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【読書感想文】主人公を語る

積ん読本消化強化月間で指定した5冊のうち1冊読み終わりました!!

こちらの本です
アートな短編集と紹介しました。 

アートな短編集と書いたので「原田マハさんの作品では?」と思ったあなた!正解です🤣数ある作品の中でこちらを選びました。

オープン📖

ジヴェルニーの食卓
原田マハ著
集英社文庫
2015年6月30日第1刷
(単行本は2013年刊行)

絵画鑑賞は趣味のひとつ。なので画家の物語は非常に興味深かったです。この本は4編の短編で構成されています。どの作品も画家本人が何かを語ることはありません。語り部は画家の周りにいる人たち。でもそうすることで画家の存在感が際立っていく気がしました。せっかくなので今回も1編ずつ感想を書きたいと思います。

展覧会を鑑賞して印象に残った作品の絵ハガキをミュージアムショップで買うのが習慣になりました。


美しい墓

マティスと、ピカソ。
ピアノと、ヴァイオリン。
夕凪と、季節風。
静寂と、熱狂。
相反し呼応するふたつの、この上なく豊饒な融合

ジヴェルニーの食卓「美しい墓」より

ある修道女の思い出話。彼女は美術に造詣の深い老婦人の家政婦として働いている時、マティスに出会い、ピカソに出会います。そのことで彼女の運命は大きく変わったような気がします。あれだけ偉大な人に二人も会ってしまうとそんな風になってしまうのでしょうか。作品の終わりの方でピカソのマティスへの強い思いが分かるエピソードがあります。少女に伝えたピカソの言葉はとても痛かったです。


エトワール

思い出さないはずがない。あれほどリアルで、センセーショナルで、世間の耳目を奪った作品は、そうはないだろう。

ジヴェルニーの食卓「エトワール」より

エドガー・ドガといえばバレリーナの絵。このタイトルを見た時、あの有名なバレリーナの絵の事だと思いましたが違いました。小さなバレリーナの彫刻の物語です。語り部はドガの友人で自身も印象派の画家であるメアリー・カサットです。華やかに見えるバレエの世界もあの時代には辛い裏側が潜んでいました。貧しい生活から抜け出すためにパトロンを探す少女たち。そんな彼女たちのために絵を描くドガ。時には友人メアリーの理解を超えるようなこともやってのけてしまいます。ドガにとって絵は単なる芸術だけではなくバレリーナたちへのエールなのかもしれないと思いました。
私は少女の彫刻の実物を見たことがあります。2010年に横浜美術館で開催された「ドガ展」で。絵ハガキを買っているので何かを感じたのだろうけど、何を感じたか全く思い出せません。その展覧会の目玉は「エトワール」という絵画だったせいかもしれません。その作品の印象が強すぎました。


タンギー爺さん

わしは、信じているんだよ。彼が、「自分はポール・セザンヌである」と気がつく日が、そう遠くないことを。

ジヴェルニーの食卓「タンギー爺さん」より

タイトルを見てゴッホの話かと思いました。(同タイトルの作品があるので)

でも違いました。画材屋を営むタンギー爺さんの娘がポール・セザンヌへ送った手紙で構成されています。彼女の手紙からセザンヌの変化がよく分かりました。最初は絵の具代を滞納するほど貧しかったのですが、親の財産を引き継ぎ、家族を持ち、後輩たちから慕われ尊敬される存在へなっていく。そんな変化の中でタンギー爺さんは一貫してセザンヌの才能を信じていました。セザンヌとして確たる地位を掴むところを見たがっていましたがどうだったのでしょう。最後の手紙はとても寂しいものでしたが、タンギー爺さんが結んだセザンヌと他の人達との縁が感じられて温かな気持ちになりました。


ジヴェルニーの食卓

「もっと、もっとだ。もっとたくさんのカンヴァスが必要だ。全部、写し取らなければ」

ジヴェルニーの食卓「ジヴェルニーの食卓」より

クロード・モネの二番目の奥さんアリスの連れ子、ブランシュが語り部です。裕福な時に出会い、後に家が破産して貧しいモネの所に居候していた過去パートと、国からの依頼で睡蓮の絵を描かないといけないのに白内障で思う通りにならないモネの現在を描くパートを行ったり来たりします。過去に大きな試練を乗り越えて家族になったモネとブランシュ。後に互いに独り身になってまた一緒に暮らすようになった二人。父と子として、画家と助手として、過去そうしたように支え合い訪れた試練を乗り切る姿が感動的でした。


この秋、この本を携えて美術館へ行きたくなりました。原田マハさんの他のアート小説も読んでみたいと思います。


※おまけ
今回のカバーは「ドガ展」で買ったものです。よく見ると……。

これは、もしかして……😳


さて、次はどのカバーが外れるかな?
お楽しみに😁

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