ショートショート 『もすきーと』
「ルルちゃんは?好きな俳優さんとかいる?」
「私わぁ」、目を右に向けるルル。
で、バーカウンターを挟んで彼女の左前方にいる俺の方を向き、照れ笑いを見せつけてくる。
「あいみんちゃんは?」
え、私に質問してくれるの?待ってましたとばかりにあいみんが視線をよこす。
俺が、グラスを右手で持つと二人が即座に俺の手先をみたが、おそらくそれは、右手の親指以外の指4本に太めのシルバーリングをつけていたからだが、
これを二人はどう捉えているのだろうか、攻めすぎて怖い?キモい?
セクシー?
まあセクシーやろな。
これはソフトエッチやないかい。
性的欲求不満を執筆で発散。
アートに昇華できなければ、ただのオナニーテープだ。
自慰を描いてるわけです。
・
・
・
あなたは何で感じますか?
あなたは何を悩んでいますか?抱えているものは一生モノ?それとも頑張り次第でどうにかなりそう?一生モノ確定してる方々ごめんなさい。
でも私も一生モノかも。
こんなこと話題に出さなきゃよかったかな。
でも、私たちは明日も重い腰を上げてそれぞれの生活に立ち向かわなくてはなりませんね。または、立ち向かえないことに立ち向かわなくてはなりませんね。
でも、大丈夫。なんて言えないけど、
私たちが、遺伝子継承の担い手として奮闘している愛くるしさを胸に抱いて、
明日もとりあえず生きてみよう。
・
・
「えーと、あいみんわぁ、うぅん。」
とわざとらしくぶりっ子をして、ぶりっ子を俯瞰してやってますよ感を使い、ぶりっ子を堂々とする技だ!
これは自信がないとできない清々しさがある。まあ可愛いもんな、いいなやっぱり健全な自信のある人は嫌味がなくて。ごめんでもそうやろ。
あいみんが顔を花に見立てて花びらを作るジェスチャーをしたので、
俺が相手の手の動きを真似る。
これができる俺の自信どうだ!
俺はフェミニン美形イケメンだぞ。
お前よりセクシーだろ。
「向井理とか?」
「おー。かっこいいよねえ、、」
内心めちゃ焦る。ガチイケメン。自信ちょっと削るんやめいこっちは客やぞ。
ニートの持ち金は、自分で稼いだ金より、金銭ではなくライフを削ってることをわかれよ。
ルルの方のトップスの片口がスリットになっていて、肩の肌が出ていることに今気づく、久々の女の子相手に緊張しているのと、会話に夢中になりすぎて全く気づかなかったことに驚いた。エロ補充を目的にもしてるのに。不覚だった。
胸もよく見ると、めっちゃデカかった。
でもまだ、あいみんかなあ、ごめんなw
やっぱ顔面は大きいわw
「俺は、最近は三白眼の人が好き、ほら、河合優実とか見てよこれ。エロくない?」
俺がケータイの画像を二人に見せる。
あいみんが、ほら三白眼だよーと、両手を使いあっかんべーの目の剥き方をする、
「それでも黒目が下についてるよw」
「あーん。このカラコン黒目部分が大きすぎてw」
「無限に黒目だ」
「三白眼!」
写輪眼の言い方で、今度は上下のまぶたを指を使って剥いてこちらを見る。目薬をさす時の要領で。
ナルトってZ世代でも見るんやな。なんか安心。
「こっち見んなw あ、でもそういうキャラおるなあ」
内心今日1かわいい。かわいい子はブスな表情まで可愛いからすごい。
It’s a magic! 若いって素晴らしい!
認知学?認知心理学?そういう類の、元の可愛い顔を記憶しているから、
その顔と常に照らし合わせながらそのブサイクな顔も見ていて、それが汚く崩れることで、むしろ、恥部を見せられているかのような興奮材料に変化する、そういうやつやろ。脳マジ性能よすぎだろ。人間進化しすぎ。もっと動物たちに、棲家を与えよ!
