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「障害者雇用について」その①見えにくい障害への合理的配慮について
障害者雇用、とくに精神障害を含む見えにくい障害に対する合理的配慮については、現場で多くの課題があるとされています。
1.合理的配慮とはいったいなんでしょうか?
合理的配慮とは、障害のある人がその能力を十分に発揮し、働きやすい環境を作るために、企業や組織が提供する「過度な負担にならない範囲での調整」のことを指します。
具体例としては以下のようなものがあります
[精神障害者における具体例]
⚫︎勤務時間や場所の柔軟な調整(フレックスタイムやテレワークの導入)
⚫︎業務量の調整や、定期的な面談を通じた状
態確認
⚫︎ストレスが少ない環境作り(騒音の軽減、静かな作業スペースの確保)
⚫︎業務の指示を明確にするためのツールの使用(マニュアル、チェックリスト)
⚫︎サポート役となる職場内の「支援者」や外部専門家との連携
こうした配慮は、一律のものではなく、障害の種類や個人の特性に応じて調整が必要です。
2.企業が合理的配慮を理解していない場合の課題
企業側が合理的配慮を理解していない場合、障害者自身が「セルフアドボカシー(自己主張)」をする必要があります。しかし、これができる人ばかりではないのが現状です。
その結果として
• 障害者本人が配慮を求められず、不適切な業務環境に苦しむ。
• 配慮不足により、体調不良や精神的負担が増し、離職につながる。
• 企業側が合理的配慮の必要性を誤解し、「特別扱い」として同僚の不満を招く場合もある。
3.企業の体制が整っていない場合のリスク
制度や理解が不十分な状態で障害者雇用を進めると、以下のような問題が発生しやすいです。
【同僚の負担】
配慮が適切に行われない場合、業務の分担が不公平になることがあります。
たとえば、「その人ができない業務を他の社員がカバーする」という状態が続くと、不満が蓄積します。
[障費者本人の孤立]
障害者に対する偏見,誤解が解消されず、職場職場での孤立感が深まる可能性があります。
[雇用の「形骸化」]
とりあえず雇用したが適切な対応ができず、業務内容が軽視される」といった問題も見られます。これは、障害者本人にとっても不本意であり、モチベーションの低下を招きます。
4.障害者雇用における平等とは?
「平等」とは、すべての人に同じ環境を提供することではなく、その人に合った形での支援を提供することです。
障害のある人が周囲と同じように働ける環境を整えるための合理的配慮が、平等の実現に重要な役割を果たします。
たとえば
• 健常者と同じスピードで成果を出すことを求めるのではなく、その人が無理なく目標を達成できる仕組みを作る。
• 職場全体が「お互いに助け合う」という文化を育むことで、個人に過度な負担がかからないようにする
5.改善のためのポイント
• 教育と意識改革
• 企業が合理的配慮を理解し、現場で実践できるようにするには、研修や勉強会を通じた教育が不可欠です。障害に対する知識を広げ、合理的配慮が「特別扱いではない」ことを理解する必要があります。
• 社内外のサポート体制構築
• 障害者雇用に詳しい外部の専門家(ジョブコーチなど)と連携することで、企業内の負担を軽減し、現実的な配慮を実現できます。
• 業務の適正な分担
• 同僚に負担が集中しないよう、業務を再構築し、チーム全体で補える仕組みを作ることが求められます。
• 障害者雇用は、障害者本人のためだけでなく、職場全体の成長につながるものです。
そのためには、企業側と障害者本人、両方が対話を重ねることが重要だと思います。
2024年の今年の春、合理的配慮が法律で義務付けられました。
せっかくの雇用する側と雇用される側にとっての
合理的配慮。
きちんと知ってお互い気持ち良く幸せに勤めてもらいたいものです。