星と鳥と風~30 意思を持つ石


ある日、私は
鳥と四国に
音楽のツアーに出かけた。
そのツアーは私にとって、今でも
とても思い出深い
忘れられない旅となっている。

そこでお世話になった
とあるファミリーの大黒柱のS君は
ヒマラヤなどで石を買い付けて
それをマクラメで編み
ペンダントを作って売ったりしている
石屋さんだった。

彼の選ぶ石達は
どれも個性豊かであったが
同時に
強烈な
【意志】

持っているのが
素人の私でも分かった。

その時期辺りは
私は身体中が非常に敏感になっていて
ツアー中に体調が悪くなる事が大くあり
御守り代わりに
自分に合う石を探していた。

なので
これは、絶好の機会だと思い
S君のコレクションを見さていただいた。
S君の家の窓からは、瀬戸内海を見渡せる
小さな
【石達のスペース】
が、設けられていて
そこでS君に詳しい石の説明を受けながら
たくさんの石達を拝見させてもらった。

【そのどれもが唯一無二の素晴らしい石達】

だったのだが

残念ながら
【これだ!】
となる石とは
巡り会えないでいた。


*何?あんた、石なんか欲しいの?*


この頃の少し前から私は
【何者かの声】
も聞こえ始めていた。

これだけを聞くと、暑さでやられたおじさんの
戯言みたいだ。
確かにその時期は真夏で
外は灼熱の太陽が降り注いでいたが
いたって私の脳内は
【通常営業】
で動いていた。

私は
 その声の主
(物語の先でわかるであろう存在)
の事を文字にして
【風】
と呼んでいる。

*あんたが石なんか付けた日には
豚に真珠ね!
やめときな*
*自分に見合う石なんかなかったろ?
それに
あんたの中に一つ
大きな

【意志】

があるじゃない
そんな石を買ってる暇があるのなら
とっとと自分の意志を磨きなさい*
と言い放ってきた。 

なんだよ
まったく
口の悪い
(風)

それにしても
【私の中の大きな意志?】
とは?

私は問い返した

*あんたの中に眠ってる
バカでかい
【クリスタル】
の事よ*

続けて

*そんなに石がほしいのなら、自分で探しに行けば良いんじゃない?
あんたと一緒の性質を持つ
【ケイ素】
同士なんだから
望めば近いわ*

風はそう言い放ってから
急に何も言わなくなった。

私はその言葉が、ツアーが終わって
家に帰ってからも
脳にこびりついていた。

それから私が育った土地の文献を読み漁った。
確かに、大昔に【水晶】が採れる沢があると載っていたが、詳しい場所までは全然分からなかった。

分からなかったが
居ても立っても居られなくなった私は
気がつくと、当てもなく
その沢を目指して車を2時間も走らせていた。
大体の予想している土地辺りは
とある山深い里で
私は
誘われるように
知らない山奥へと入って行った。
それと同時に 
【水晶の気配】
みたいなものも感じていた気がする。

*そこ、左に入って*

【また風からの端的なメッセージが届く】

そこは奥まで行くと行き止まりの

【昔の旧道】
といった所の場所だった。



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