【詩】ひとり部屋の詩
誰かが使ったことのある言葉は、ぜんぶぜんぶ嘘みたいな気がしている、この小さな部屋で、広い広い空をただ空想することしかできないのに、わたしは、みんなが好きなきみに向かって、嫌いと言いたくて仕方がない、言葉じゃないなにかをぶつけたくて仕方がない、涙の色も透明じゃなくていっそ水銀みたいに光っていればよかったね、眩しい恒星みたいに気高く光っていればよかったね、その本を好きなわたしは、わたしじゃなくて、本当はきみ自身であるような気がしている、そうじゃなくてもいつかどこかの海底で一緒になってそのまま溶けてしまうような気がしている、そうして構成する八割方の要素はきっときみになる、きみの精一杯の言葉で、きみに褒められて、わたしはそのとき心から嬉しかったはずなのに、いつの間にか鎮火するみたいに部屋のなかでそんな感情が消えていたのは、きっと、きみがわたしの瞳ばかり褒めるからだ、「好き」と伝えるために、わたしたち、ただ瞳を褒めるしかないけれど、それでも「優しいね」「いい人だね」って空を見つめるみたいに言われても、そんなところに絶対わたしはいないよ。