ない!!

肝臓甘く見るべからず

ふわっと肝数値上昇が肝疾患じゃないパターン以外にも、肝数値全然上がってないのに実は予後不良の肝疾患でした~っていうパターンもあると知り、、、ややショック(-"-)

実際の肝障害の重症度や予後を知りたい場合は、肝酵素活性ではなく、肝機能を見る必要がある!という課題が出てきましたが、これはまた次回に勉強することにします。

明日からまた始まる連勤ですが、五月病に負けず頑張ります。

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