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公務員だった頃の話#3~私の「カスハラ」体験談【その2】

皆さん、こんにちは!七年の海です。

私の公務員生活について綴るシリーズ第3回!
今回も、カスハラと思われる体験談を書いてみました。

やっぱり、実務の話を書いていると、途端に専門用語オンパレードになってしまう。読みにくいところもあるかもですが、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

【まずは注意事項を再掲】

記事の内容によっては、
同様のご経験をなさった方もいらっしゃるかと思います。
ご覧になるにあたっては無理をなさらず、
辛いと思ったら、読むのを中断しましょうね。
是非とも、ご自分のペースでお読みください。


当時の事実関係に関する記述は、プライバシー保護および地方公務員法における守秘義務等の観点から、一部を改変しております。

当該事案にかかわる問題、住民、組織、職員、私が置かれていた職場環境等を糾弾、非難、誹謗中傷等をするものではありません。
あくまで、私の体験した一事案を広くご紹介して私の自己紹介を目的としております。誤解のないようにお願いしたいと思います。
(ただし、ご意見等ございましたら、コメント欄に寄せて頂けると有難いです。原則として、返信することは致しません。ですが、書かれたコメントは全て拝読しております。)

「カスハラ」体験談②

案件:公図と現況の道路(赤道!)に相違があるので、元通りにしろ!

いわゆる公図のルーツは、明治時代の地租改正に遡ります。

明治政府が税収確保のため土地に税金を課す必要から、全国各地を土地調査・測量して地価を確定。もちろん、人力で測量して和紙に書き落としていくわけですから、現代社会からみても、その精度は十分に期待できるものではないですね。
ですが、明治以来、戦後の今であっても、長らく、
そうした「地図に準ずる図面」(公図)が土地取引の基本として使われていた歴史があります。そもそも、地籍調査のような正確な土地測量を日本全国あまねくすべての土地に関して実施していくことは不可能な話。

明治維新から約150年。
現実の土地には様々な気候変動や天変地異等の影響を受けて、
未来永劫、不変の土地なんてあり得ません。
水害、地震、山崩れなどの自然災害によって、土地の形状が大きく変形・消失することが、公図混乱の一因となっているそうです。

そう、今回の案件は、まさにそれに該当するもののようでした。
当該土地のすぐ横を一級河川が流れてて。あ~、これだわ・・・

さらに厄介なのは、赤道(あかみち)の存在。

赤道は、和紙公図の時代に朱色に塗られていたいわゆる無番地のことで、法律上は道路法の道路ではない扱いになります(法定外公共物という)。
道路法の道路ではないというのは、国道・県道・市町村道といった、道路として認定していない道のことをいいます。これはつまり、自治体として認めた道路ではないので、その維持管理には予算がつかないといわれています。
いわば、周辺住民の手によって管理される道。「道普請」という風習となって残っている地域もありますよね。

ですが、実際の利用実態や公共性のある場合には、自治体で予算を付けて修繕をしている場合もあるかと思います。私も、そうした赤道(認定外の道路といっていました)の修繕工事を担当したことがあります。

前回の事例(#2道路の水たまり案件)もそうですが、
自治体が管轄内の道路をどのように計画しどういう順番で整備・修繕していくのか。このやり方については、自治体の裁量となり、正解がありません。当然といえば、当然なのですが。おそらく、国や県で指針やガイドラインのようなものはあるでしょうが、自治体の判断に任せられているのが実態。

ここが、道路担当として難しいところであり、最も揉め事の大きいところでしょうかね。限りなく、創造性の高いクリエイティブな分野といっても過言ではないと思います。

皆さんは、都市開発をするゲームをやったことはありますか??
ときどき、YouTubeでそうしたゲームの実況動画を観たりするのですが、
おそらく最初にやることは、道路を走らせることなのでは??
ゲームだと自由自在に設計できますが
(川とか山とか、自然地形に影響を受けるという設定もあるようですね)、現実の道路計画は、それは、もう、妥協と諦念の産物。
歴史のある街並み、守るべき自然公園、見渡す限りの山林などなど。
道路計画は都市計画を多分に包含しているのです。

「ひとつ、よろしく頼むよ」!!?

