進化論と心理学と脳科学的な人間学(Ⅱ心とは?)
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進化論と心理学と脳科学的な人間学
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他者は鏡だ!
むかし、キリストが生まれるもうちょっと前の話。
インドのある小国の王妃様に双子の女子が生まれた。
双子は縁起が悪いとされ、15歳になるまで片方の子は遠く離れた村で里子に出された。
15年経って里子に出された王女が戻り二人は一緒に暮らすことになった。
ある日、二人は村の祭りを見物に出かることになった。
城下町を出て村へ至る途中、彼女たちは老人が道に蹲っているのに出会った。
『どうされました?私たちに何かお助けできることはありますか?』
老人は答えた。
『私は修行で国中を旅して廻っている者です。一昨夜路銀をなくしてしまって、丸一日何も食べていません。何か食べるものを恵んで下されば生き返ります。』
王女は自分の持っていた弁当のおにぎりを老人に差し出した。
老人と別れてからもう一方の王女が言った。
『どうしてあんな汚い老人にお弁当をあげたの?』
『あの老人、見るからに意地悪でずる賢こそうだったわ!』
『ひとはみんな、ああやって人だまして、物を奪おうとするものよ!』
弁当をあげたほうの王女は…
『いいえ、あのお年寄りはきっと高名なお坊さんに違いないわ!』
『見るからに温和な慈愛に満ちたお顔をしていたもの。』
実は二人が出会ったのはインドでも聖人として知られた有名な高僧だった。
光明を得た人のこころは空っぽだ。
波風も何もない湖面はまるで鏡のようなもの。
それは見入った人の姿を映し出すだけだ。
彼と出会って何か感じたとしたら、それは湖面に映った己の姿でしかない。
二人の王女は老人を通して自らの心を見たに過ぎない。
『あなたは嫌いな人や苦手な人はいますか?』
『その人のどこがそんなに嫌いですか?』
…そう問われたら、あなたはどう思いますか?
「意地悪なところ」
「ひとを見下しているようなところ」
「計算高いところ」
…こんな答えがあなたの頭の中に帰ってくるかもしれません。
しかし、あなたが他者の中に見い出すものは、すべて貴方の心の中にあるものでしかないのです。
他者は鏡でしかないのです。
あなたが他者の中に見るものは、すべてあなたの影なのです。
あなたが他者の中に身勝手さや意地悪さを見るとしたら、それらは全てあなたの姿なのです。
残念ながら、人間の認識機能とはそのようにできているのです。
あなたは人間の脳がかなりのポンコツであることを知っておくべきなのです。
人間の持つ基本的な不安。
人間には基本的な不安が三つあります。
『食えなくなったらどうしよう?』
『病気になったらどうしよう?』
『死んだらどうしよう?』
あなたも同じような不安を抱いているのではありませんか?
この種の不安はどうしたら無くなるのでしょう。
さほど遠くない昔の話。
『導師様。私は、いつもいつも、食えなくなったらどうしよう、という不安が頭の片隅にあって離れません。どうしたらいいのでしょう?』
すると、導師はやさしく笑いながらこう答えた。
『食えなくなったら、食わなきゃいいだけだろう!』
これは有名なミャンマーの高僧の話ですが、現代の人が聞いたら百パーセント誤解するでしょう。
高僧の言葉に込められた裏の意味を取り逃がし、乱暴な答えだ!無責任な答えだ!と非難するかもしれません。
これらの基本的な不安は無くそうとしても無くなりません。
生きている限り無くならないのです。
この不安の出処はどこでしょう?
心ですね!
心とは何でしょう?
前回、心とは個体を守る防御プログラムにすぎないというお話をしました。
これら3つの不安は、どれも自己存続の危機に対する不安です。
これによって各個体が危機回避するよう動くことがプログラムの目的と言えるのです。
だから、あなたのすべきことは、できる範囲で危機回避の対策を講じたら、あとは放って置くことです。
いつまでも不安に注目しないことです。
注目すれば、注目するほど、ますます大きくなるのが不安の特徴です。
これでは、一日中自らのクソ眺めているバカ者と同じではありませんか?
ブッダも同じ不安※1を抱え、これを乗り越える方法を探すために修行の旅に出たというのは有名な話ですね。長い間、苦行に苦行を重ね修行を積んだ挙句の果て、これは乗り越えられないと、不安を放り投げた瞬間、涅槃へのヒントを得たのではないでしょうか。
※1
仏教では「生老病死」の不安を、人生における免れない四つの苦悩として、この四苦悩を乗り越えるために、修行を行うことが重要だとされています。
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