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子どものパニックの原因の違いとその対応策についてー様子は同じに見えるけど理由と対応は違う⁉︎
「過度激動」と「癇癪」は似ているようで異なる特徴を持つため、それぞれを理解し、適切に対処することが大切とのこと。
1. 【過度激動】と[癇癪]の違い
【過度激動】とは?
⚫︎主に神経発達症(例:ASDやADHD)で見られることが多い状態。
⚫︎特定の刺激(過剰な音や光、人の接触、予期せぬ変化など)に対する過敏な反応が原因で、極度の興奮、衝動的な行動、または感情的な爆発が起きることを指す。
⚫︎原因が本人の感覚過敏や環境要因に根ざしている場合が多く、本人のコントロールが難しい場合が多い。
《癇癪とは?》
⚫︎主に感情的な不満や欲求不満からくる爆発的な行動。
⚫︎幼い子どもに多くみられますが、大人にも起こり得ます。
⚫︎誰かに注目を引きたい、欲しいものを手に入れたいという目的が動機になる場合が多く、一般的には一過性。
【過度激動と癇癪の違い】
1. 原因
⚫︎過度激動は、主に感覚過敏や過剰なストレスに起因します。たとえば、騒がしい環境や予期しない変化、本人にとって耐え難い刺激(音、光、肌触りなど)にさらされると、過度に反応してしまう状態です。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠陥多動性障害)などの特性を持つ場合によく見られます。
⚫︎一方で、癇癪は、本人の欲求が満たされなかったり、期待していたことがうまくいかなかったりした際に起こる感情的な爆発です。多くの場合、欲しいものを手に入れたい、注目を引きたいといった目的が背景にあります。
2. コントロール
⚫︎過度激動の場合、本人が自分の感情や行動を意識的にコントロールすることは非常に難しいです。これは脳や感覚系の機能に関わる問題であるため、本人の意図や努力だけでは解消しにくい状況が生じます。
⚫︎一方、癇癪は、理性的な対応や時間経過により緩和されることがあります。たとえば、大人が落ち着いた態度で対応し、状況を調整することで、癇癪が収まる場合があります。
3. 発生頻度
⚫︎過度激動は、ASDやADHDの特性を持つ場合、日常的に起こる可能性があります。特に感覚過敏や特定のトリガーが存在する環境では頻繁に見られることが多いです。
⚫︎対照的に、癇癪は、比較的特定の状況で一時的に発生します。たとえば、「おもちゃが買ってもらえない」「思い通りにいかない」といった明確な状況が原因となります。
4. 表現
⚫︎《過度激動》では、本人が極度の興奮状態に陥ったり、感情が制御不能なほど高ぶったりします。また、逃げる、耳をふさぐ、叫ぶ、自己刺激行動を行うなど、パニックや衝動的な行動が見られることも特徴です。
⚫︎[癇癪]の場合は、泣き叫ぶ、大声を上げる、地団駄を踏む、あるいは物を投げるなどの行動が典型的です。目的を達成するために自分の感情を表現している場合も多いです。
《要約》
【過度激動】は、主に感覚的な過負荷やストレスが引き金となり、本人が制御できない感情の爆発として現れることが多く、ASDやADHDなどの特性に関連して日常的に見られることがあります。
これに対して、
[癇癪]は、本人の欲求が満たされない場合や目的が達成されない場面で発生しやすく、適切な対応により比較的収まりやすい点が異なります。
このように両者は原因やコントロールのしやすさ、表現の特徴において異なる性質を持っています。どちらの反応も、本人のストレスを減らし、安心感を与える支援が重要です。
2. [過度激動]の対策
過度激動の場合、環境調整や具体的な支援策が有効です。
(1) 過度激動の環境調整
⚫︎刺激を最小限に抑える:
過度な音や光、突然の変化を減らすために、静かな場所や落ち着ける空間を用意します。
⚫︎予測可能な環境:
スケジュールを視覚的に示す(タイムテーブルやイラスト)などして安心感を与える。
⚫︎感覚対策:
感覚過敏がある場合はイヤーマフやサングラスなどを用いて刺激を減少させる。
(2) ストレス緩和のサポート
⚫︎感情のサインを観察する:
過度激動の前兆(例えば落ち着きのなさ、苛立ち)を早めに察知して対応する。
⚫︎クールダウンの時間:
心が落ち着く「休息スペース」を設置し、そこで本人が好きな活動(本を読む、ぬり絵をするなど)をできるようにする。
⚫︎深呼吸やリラクゼーション:
ゆっくりとした深呼吸や圧力療法(安心感を与えるために軽く抱きしめる)も効果的です。
(3) 心理教育やスキル訓練
⚫︎本人への説明:
「なぜこう感じるのか」を本人が理解できる言葉で説明する。たとえば「すごくイライラしたときにこうなるのは普通のことだけど、一緒にどうしたらいいか考えようね」といったアプローチ。
⚫︎感情コントロールスキル:
認知行動療法(CBT)の技法を応用して、本人に感情を整理する練習をサポートします。
(4) 家族への支援
⚫︎共感:
「本人も苦しんでいる」という視点を持ち、叱責を控える。
⚫︎対応方法の練習:
家族が冷静に対応する方法を専門家から学ぶ(例:トークダウンの言葉選び)
