本年度大河ドラマの前史を物語る必読の一冊『漆花ひとつ』 澤田瞳子 2022
必死に足掻いて生き続けるのさ。たとえこの国の政がどうあろうともー。
本年度大河ドラマの前史を物語る必読の一冊。 講談社
武者の世の訪れを告げる都。
権力者に翻弄されつつ必死に生きる
中・下層の人々を活写した、濃密で情感あふれる歴史物語。
坂井孝一氏 『漆花ひとつ』 澤田瞳子 帯より
普段、大河ドラマは観ないのですが、大泉洋さんや小栗旬さん出演、脚本三谷幸喜さんの『鎌倉殿の13人』は視聴しています。
私の歴史の知識は、小学生レベル。
源頼朝、北条政子は知っているけれど、源頼朝の父源義朝については不案内。
平忠盛、平清盛の名は知っているけれど、平家についてはほとんど知りません。
鳥羽上皇、後白河上皇の院政は知っていても、皇后たちの内外で起こっていたことは知りません。
巻頭に主要人物関係図がわかりやすく書いてあるので、どの時代のお話か、父子関係、婚家などについて確認して読み進めることができます。
五編の短編からなっています。
私が、一番好きなのは応舜が主人公の『漆花ひとつ』。
私が絵を描く人が主人公の時代小説が好きだからかもしれません。
今、少し考えてみました。
なぜ、絵を描く人が主人公の時代小説が好きなのか。
それは、絵描きが人の性を描き出しているから。
人だけでなく、その時代そのものの性が現れでているからかもしれません。現存している絵から、その時代に触れることもできます。
庶民である絵描き(お抱え絵師は一握り)を通した(絵描きの性も投影されている)生の時代に触れることができるからかもしれません。
濃縮された短編をぜひ、お読みください。
『白夢』夫に捨てられた女医師(男の医師とは同等に働くことは叶わない)と、子が産めない年齢になってから帝に嫁いだ高陽院(泰子)、今でいう更年期の二人の女性と、鳥羽上皇の御子たちを生んだ待賢門院(璋子)と美福門院(得子)のお話。
『影法師』はせつなく、
『滲む月』は、獄門にぶら下がる父の、夫の首を取りに行くところから始まります。
どちらも、この時代ならではのお話。(と言っていいのでしょうか。つい少し前まで形を変えて起こっていたのではないでしょうか。)
『鴻雁北(こうかんかえる)』は、楽器琵琶にまつわるお話です。