彼らに食物を!誰か!いませんか?
「あ!1時間すぎてる!まただわ」
俺が、タイマーをかけていたはずの、いつまでも鳴らないケータイを不思議に思い画面を見ると、基本タイムの1時間を通り越し、延長タイムに入っていた。
金足りるかな?ちょっと内心冷や汗、足りなかったらあいつ呼ぶしかないよな。つけてくれんやろし。ガールズバーってつけてくれんよね?いやあ、言えないw なんかロクデナシみたいになるし。ヒモとかなってみたいけど、ほら、楽をしたいっていうのじゃなくて、ポーズとしてさ、エロくね?その関係性が趣(おもむき)があるじゃないのよ。しゃーない、ダメならあいつ呼ぶか。でもクレジットも使えるって書いてたっけ?
ここに来る前に見たこのガールズバーのサイトを思いだす。ケチりたくはないが実際に金がないので、延長は避けたかったけど、
でも今、ここ数ヶ月の人間関係でもトップクラスに楽しいからな。
別に30分伸びて、、1500円増し?くらいええやん別に。
そこケチってどうするんよ。
楽しめる時に楽しんどかな。
いつまたバッドに入るかわからんわけやし。
「また1時間間違えてたwアホやん俺w」
と、とりあえずトイレに立つ俺。
「えへへ」と後頭部の方で二人の可愛い笑い声がしたので、気持ちよかった。
やっとあったまってきたぜー、俺は、トイレで用を足しながらぶち上がる。女の子を笑わせるって楽しー。ソフトエッチだわ今の俺には特に。女を笑わせれる知性があってよかったわ。マジで。胸には、Lost In Translationの自作のドッグタグ。作品名、公開日、監督名を刻印したやつ。こんなセンスがいい俺だから、こんなのをつけてガールズバーに来れる俺だからこその、あの女の子たちを楽しませれる。
他のインキャの成れの果てのオヤジたち、と俺相手では明確に彼女たちの態度の差をつけさせたい。そうすることでマーキングしたい。というか彼女たちはオヤジたちにいい顔するのやめてほしい(ただの願望)。まあ、オヤジたちは俺より金落としてるから営業的には、やが、ここは人と人のコミュニケーションの場ですから。イケメンと楽しむ夜。プライスレス。スカーフを首に巻いてきたのも、ギリギリOKだろう。何せ俺はセンス坊主。なっはっは。楽しそうやなw
落ち着け、調子に乗りすぎたら痛い目みるで、
でもあれだな、
それくらい調子に乗れる瞬間が生活の中で必要だと思うわ。
だから、その結果、何か粗相があってもそれは許してくれよ。
そこは、自己中にならせて?
そら、危害を加えるような真似はしないよ。やなやつにはなりたくないもの。
鈴木真海子のポスターとかはってたら都会感でるのになあ。
ゆるキャラばっかり、実写の何がダメなんや、、
あダメだ、彼女たちをバカにするな。
こんなに楽しい気持ちにさせてくれてる妖精たちをバカにするな。そういうところよ、そんなん人それぞれやん。
ようを足し、トイレットペーパーをちぎり、股間を拭いたあと、それは便器の中に捨てて、
また新しくちぎり、
目薬をした後、涙丘に少し溜まっていた目やにを洗い流して拭いた。
それを便器に捨てて、
さらにもう一枚ちぎり、天使たちの前でたくさん笑ったため浮いていた顔の脂汗が
気色悪くテカっていたので、あぶらとり紙の代わりに押し付ける。
こういうのってほぼ無意識で手が動くよな。O Lになった気分。いそいそと、お手洗いでメイク直し。
ヴィジュは店に入ってきた時より落ちてしまった、顔も赤いし、浮腫んでるな。
こういう時に気持ちよく楽しませてくれないのが、自律神経失調症よな。だる。
まあいいや、俺はイケメンなんだし。
さあ、田舎女、されど天使たちよ!
「完」