「ともだち」について考えてみよう
中学校 内容項目(8)「友情、信頼」
「あずさちゃんごめんね」を使って考えてみる。
上辺:おれこの話きらいだ。
小路:(ばっさり……!)
上辺:登場人物みんななんかムカつく。それによー。なんつーか人間の残酷さがダダもれ。
小路:え……? どこが? どういうところが……?
上辺:これ、なんとなく「いい友達だったのに私は気づかなかった。ごめんなさい」的にまとめてるけどよー、そもそも原因は「まわりのみんな」なんじゃねーのか? だからこんなやるせない結果になったんじゃねーの?
小路:…………。
上辺:人間って平気でこういうことするよな。そんで、自分が当事者だとはつゆほども思わねー。平気なツラして暮らしやがる。ウラを迫害して殺したヤツらもそうだった。面の皮が厚いっつーか、見えないフリしてる情報が多すぎんだよ身勝手な。
小路:(耳が痛い……)……ウラはどう思った?
ウラ:……うむ。あずさという娘が、まわりの人間にも、先生にも、大人たちにも、なにもかもに絶望しておるように見えて胸が詰まる思いがした。
小路:ああ……。やっぱりウラもそういう感じなんだ……。
ウラ:あずさは……、「あずさを汚いと思う心」が、このさつきという娘の中にもあるのを知って、それを使ってでも、さつきを救いたかった――、ということなのじゃろう?
小路:うん……。悲しいけど、きっとそうなんだと思う。
ウラ:ならば、上辺の言うようにひどい話じゃと思う。弱い二人が、ふたりぼっちの世界で生き残るため、非情な手段を取るよりなかった――、という話に思えてならぬ。そういう居心地の悪さを作ったまわりの人間が悪いのじゃと思えてしまう。
小路:…………。
ウラ:ほんとうなら……。こんな話は生まれてはいけないのではないか? これは、「孤独に追い込まれた二人が、生きるため、一人を犠牲にして孤独に耐えた話」なのではないのか? 悲しい、救いのない話ではないのか?
小路:でもぼくは……。
ウラ:……?
小路:ぼくは、あずさちゃんの気持ち、少しわかるよ!
ウラ:(びっくり)
小路:きっとね……。明かりが欲しかったんだよ……! この二人はもう二度と会わないかもしれない。だけどさ……、あずさちゃんは日々の暮らしの中できっと思うんだよ。「あの子は、きっと『いやだ』って言えるようになったはずや」って。「少しかもしれないけど、生きやすくなったはずや」って。
ウラ:…………。
小路:それがあずさちゃんにとっての救いだったんじゃないかな。ぼくがそう思いたいだけなのかもしれないけどさ……! だけどさ……!
上辺:小路、ちょっと泣いてんじゃん。読み終えた時には泣いてなかったのに。
小路:だって……、ウラや上辺が悲しいことばっかり言うから……。
ウラ:小路、すまなんだ。おぬしを追いつめるつもりはなかった。
小路:……確かに、さつきちゃんとあずさちゃんはしかたなく「友達」になったんだと思うよ。だけど……、あずさちゃんの真意に気づいたとき、きっとさつきちゃんはあずさちゃんをはじめて心から信じたと思うんだ。この瞬間に、きっと二人は友達になったんだと思うんだ。
ウラ:…………。
小路:二人はもう会わないかもしれないけど……。それでも二人は友達なんだよ。互いの心の中に大切な存在として残ってるんだもん。きっと、会えなくたって友達なんだ……!
まとめ
ウラ:「友達」と「友達でない者」のちがいはどこにあるのじゃろう……。この二人は小路の言うように「友達」になったのかもしれぬが、他の者はどうなのじゃ? どこからが友達でどこからが他人なのか……?
上辺:ウラは少し理屈っぽすぎんだよ。んなもん、互いに「友達だ」って思った瞬間からに決まってんだろ。いいんだよテキトーで。
小路:ほんとはさ……、ウラが言うみたいに、こういう話に共感できちゃいけないのかもしれないね。だってそれって、こういう悲しい話が世の中にはたくさんあるってことだもんね。切ないよね。
【参考】「中学校学習指導要領解説 特別の教科道徳編」より
(8)友情、信頼
友情の尊さを理解して心から信頼できる友達をもち,互いに励まし合い,高め合うとともに,異性についての理解を深め,悩みや葛藤も経験しながら人間関係を深めていくこと。
(小学校)[友情,信頼]
〔第1学年及び第2学年〕 友達と仲よくし,助け合うこと。
〔第3学年及び第4学年〕 友達と互いに理解し,信頼し,助け合うこと。
〔第5学年及び第6学年〕 友達と互いに信頼し,学び合って友情を深め,異性についても理解しながら,人間関係を築いていくこと。