【詩】王国
どれだけ正しく嫌いと言えるか、そのことにすべてが賭かっていた、夏。教室は夏みたいで、夏は青春みたいだ、なんてきっと、ぜんぶぜんぶ忘れてるだけだよ。あのとき、あの子もあの子も、すぐ近くにいるのにまるで地平線の先にいるみたいだった。すぐ近くにいて、声もすぐ近くで聞こえているはずなのに、それは熱で膨張して浮かび上がったみたいで、その熱でわたしものぼせてしまったみたいに、ずっとひとごとだった。本当に同じ教室にいたんだってどうしても思えない。答案用紙の右端に赤ペンで書かれた点数は、もう覚えてなんかいないし、国語の教科書の物語のラストシーンも、数学の方程式の解法も、黒板に書かれた文字と一緒に消えちゃったんだと思う、でもそれよりもっと大事な青春のひとときをわたしは過ごしたんだよ、って知らない誰かに言ってみたかった人生。誰にも嫌われたくなかったし、全員から愛されたかったよ、わたしは。あのときみんなは、わたしじゃなくて、わたしの奥の誰かに向かって笑いかけていた気がする。