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現場のマネジメント人材が不足している
結論を先に書きます。
介護事業所・介護施設の管理職の皆さまのマネジメントの課題をひとつでも解決しチーム運営がうまくいくように、私の学んできこと、経験してきたこと、今学んでいることをこれからも出し惜しみなく公開していきます。
介護事業を手掛けている経営者と話をしていて必ず出てくる課題は人材不足です。一般に人材不足と聞くと介護職が足りないと想像すると思います。もちろん、介護職も不足しています。
しかし、それ以上に経営者が人材不足を感じているのが、事業所の管理者や施設長といった現場管理職です。
現場のことを分かっていてマネジメントもできる人材はどこの法人でも希少であり、育成もうまくいっていません。
私は14年間現場のマネジメントをしてきました。今も現役です。優秀な介護職はたくさんいても、マネジメントを担える人というのはほんの一握りという実感をもっています。
マネジメント人材の不足原因は3つあります。
1.管理職の役割が明確でない
2.管理職に”昇進”するしくみ
3.マネジメントやリーダーシップについて学ぶ機会がない
詳しく見ていきましょう
1.管理職の役割が明確でない
それぞれの役職には「権限」を行使して「責任」を果たす役割が管理職にはあります。しかし、この権限と責任があいまいになっていることがあります。
特に規模の大きな法人では、この傾向が顕著です。事業所数の少ない法人では、経営者と管理職が日頃から話し合い、権限と責任を確認しあっているので、相互に共通の理解を持ちやすいようです。
しかし、大きな法人では明文化された「権限規定」があっても、その解釈や運用についてはあいまいになっているところがたくさんあります。管理職の具体的な役割については(権限と責任を委譲する経営者)と(委任される管理職)が話し合って確認しあうことが必要でしょう。
中には、レクの企画を決める権限や消毒液を購入する権限すら現場にはないのに、「現場で起きることの責任はすべて施設長にある」と命じられているケースもあります。
権限と責任はセットです。
権限を与えずに責任だけを管理職に背負わせてはいけません。これこそ管理職を苦しめ、社員が管理職を目指さなくなる要因です。
管理職の方も、受け身的に言われるのを待つだけでなく、自らの役割を確認する責任があります。自らの責任を果たすために、わからないこと(権限)を確認するのは管理職の責務です。
2.専門職が管理職に”昇進”するしくみ
スポーツの世界ではよく「天才的な選手は優秀なコーチになれない」と言われます。”生まれ持った才能”で上手にできてしまう人は、できない人がなぜできないのか、その理由がわからないから教えられないからだと言われています。逆に選手としては目立った成績を残さなかった人が、コーチとして強いチームや選手を育て上げたケースは枚挙にいとまがありません。
介護業界でも、優秀な介護職であることと、いい管理職であることはイコールではありません。しかし、優秀な人材を評価する方法が「管理職への昇進」のみという事業者があります。介護職として優秀であることを理由にリーダーやマネジャーなどのポジションに”昇進”するというのは構造的に問題があります。
介護職としては優秀だけどマネジメントには向いていない人、あるいは管理職としての責任を背負わない人が管理職になることは、本人にとっても組織にとってもデメリットしかありません。
通常、昇進は一歩ずつです。優秀な介護職はまず新人の教育係や最初に現場のリーダーを任せられます。その時点からマネジメントやリーダーシップの教育を開始し、同時に管理職としての適性を見極めます。どんなに経験があってお客様に評判の良い介護職でも、管理職としての適性がなければ、それ以上の責任と役割は与えずに、そのまま現場のリーダーとして働いてもらったほうがいいでしょう。役職は”下”かもしれませんが、結果的に本人の能力が最大限発揮され、組織にとっても好影響です。できることなら、専門職として一流の人が、管理職並みの待遇となる仕組みができれば理想です。
3.マネジメントやリーダーシップについて学ぶ機会がない
現役の管理職の方に質問します。「あなたは管理職としてマネジメントやリーダシップについてこれまで学んできたでしょうか」
経営者で現場管理職を兼ねている人を除き、介護現場の管理職でこの質問にYESと答えられる人は、残念ながら私の知る限り10%未満だと思います。
決して意欲がないわけではありません。ほとんどがこの3つの理由です。
・何を学んだらいいのかわからない
・仕事が忙しくて学んでいる時間がない
・誰も教えてくれない
何も学ばずにマネジメントするには、「前任者の真似をする」「自分の勘と経験を信じる」しかありません。
私も初めはマネジメントやリーダーシップについて何も学ぶことなくマネジャーになりました。そしてたくさんの失敗をしました。
その後、本やセミナー等で介護施設でのマネジメントに必要な様々なことを学んだとき、自分の失敗の原因を知ることができました。
学ぶことで、先人の知恵や経験をショートカットで習得することができます。学びによって必要のない苦労や失敗を回避することができます。
全国にはたくさんの介護事業所・介護施設があり、たくさんの現場管理職がいるにもかかわらず、介護事業所のマネジメントについて学べる機会がほとんどありません。
このnoteのマガジン「介護のマネジメントとリーダシップ100」では、私の学んできたこと、経験してきたことを惜しみなく開示します。そして今まさに私が学んでいることもリアルタイムに共有していきます。このマガジンが全国の介護事業所・介護施設の管理職の方、これから管理職になる方のお力になれれば幸いです。
立崎直樹
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