A.ウェイリー版『紫式部 源氏物語1』を読み終えて
「源氏物語」に触れようと思ったわけ
多くの人が、高校生で一度は古文の時間に目にする「源氏物語」。
古文の時間が好きな人は、おそらく苦痛ではないが、
難解な上に、登場人物が多く、正直、意味がわからない。
イメージは、「光源氏の恋物語」だった。
そんなイメージしかなかった源氏物語を、いい意味で「崩す」人と出会った。
仕事で講演会の講師を務めてくださった梅林秀行さん。
その打ち合わせで、源氏物語が長く読み継がれてきている背景を教えてくださった。
で、その解釈に惹かれて、20年以上ぶりに、源氏物語に触れてみることにした。
最初に読んだ本は「100分de名著」の源氏物語
打ち合わせをして、講演会まで1ヶ月半ほど。
源氏物語の長さを考えると、全部読み解くのは「困難」と判断。
宇治十帖だけでもと思いきや、なかなかそれでは理解できんかもっと。
そこで、解説に近い本を探してみようと思い立ち、思い出したのがこの本。
『NHK「100分de名著」ブックス 紫式部 源氏物語』
ほんとに、100分で読めるくらい、読みやすかった(苦笑)
その中で、特に宇治十帖の解説は、講師の梅林さんのお話とよく似た印象を受ける解説がされていた。
読むとなると、どれを読む?
源氏物語は、多くの人が翻訳をしている。
与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、田辺聖子、橋本治、瀬戸内寂聴、、、
そもそも、「難解」な源氏物語だけど大丈夫?
高校生の頃、実は古文の最初の授業で読んだのは、
「あさきゆめみし」だった。
しかし、これを集めるのもなかなか難しいなっと思い、
ゆるーくSNSで聞いてみたところ、
A.ウェイリーの訳本があると教えていただきました。
900年後、その100年後
900年後に日本語(古文)を英訳し、
その100年後に英語を、現代語に翻訳するというこの本。
カタカナで表記される名前、欧米風の表記。
例えば、帝が政務する場所は「パレス」と表記されていたりする。
それが新鮮で面白かった。
ただでさえ難解な古文を、100年も前に英訳した人がいたなんて。
そして、独特の日本文化的なところもあるのではないかと思うのだけど。
それでも、外国の人にも通じる「ストーリー性」があるのだろう。
そして、意外と「読み手に任せる」表記も余すことなく使われている。
1日1話「源氏物語」
正直、先は長い。
そして1冊は、600ページを超える。本の厚みだけでも5センチ。
読み切れる気がしない。
しかも、4冊もある。
購入する、という選択肢は、一気に失せた。
そうか、図書館だ。
ということで、探したところ、すぐに予約できた。
分かってはいたけれども、実物をみると、厚さにビビる(苦笑)
そこで、目次だけ確認してみると、貸出期間内に読み切るには、1日1話。
これしかないと思った。
それでもめっちゃ短い章もあれば、長くて、1日で読み切れなかったこともある。
気になった「人」
まず、光源氏は、本当に「ひどい人」だと思う。
正妻の葵が亡くなった直後に、紫と関係を持ったり。
心の空白を埋めている、という感じよりも、もっと直感的に
その人を求めている感覚がある。
まだ1だけの展開ではあるけれど。
しかも、政治戦争に負けていくきっかけも「女性問題」だし。
ある意味で「呆れる」感じなんだけど、周囲の女性はそんなことを思っていない。
ただ、彼を待っている。しかもいじらしく。
で、末摘花、花散里とかは、出てくるんだけど、分量も少なくて
紫式部の描き方も、結構シビア。
まぁ、そこにもストーリー性があるのかもしれない。
もう一人、ひどい男性だなっと思ったのは、明石入道。
これはもう、勝手すぎるやん。親として。
というイメージ。しかも、それが「成就」していくから、
ますますひどさが際立つ。
ここに、娘の思いは表には出ないし、逆に親へ気を遣っている。
子を産み、その子もまた、高貴な身分になるわけだけど、
明石入道が描いたストーリーが、一定成就する「明石」。
毒親という感じがするストーリー。
それが娘の幸せと思っているというよりも、
自身がそうありたいから、の気がする。
そして、最も強いと思う人。
藤壺。
彼女は、どうやって秘密を守り通す覚悟と信念を持ち続けられたのか。
もちろん、誰にも知られてはならない。
そして、須磨、明石へ行く光源氏は、この秘密ではなく、他のことで
下野するという、これもまた「皮肉」ともいえる描き方。
母としての光源氏への愛か。
自身も光源氏を愛しているとする女性としての愛か。
生まれた子を守り通したいとする母の愛か。
桐壺帝への思いも確かなものなのか。
強い、というか、多面的な「愛」と思いが描かれている気がする。
そう、人の気持ちは一つじゃない。
2を予約したので
1日1話はもうしばらく続けてみようと思う。
どんな感想になるのか。
高校時代の「源氏物語」が、どう変わるのか。
ドキドキ、ワクワクしている。