3. 《癇癪への対策》
癇癪は一般的には原因がより分かりやすいため、状況に応じて以下のような対応が可能です。
⚫︎冷静な対応:
大声で叱らず、「まず気持ちを落ち着かせよう」と静かに促します。
⚫︎感情の承認:
「悔しいんだね」「困っているのが分かるよ」と感情を言葉にして共感を示す。
⚫︎選択肢の提示:
「これが欲しいんだね。でも、今はこれかこれならできるよ」という形で、本人が選べる余地を与える。
4. 受診の重要性
[過度激動]が繰り返される場合、家庭だけで対応するのは難しいことがあります。以下のサポートを検討してください:
⚫︎専門医や心理士:
ASDや感覚過敏の評価や対策を専門家と相談する。
⚫︎支援機関:
地域の療育センターや発達支援機関で具体的な支援を受ける。
「癇癪」と「過度激動」の違いを理解した上で、柔軟に対応することが大切です。少しでも負担が軽くなるよう、専門家の助けも取り入れながら進めることが望ましいです。
今朝の状況をお聞きすると、その子が国語の問題で「わからない」という感情がトリガーとなり、強いストレスやフラストレーションを感じてパニック様の反応を示したようですね。そして、その後に届いた鉛筆セットによって気が逸れ、落ち着きを取り戻したという点はとても興味深いです。この状況を基に、いくつかの視点で対応策を考えてみます。
1. 過度激動の反応の要因分析
1. 「わからない」という感覚の影響
⚫︎子どもにとって、問題がわからない状態は非常に強い不安や自己否定感を引き起こす可能性があります。特に不安になりやすい特徴を持つ子どもは
「自分が何をすべきかわからない」「どう解決したらいいかわからない」という状況に対して極度のストレスを感じやすいです。
⚫︎また、「一人で行動する」という条件がプレッシャーを増幅させることもあります。
2. 興味ある物,好きな物で落ち着く理由
興味を引く物は、その子の興味や好みに合ったものであるため、一種の「気晴らし」や「安心感」を与える役割を果たすと考えられます。
⚫︎感覚的に心地よい物(視覚的に魅力的な物)は、特に感覚に特徴のある子どもにとって、自己調整の手段になりやすいです。
2. 今後の対応策
今後に活かせる具体的な方法をいくつか挙げます。
(1) 学習環境の調整
⚫︎サポートの事前準備:
問題に取り組む際には、最初から母親や他のサポート役が近くにいることを伝え、「困ったらすぐ助けを呼んでいい」という安心感を与えます。
⚫︎難易度の調整:
取り組む問題の難易度を少し下げたり、複雑な部分は「一緒に解こうね」とすることで負担を軽減します。
⚫︎視覚的なサポート:
「この部分をどう解けばいいか」を図やフローチャートなどで視覚的に整理すると、理解が進みやすくなります。
(2) 「わからない」に対する受け止め方の工夫
⚫︎「わからない」の許容:
「わからないと感じるのは普通のことだよ」と伝え、わからないことへの否定的な感情を軽減します。
⚫︎具体的な手順の提示:
「わからない時はどうする?」というフローチャートを用意し、例えば:
1. 「まず深呼吸」
2. 「もう一度読んでみる」
3. 「それでもわからなければお母さんを呼ぶ」
というように段階的な手順を明確に示します。子どもの個人差に合わせてフローチャートを作っておくと親子共々あわてなくて済む。
(3) パニック時の対応
⚫︎気を逸らす方法の用意:
その子が好きなもの(例えば特定のおもちゃや動画、本)をあらかじめ「気を逸らすアイテム」として用意しておくと、早期にパニックを和らげる助けになります。
⚫︎クールダウンスペースの設定:
その子が落ち着ける「特別な場所」を家の中に作り、そこで感情を整理できる時間を持たせます。
3. 日常的な支援の工夫
1. 感情ラベルの練習
感情を言葉で表現する練習を日常的に行います。
例えば、「イライラしている」「困っている」などを伝える練習をします。
「これが難しい」などと言えるようになるだけでも、パニックの初期段階での対応がしやすくなります。
2. 安心感を与える言葉がけ
•「わからなくてもいいよ、一緒にやってみようね」という言葉を繰り返し使い、安心感を育てます。
3. 成功体験を積む
•比較的簡単な問題から取り組んでもらい少しずつ
「できた!」という感覚を増やします。成功体験は自己肯定感を育む大きな助けになる。
4. お母さんがすると良い工夫
⚫︎対応の引き出しを増やす:
「鉛筆セットのように気を逸らす」「そばにいて励ます」など、今回の成功体験をもとに、対応方法を少しずつ増やしていくとよいでしょう。
⚫︎負担を感じすぎない:
お母さん自身が「いつも正しく対応しなければ」と思いすぎないことも大切。
専門家(心理士や医師)に相談しながら進めてください。自分を責めない。むしろ十分にやっていることを自分で自分を労う。万能な母親も専門家もいないと心得ておくと良い。今できていることが、精一杯やっていることであると認める。
このように、学習環境や感情の受け止め方を少しずつ工夫することで、次第にパニックや過度激動を減らし、支援者と共にその子がより安心して学べる環境を作っていく。
お母さんもその子と一緒に無理せず、少しずつ進んでいくことが結果的には良いとされる。