ショートショート『ミスアンダースタンド』
喜んでいた君の表情も
怒っていた君の無表情も
好きだから嫌味や不機嫌に対して辛抱強く振る舞ったこと
白い光をテーマにした手作りの写真集をもらって泣いたこと
柄にも無く映画館の一番後ろの席で頭を肩に乗せてきた
寝たのかと思った。って茶化したら、せっかく勇気出したのにってすねていた
海老の天ぷらを食べてる途中に、パスタが食べたいって。なんでそんなこと言うの
霧が濃く出た夜十二時過ぎ、等間隔で並ぶ街頭のせいで道がトンネルみたいだった
「今夜はノームがすごいですから、気をつけてくださいね」
おまわりさんはそう言って、車の窓ガラスをノックされてビクつく私たちの緊張を解いた。
「ノーム?」
ケイはそう言っておまわりさんに聞き返した。本当に不思議そうな声色で。
「濃い霧のことです」
「ああ、濃霧ですか」
一応、身分証明書を見せてもらえますか。この時間なので。学生さん?
はい。
そんなやりとりをしているうちに、目の前に広がる滑走路からまたANAのロゴが一機助走をつけて飛び立って行った。
「ケイ。濃霧って言われた時なんだと思ったの?」
私は学生証を財布にしまいながら聞いた。
「ナウシカのオウム的なのを想像した。なんかヤバい虫が発生してるのかと、ほらこの駐車場の後ろ森だし」
私は、それを聞いて五分間は笑いが止まらなかった。ケイが、私がさっきあげた青いセーターの首元にタグを付けたままおまわりさんにビビってたのも含めて面白かった。
時刻はもうちょっとで十二時だ。誕生日おめでとうケイ。
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