【詩】真空
暴言しか吐けないその人は
多くの人に疎まれ、嫌われながら死んでいった
か細い声で「みんな死ね、みんな消えてしまえ」と言いながら。最期の最期まで、塵を見るような目で見られながら。それでも、ただのひとつも、言いたいことが言えないまま。
痛み止めの種類が違っただけなんです
痛かった、ただ痛かったんです
と、その人は言いたかった
数多の注射痕と大きな傷口がひとつ
割腹自殺の傷口に、その先に、道が開けているような気がしたから。そんな風に、どうしようもなく願っていたから。
けれども道なんてものはどこにもなくて
その人はただ腐敗していくだけでした
ただ酸化していくだけでした
ああきっと、真空なんてどこにもないんだ
希望の歌が、優しい言葉が、今日もぼくたちの首を絞めている