【詩】望遠鏡
じっと遠くを見ている、なんにもないのにね。きみの目には、その瞬間、なんにも映らない。ぼくはそこに映らないし、目の前の日常すべて、なかったことにされたみたいに映らない、それは憧れ、信じること、恋や愛、きっと、そういう類のものなのかもしれなくて、それで、ぼくには分かっている、なんにも見たくないから、遠くを見るのだということ。そこにあるのが、曇り空だろうが晴れた空だろうが関係なく、その空に、星があろうがなかろうが関係なんかなく、世界があろうがなかろうがどうでもよくて。
ある日、世界中の望遠鏡が、誰かの手によって壊された。
それによって、きみは以前よりも、ずっとずっと幸せになった。
そしてそのあいだ、当たり前のようにぼくは不要な存在になっていって、この地球は、ファンタジーで埋め尽くされていきました。光がなくても、ずっとファンタジーは綺麗、ぼくはもう、なにも願えない石になってしまったから、ただ、きみが幸せならそれでいいよ。