【詩】画家の詩
たぶん、この世界のほかのもの、そのすべてに対して綺麗と思う必要がないんだ、もし自分が綺麗ならば。夕陽に目を細めるみたいな羨望で、眩しいけれどそれが遠くにあることをあらためて認識するような感情で、そうしてその自身の感情にも自分で気づかないままで、わたしはずっと世界をみていた。みていたけれど、いつしか気がつく、自分が絵画から出てきたわけではないこと。なにも考えていないのに頬杖をつくのが好きだった。頬杖をついて、カーテンが開け放されているけれど閉めきられた自室の窓、そこに射す切れ切れのまばゆい光線を眺めているだけで、わたしは、誰でもない誰かが、なんの拍子もなくその光景を、わたしが映っているその光景を、きれいなきれいな四角に切り取って、それで、一枚の絵にしてくれると思ったのだ。この世界で、わたしを救ってくれるひとがいるとするなら、それはきっと、どこにいるかも分からないひとりの画家だけだった。