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おはなし「おうちキャンプ最高!」由流里ハウスは今日もほっこり

三連休の初日、昼下がりのこと。鹿のシカリンがシェアハウス「由流里」の物置きを片付けていた時、ふと昔のキャンプ用テントが目に留まりました。

「これ、まだ使えるかしら?」とシカリンがリビングに持ってくると、コアラのココが目を輝かせて
「ねえ、遠くのキャンプ場まで行かなくても、この庭でキャンプごっこができるんじゃない?」と提案しました。
今年の夏はみんなが忙しくて、毎年恒例のキャンプに行けなかったのです。

うさぎのリリィもすぐに乗り気になって
「じゃあ、おやつには人参チップスが必要だわ!」
と張り切りながら宣言しました。
みんなでリストを作り、足りないものを買い出しに出かけることに。

午後が進むにつれて準備が整い、庭には古いテントが立てられ、小さな火を囲むスペースもできました。「意外とキャンプ気分になるね」とシカリンが満足そうに頷きます。

キャンプの準備が整い、庭のテントから楽しそうな声が響く中、リリィはキッチンに立っていました。キャンプのおやつには、特製の「人参チップス」が欠かせません。彼女は人参を数本手に取り、軽く洗った後、スライサーで薄ーくスライスしていきます。カリッと軽い食感になるように、薄さは慎重に調整。薄く透明に見えるほどの人参の輪が、まるで花びらのようにキッチンに並べられました。

次に、キッチンペーパーを用意し、スライスした人参をそっと広げて並べ、水気を丁寧に拭き取ります。「このひと手間が、カリッと揚がる秘訣なのよね」と、リリィは独り言を言いながら、丁寧に一枚一枚の人参に目を向けました。

下準備が終わると、彼女はフライパンにエクストラバージンオリーブオイルを注ぎ、じっくりと温めます。少し温まったオイルの上で人参をそっと滑らせると、じゅわっと軽やかな音がキッチンに広がり、甘い香りがふわりと漂い始めました。

黄金色に揚がった人参チップスをキッチンペーパーに上げると、リリィはマジックソルトを振りかけたものと、粉チーズをまぶしたもの、二種類に仕上げます。マジックソルトが香ばしさを引き立て、粉チーズがやさしいコクを加え、見た目も可愛く仕上がりました。

「さぁ、キャンプにぴったりのおやつが完成!」リリィは満足そうに微笑み、できあがったばかりの人参チップスをお皿に盛り、庭のテントへと運んでいきます。

夕方になり、外でカレー作りを始めました。
カレーにはポテトと人参とキャベツをふんだんに入れてスープストックを使ってベースにしました。ウサギのリリィの体に合わないオニオンは入れません。
庭中に野菜の甘い良い匂いがふんわりと漂います。

火を囲み、煮込むカレーのスパイスの香りが漂う中、「これは良いカレーになりそうだね」とココが鍋を見つめます。リリィも「キャンプでのカレーは格別なんだから!」と期待に満ちた表情です。
はんごう炊飯のご飯もまもなく炊き上がります。

やがてカレーができあがり、プラスチックの皿にカレーをよそいました。
そして、三人はテントの前に並んでカレーを食べ始めました。
「うーん、おいしいねえ」3人は口々にみんなでつくったカレーライスをほめています。

「この庭にいるだけなのに、なんだか遠くまで旅してる気分ね」とシカリンがしみじみとつぶやきます。
みんなは少しひんやりした風に包まれながら、温かくてちょっぴり辛いカレーをひと口ひと口味わいました。

食後にはリリィ特製の人参チップスも登場し「おいしい!」とみんな大喜び。ノンアルワインの良いおつまみになりました。

そして、さらに夜が深まりました。
リリィが「怖い話してみない?」と提案。
最初は興味津々だったものの、1番目の話し手のリリィの途中で少し皆んな震え出し、お互いの様子に三人とも大笑いになりました。

気づけば、庭には静かな夜の空気が流れ、星がきらきらと輝いています。
「遠くに行かなくても、知恵を出し合えばこんなに楽しいことができるんだね」とココがしみじみと言うと、シカリンとリリィも静かに頷きました。

その夜、庭には三人の楽しそうな笑い声と、心地よい夜風がいつまでも流れていました。

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