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つめたくて、あたたかな気持ちをはこんでくれる。『ゆき』

『ゆき』
作:シュルヴィッツ 訳:さくまゆみこ


嫁入り道具のように実家から持ち出した本たちのなかに、シュルヴィッツの絵本がある。

大きな声では言えないが、雪が降ると今もワクワクする。

雪国のかたはそれどころではないので、そんな事を思うのが申し訳ないし、通勤やら遅延やらを思うとゾッとするのだが、年に数日降るか降らないかの地域に住んでいる身としては、やはり特別なのである。

 「ゆきがふってるよ」
  おとこのこがいいました。

著者は、名作『よあけ』のシュルヴィッツ。
心地よいリズムで私たちを詩的な世界へ誘ってくれる。

どんよりと灰色の世界に降り積もる雪を楽しむ男の子。
とにかくやり過ごす大人たち。
自分もいつしか、やり過ごすことを覚えたことに気づく。


この小さな街には、本屋が2軒ある。
そのうちの一軒、マザーグースが描かれた本屋さんから、キャラクター達がふわりと出てきて、ダンスの挨拶をしておとこのこと一緒に踊り出す。 

 「ゆきがふってるよ」
  おとこのこがいいました。

この数ページにわたる、雪が積もりくる世界の描写が大好きだ。ワクワク感が半端ない。

雪が止んだその後に拡がる美しくつめたい世界の特別感。

本は、Kindleやaudibleも便利で良いけれど、絵本だけは、めくる楽しみを味わっていたい。

今年ももうすぐ、寒くなる。
けれども今年の特別はやってくるのか、少し心配な今日この頃。

変わりゆく季節を全身で味わうことができますように。

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