さて、今回の赤道ですが。
公共性としては疑問がありました。
調整区域のいわゆる田畑が広がる地帯。畑の真ん中にあるような砂利道。
なにより、川沿いの道ですからね。
明らかに利用実態は畑の耕作者や周辺住民ぐらい。
交通量は、日に10人にも満たないのでは。正直、事業化する意味がない。

この案件が厄介だったのは、その依頼主が他部署の「お客さん」、
つまりかなり有力な地権者であったこと。自治体の大きな事業が絡んでた。
直接、その部署からも「ひとつ、よろしく頼むよ」的な感じで、
立場のある人からお声をもらっていました。
まあ、そこはサラリーマンとしては辛いところで、
ケンカする相手としては不適当なんですよね。
仕方なく、毎年なけなしの予算を割いてゆうことを聞いてましたよ。。。

役所には本当にいろいろな部署があるのですが、ともすると、
尻拭いをさせられる羽目になるところがあるようで。
くだんの建設課も、どちらかというとそういうお役目を引き受けていた、
というか、引き受けざるを得なかった。
そういえば、建設課に来た時、上司から「ここはドサ回りだよ!」って
茶化されたっけ・・・笑

前回でも触れましたが、今の時代(特にバブルが崩壊してからかな)、
役所の立場は弱いです。弱くなる一方、といってもいい。
特に、国よりも県、県よりも市町村は、それだけ住民との距離が近い。
自治体は地元住民や法人からの税金で賄っていることもあって、種々の要求に対して突っぱねることができない。地元のご機嫌を損ねてしまうと、進むものも進まなくなってしまう。

大声で喚く人、権力を振りかざして圧力をかけてくる人、大人のチャンネルでもってねちねちやってくる人。そうした人たちには弱かったりします。
法人・自然人(個人)の別なく。海千山千の世界かも。
こういう有象無象のなかには、当然、カスハラとなるような案件も含まれていますよ。思っているほど、お役所はドロドロ、魑魅魍魎の棲む世界だったりするところもある。私は単なる一兵卒でしたから、そういうエッセンスをちょっと嗅いだ程度。もちろん、あんまりいい匂いはしませんが笑。

逃げ道のない世界

辛かったのは、毎日のようにかかってくる長電話攻撃!

1回あたり1時間超えコース。担当者以外であっても、のべつ幕なくマシンガントークをまくしたてて、何をそんなに話すことがあるんか??
話している内容はしょうもない身の上話だったり自分の近況だったり。
全く案件と関係がないじゃーん!!(笑)
そうかと思うと、突然、くだんの赤道のことをまくし立ててきたりして、
ちゃんと聞いていないとまずい。
電話の後は、当然、記録を書き起こして報告書の体裁にしなければならず、
事務仕事を増やすばかり。
ハッキリ言って、公務妨害のレベル。ダレカ、カワッテクレ・・・叫

役所の特殊性として、代替性がない、ということがある。

民間企業の場合であれば、
(いろいろ事情はあろうかと思うが)究極的には、
「出入り禁止」という措置を講じることができる。逃げ道がある。

ですが、役所は替えがきかないと云われます。

住んでいる住民は、このサービスはA市、あのサービスはB市とか選べない。
A市に住んでて役所の対応が気に食わないからといって、
隣のB市に頼んで替わりに対応してもらう、ということもできない。
まあ、クレーマーが他自治体へ引っ越してくれたら、
それはそれでA市にとっては有難い話なのですが(笑)
だからといって、おいそれと追い出すことなんてできない。

だから、端から諦めている住民もいるし、一方で捌け口がなくてA市に怒鳴るしかないという住民もいる。まさに、両者とも身動きとれーず!

構造的に、カスハラが生じやすい土壌があると思いますね。

こうしたクレーマーは、一度、
どこかの部署で無理矢理「やってあげちゃう」ことをしてしまうと
(法令を超えて対応してしまうこと)、それに味を占めて、
ほかの部署でも同様のことをする場合があります。

だからこそ、組織として毅然とした態度で臨まねばならないのですが、
構える方の体制はけっこう脆弱だったりします。管理職の色にも依ります。

全体の利益のために、職員は犠牲になってもいいんか??

