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由流里ハウスの「ほっこりブランチ」悩みのディテールは言わなくてもいいよ
【由流里ハウスのブランチ】
暖かな土曜の朝、シェアハウス「由流里」には静かな空気が漂っていました。
けれども、ここ数日、ウサギのリリィはどこか元気がありません。
バイトから帰ってくるたびに、しっぽを垂らしてベッドに直行する彼女を、コアラのココと鹿のシカリンは心配そうに見守っていました。
「今日は久しぶりに三人とも揃ったし、ブランチでも作らない?」とココが提案すると、シカリンが
「賛成!みんなでキッチンに立つの、なんだか久しぶりだね」と微笑みました。
リリィも渋々ながら「うん、手伝うよ」とキッチンへ向かいます。
【キッチンでの準備】
まずは野菜スープから。シカリンが冷蔵庫の野菜室を開け、少ししなびかけたにんじんやセロリ、玉ねぎの端っこを取り出します。
「この切れ端たちを細かく刻んでスープにしようか」と言うと、ココが「庭のハーブも少し加えよう」と庭へ出ていきました。
リリィは小さなナイフを握り、黙々と野菜を刻みます。
その姿を見て、シカリンはそっと隣に立ち、「野菜を刻むの、案外ストレス解消になるよね」と軽く話しかけます。
リリィは少しだけ笑って、「そうかもね」と答えました。
一方、ココはフレンチトーストの準備を始めます。
昨日焼いたパンを厚めにスライスします。
そして、豆乳、ハチミツ、そして朝取れの新鮮な卵をたっぷり使った液に浸していきます。
「しみしみにするには少し時間が必要だから、ゆっくり浸すね」と言いながら、一枚一枚丁寧にパンをバッドに並べていきました。パンがしみしみになるまではしばらく待ちます。
やがてやっとパンがしみしみ液にヒタヒタにしみると今度はいよいよ焼くことに!
フライパンにひとかけ、ふたかけ、3人分のバターを
「じゅわーっ!」と落とします。
パンを焼き始めると、甘い香りがキッチンいーっぱいに広がって
「うわぁ、いい匂い!この匂いだけでなんだかお腹が空いてきちゃう」
とリリィが少しだけ元気な声を出しました。
【リリィの悩み】
ココはスープをかき混ぜながら、ふとリリィに声をかけました。
「ねえリリィ、最近ちょっと元気ないけど、何か悩みでもあるの?」
リリィはナイフを置き
「...うん、でも仕事のことだから話せないの。契約で話せないって決まってるし、それが余計に苦しいの」とぽつりと答えました。
その声は、今にも涙がこぼれそうです。
ココは優しく微笑んで
「あのね、リリィ。中身を話さなくてもいいんだよ。色や感覚で、どんな風に感じてるか話すだけでも、きっと楽になるよ」と言いました。
「色や感覚?」とリリィが驚いた顔をすると、ココが続けます。「たとえば、今悩んでることってどんな色?」
リリィは少し考えて、「うーん、水彩絵の具を全部混ぜた群青色に近い黒かなぁ…。暗くて重い感じ」とつぶやきました。
ココは「なるほど、それはしんどそうだね」と頷きます。
シカリンもスープをかき混ぜながら、「その悩みを考えると、どんな気持ちになるの?」と優しく聞きました。
リリィは深呼吸して、「イバラの中を潜り抜けるみたいに胸のあたりがチクチクして、その後に心がギューって縮こまっちゃうの」と答えました。
二人は「そっか、それは大変だね」とうなずきながら、ただリリィの話に耳を傾けました。リリィは少し赤い目を更に赤くしながら中身を語らない悩みの打ち明け話を続けました。ブランチを作りながら皆んなでそんなことをしていきました。
するといつの間にかリリィの顔が少し明るくなった気がしました。
【テーブルを囲む三人ほっこりするね】
やがてブランチが完成しました。
テーブルには、湯気を立てる野菜スープと、こんがーり焼きたての香ばしい甘い匂いのフレンチトーストが並びます。
シナモンシュガー、キャラメルシュガー、アーモンドシュガーをそれぞれかけられるように小瓶が並びます。
リリィは「このフレンチトースト、最高においしいね!」と頬張りながら笑顔を見せました。
さっきまでしょんぼり涙目でうつむきがちだったウサギには見えません。
リリィは具体的な悩みは話せなかったけれど、ココとシカリンに思いを共有できたことで、少し心が軽くなったようです。
三人はのんびりと時間をかけてゆっくりとブランチを楽しみました。
そしてその後も穏やかな休日の午後を過ごしました。
今日も由流里ハウスはほっこりハウス。
良かった!良かった!