ピンク狂になった娘を見て、その仕組について考えた話
"ジェンダーに囚われない、自由な時代"を声高に叫ぶ人たちがここに来たら、きっと「ここが悪の元凶だ!」と叫ぶと思う。そのくらい、乳幼児の洋服売り場というところは、男女ではっきり色模様が分かれている。
1人目を妊娠し、色々買い揃えるべく、有名な赤ちゃん用品の専門店に行った時、その時代に逆境してるかの様な空間に驚いた。
これはまずい。流されてはならぬ。そう思った私は、店の意向に反する様に品物を選んだ。その結果、私が選んだものは色味も模様も統一性のないものになってしまったが、「これを見て、私の子供の性別を当てられる人はいないだろうな」と密かに満足していた。そうやって選んだ物たちは、娘が生まれた時も活躍してくれた。
保育園に入った後も、出来るだけ固定せずに様々な色の服を着せていた。ところが、娘がはっきりと意思表示し始めた、2歳を過ぎたあたりからから"それ"が事が起こり始めた。
ピンク色の服ばかり選ぶ様になったのだ。
服だけではない、どんな物でもピンク色が入っていないと難色を示す。しまいには、「〇〇(娘の名前)ちゃんはピンク色のウンチなんだよ〜」などと言う。
天邪鬼な私は、娘の突然の変化に戸惑い、その原因が保育園にあるのではないかと疑った。保育園で「女の子はピンク、男の子は青」といった区別をしているのではないか?と。しかし、子供たちが通う保育園では、おままごともブロック遊びも男女一緒にするし、男女で区別したりする雰囲気はなかった。そして、相変わらず娘の連絡帳には、色塗りや工作するときには必ずピンク色を選ぶ様子と、「〇〇ちゃんは本当にピンクが好きですね!」という先生のコメントが書かれていた。
娘に変化が現れてから、あれよあれよと言う間に、娘の周りはピンク色の服や物で溢れてしまった。そして娘はいつもピンク色を探すようになった。ピンクを見つけると、「〇〇ちゃんの大好きなピンク!」と指をさす。ピンク色を見る娘の顔は、多幸感に溢れている。もしかしたら、ピンクには、ドラッグやアルコールに似たような作用があるのかもしれない。ある一定の年齢の女子だけに限定の。
こういう仮説はどうだろう。「2歳頃の女子限定で発現する未知遺伝子があり、それはピンク系の柔らかい色にだけ反応して発現する。そして、その遺伝子は、ドーパミンといった、特に”快”の感情に属する神経伝達物質の生合成を正に調節する。」
視覚(色情報)の刺激で発現する遺伝子なんて聞いたことないし、まぁまぁいまいちな仮説だか、こんな仕組みが本当にあるなら、私がどんなに頑張ってもきっと抗うことは難しい。
私はその未知遺伝子を「ピンク遺伝子」と勝手に名付け、しばらくの間、どうやったら見つけることができるのか頭を巡らせていた。
しかし、同年齢の娘を持つ同僚や、幼い頃にピンクが大好きだったという大人に聞くと、ピンク狂の時期はそう長くは続かないらしい。早くて2年位、遅くとも小学校の低学年あたりでピンク遺伝子の効果は無くなってしまうようだ。おそらく、効果が無くなるというよりは、他の”面白いこと”によって得られる多幸感がピンク色による多幸感を上回るのだと思う。そして、それが続くとピンク色への執着心が薄れていくのだ。
そうやって考えているうちに、ふと気がついた。そうか、女の子は自分が幸せなるために必要なものを”本能的”に選び取ることができるようにプログラムされているのだ。ピンク色を選ぶという行為はその最初のステップに違いない。
たとえそれが遺伝子の作用だとしても、すごいことではないか。
あと数年で終わってしまうなら、今のうちに思う存分ピンク色を堪能してもらおう。ピンク色のものは彼女が今選択できる”幸せ”そのものなのだ。
そういう結論に至った私は、娘が選ぶピンク色の数々の物に対して、急に寛大な気持ちになり、ピンク色に対して畏怖の念を抱いたのだった。
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