ヨミマシタホン No.2
図書館にリクエストしてから半年ほど待った「心淋し川」(うらさびしがわ)西條奈加さん、第164回直木賞受賞作(2021)をヨミマシタ。
時代設定は江戸時代。表題も含めた短編が六つ、一冊の本に収録されています。それぞれの話は基本独立していますが、茂十(もじゅう)という五十代がらみと思われる男性で長屋の差配(今で言う管理人みたいな?)人は全部の話に出てきます。
長屋、と言いましたが、実は長屋ではないらしく、小さな掘立て(?)小屋をつなげた結果、長屋風になって…ということらしいです。そんな”長屋”に住うような住人たちは皆何かしらの事情を抱えていて、貧乏で…なのですが、色々あってもかすかでも、話の最後には希望が見えます。そこは胸のすくところ。
一つだけ、他と微妙に体温の違いが感じられる話「冬虫夏草」は、ちょっと不気味でした。ホラーっぽくもあるような…。
”長屋”のある場所が、肝かなと思いました。その土地のいわくが住人たちの人生と、良くも悪くも深く結びついている。その場を濃くイメージ出来ると、話をより楽しめる、と思いました。