結局、この案件は、電話対応中にブチ切れてしまい(笑)↓、
先方から「おまえじゃ話にならん。担当者を替えろ!」と
大変有難いお言葉を頂戴することになり、私は担当を外されました、、、恥
(私「さっきから何をおっしゃっているのかさっぱりわかりませんね。私もヒマじゃないので、簡潔にものを話して頂けませんか?」ほぼ原文ママ)

まあ、今振り返っても、変なことは言ってないと思いますけど。
ちゃんと、相手への配慮も忘れていませんし、丁寧語でお話ししましたよ。
気づいた時には、言葉が口をついて勝手に出ていたというか。
隣にいた、若い女性職員はビックリしたことでしょう。
「プロケースワーカー100の心得」より、
【091 不愉快なときは感情を出していい】を発動したまでよのう!笑
(次回#4で詳述しますね)。

ですが、私の心はすでに蝕まれていたようですね。

この年は、春先にコロナに感染してから具合が悪く、体調不良の日々が続いていました。「もう、このまま続けられそうにない・・・」と思って、一度退職届を出そうとしたのですが、悩んでいるうちに提出期限を過ぎてしまい、結局、その年度の最後に休職してしまいました。。。


電話というのはやっぱり限界があって、コミュニケーション手段として、
これほど難しいものはないな、と。電話は、嫌いです。
やっぱり、一番伝わるのは、直接会って膝詰めでお話しをすること。
顔を合わせてお互い言いたいことを言い合うのが、まだましでした(そうはいっても、役所側は十分にものが言えないものですよ。トホホ・・・)

なので、いつの頃からか、
電話口で大声で罵声を言われたり脅されたり、
あるいは、窓口で怒鳴られたり厳しい言葉を言われると、
恐怖のあまり、心拍数が上昇してしまいます。ドキドキが止まらなくなる。頭は真っ白になってくるし。
説明しなくちゃいけないのに、口から言葉が出てこないの。コワイヨ・・・

いろいろ訓練したり練習したりしてみましたが、
やっぱり私にはできなかった。頑張ったけどね。。。泣

どっちかが「正しい」と言い切れるのか??

役所の人、窓口の人は真面目で誠実な人が多いです。

私が図書館に勤めていた時。
県庁所在地にあたるマンモス自治体でしたので、いろいろな職員を見ました。確かに、問題のある職員やそもそも社会人として人間性が終わっている職員(笑)もいましたよ。それは事実。

だからといって、
役所の人が住民とケンカしちゃいけない。
正論であっても、きつい言葉さえも言ってはいけない。
さもないと、すぐSNSに投稿されて炎上してしまう。
「お客様は神様だ」みたいな、行き過ぎた間違ったサービス精神については、前々からいかがなものかと思っておりました。
(「お客様は神様だ」については、別のときに詳しく書こうと思います)

積極的にケンカしろとは言いませんが、それこそ、きちんとした情報公開をして白日の下で議論を闘わせること。これって、民主主義の基本ですよね。民主国家として、あるべき姿だと思うのです。
役所の人だって、一昔前は住民と怒鳴り合いのケンカをしたものだった、
という話を先輩職員から聞いたことがありますよ。
いつから、役所の人たちは住民の目が怖くなってしまったのでしょうか??

まだまだ、日本というお国は、民主国家としての形が稚拙というか未熟な部分がある。「人格」「品格」「国柄」そういう言葉が死語になっている時代のなかで、どうネット・SNS全盛の社会と付き合っていけばいいのか。
カスハラ問題は、時代を映す鏡なのでしょうね。

くれぐれも、皆さまご自分を大切に。組織は従業員を守ってくれませんよ。



今回はここまで。
皆さま、大変お疲れさまでした(笑)
いかがでしたでしょうか。

第4回では、
いろいろ我慢し過ぎて最終的には病んでしまった私ですが、それでも
挫けそうなとき、心の支えにしていた本のことをお話ししたいと思います。
とてもいい本ですので、助けられる方もいるはずですよ。

次回も、お楽しみに!

それでは、また。

つづく

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