カメラのキタムラから「北村写真機店」へ。リ・ブランディングのキーワードは「ニューレトロ」。
みなさんこんにちは。和田康彦です。
株式会社キタムラは、旗艦店となる「新宿 北村写真機店」を2020年7月3日にオープンしました。
キタムラは1934年に創業した老舗カメラチェーンですが、2018年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の完全子会社になっていました。
キタムラをどう再生させるか。CCCはこれまで既存の小売事業を再構築してきた実績があります。書店は「蔦屋書店」、家電は「蔦屋家電」。レトロな店名で、専門性を高めた売り方でブランド力を高めてきました。「北村写真機店」も「カメラのキタムラ」をレトロ調に作り直した店舗で、従来型のカメラ店を再編集しています。
コンセプトは「新しい写真の売り方」。1階はグッズ、2階は日本で発売している大半のカメラとレンズの新品、3階は写真プリントとブックラウンジ。通常は工場での仕上げが必要な精度の高い現像が、ここでは15分でできます。4階は5000種類がそろう中古カメラで、5階は買い取りと修理、6階がヴィンテージカメラとドイツの高級カメラ「ライカ」の専門売り場になっています。カメラというモノと専門性の高いコトを組み合わせ「記憶と記録に寄り添うサービス」を目指しています。
日本のカメラは、ピーク時には2兆円に膨らんだ世界市場で、日本企業はシェア上位を占め続けています。しかしながら、今はカメラを趣味とする人は国民の1%にも満たないともいわれています。
スマートフォンの浸透などでカメラ離れが進みデジタル化が広がっています。ただ一方ではわざわざカメラを持ちたがる需要も生まれています。北村写真機店の来店者も年配層ではなく、20~30代が半分を占めており、ライカの購入者も同じような比率といいます。
シャッターを押すと、「ウィーン…」という音とともに10秒ほどで白いフィルムが出てくる。フィルムには撮影した画像がじわじわと浮かんでくる。富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」の使用光景です。
そのチェキの年間販売台数がついに1000万台の大台を超えました。2018年4月から2019年3月までの期間に1002万台を販売。1998年の発売開始以降、20年間の売上累計は約4400万台で、4分の1近くを2018年度の1年間で売った計算になります。
チェキの販売台数はiPhoneが発売された2007年を契機に増加傾向に転じており、スマホと競合することなく販売台数を伸ばしていったことがわかります。
チェキは撮影後、すぐに写真が出てくるので、イベントなどでその瞬間の思いをメッセージとして書き込んで残せるコミュニケーションツールとしても使えます。
スマホやSNSで写真をやり取りするのが当たり前の中で、フィルムとその質感が特別感を与えていることが人気の背景にあります。
また近年は、暖かみのある音、モノとしての味わい。インテリアとして壁に飾ってもお洒落なデザイン。従来はマニアの嗜好品、またはDJツールだったアナログレコードが、いまや若い世代も注目する最新メディアへと浮上しています。
デジタル化がどんどん進む暮らしの中で、人びとは今「質感」や「温もり」「味わい」を求めています。お客様との絆をつくっていくためにも「温もり」や「味わい」「質感」などニューレトロな感覚は重要な鍵を握っています。