【詩】花瓶

枯れてしまったねって、
ぼくは、惜しむようにその花瓶を見つめていて、
すると誰かが横から、昔は咲いていたっていうその思い出も、ほんとうは、ぜんぶがぜんぶきみの勘違いに過ぎないのかもしれないよ、とそんな風に言ったような気がした。

教室だね、きっと教室がそう言ったんだ

でも、べつに勘違いでもよかったよ、陽が差し込んで、その花瓶が透明に、けれども確かに煌めいていること、それだけで、淡く今にも崩れてしまいそうな一輪の花が、これ以上ないくらいにうつくしく透明な嘘として、思い出のなかに咲いていたような気がした。

つまりね、思い出を愛するということは、嘘を愛するということなんだよ

つまらないね、そう言われながら、ぼくはきっと笑っていて、
それで、もうとっくに大人になっていた。

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