【詩】栞
ぼくは偉くなりたくて本を読んでいた。けれどもきみは本を読みたくて本を読んでいた。
ずっと分かっていた。ぼくときみが違うことは
文字は文字のままだった。だから栞が必要なんだ。読んだ証が欲しかった。そんなぼくは澄んだ空気の下で、何度も本を閉じては開いてを繰り返していて、意味もなく煌びやかな太陽に目を奪われてばかりいる。
あどけないきみの表情が苦しかった。きみが羨ましかった。
栞のいらないきみへ
どうか物語を書いてください。きみが主役のそんな物語を。
ぼくはきみが創ったその物語を跡形もなく破り捨てるだろうけど、それでもきみはぼくの存在を完膚なきまでに否定できるくらい美しいのだから。
ぼくもいつかきみの物語を書くよ。偉くなるために。