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想像現実 01 青春の塔
本を読むのが好きだ。
放課後の教室。窓際の後ろから4番目の席。校庭では運動部の連中が声を張り上げ練習してる。クラスの席ってのはだいたい窓際とその横の後ろから二列までがクラスの中心で、真ん中や廊下側に成績のいい委員会系の生徒。窓際の前の方は空気に近い存在の席ってことが多い。僕の名前は大木一馬。14歳の中学生。運動はあまり得意じゃない、友達は多くはないけどいつもひとりぼっちってわけでもない。まあ普
想像現実 02 想像力診断士
ふーっと息を吐いて、小島由紀はYWYをデスクに置いた。由紀の仕事は想像力診断士、ロールシャッハテストや画像診断のようなものをYWYを用いて被験者が思い描いたイメージから性格その他を診断する仕事。以前は画像診断士をしていた。YWYの普及に伴い、ダイレクトに思い描くものを確認できるということで今企業が注目しはじめている。被験者の正直に思い描くイメージがその場で観れるため診断の正確性評価が高い。けれど
もっとみる想像現実 03 月に手を伸ばせ
鏡の前で踊るダンサーたちに右手でサインを送ってスタジオを後にした。蒸せた空間から解放されて、ふっと息をする。ちくしょう梅雨入りはまだ先のはずだが、弱い雨が降っている。白いスニーカー履いて来て失敗だ。ニューヨーカーを気取って傘は持たない主義だ。地下鉄の駅までダッシュする。
見ているスポーツやエンターテインメントに自分なりに装飾をして加工する。それが最近の流行だ。IR当初から見ているものに勝手にイ
想像現実 04 陽炎の坂
残業を終わらせ、コンビニで弁当とお茶を買って家に戻ってきた。外で食事をする時間が勿体無い。食事もそこそこにYWYを装着する。先月のボーナスでやっと購入した。想像力なんてものは持ち合わせてないのは自分が一番よくわかっている。会社の想像力テストでも評価はCだった。それでも記憶はあるし思い出もある。俺はこれで母さんに会う。母親は俺が子供の頃死んだ。その後親父が再婚したので、気を使った祖母が母親の写真や
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