ロマンチックSF傑作選『時の娘』 創元SF文庫 感想
時間SFが好きなんだけど、なんで好きなのか上手く説明出来ないでいる。
もっとたくさんの時間SFを読みたーい!と、今回は『時の娘』を読んだ。
めちゃくちゃ面白かったので感想を置いておこう。
ウィリアム・M・リー「チャリティのことづて」
ボーイ・ミーツ・ガール。でも、会ってはいないのだ。不思議な作品である。
全部読み通してみて、「チャリティのことづけ」が巻頭なのは納得だった。
時間SFのロジックはそこまで強くなく、時間を往還する感じは、感情に訴えてくる。
場所の設定にいち早く気づいたらもっと納得感があったのだろう。
時を経てあの頃の気持ちが、あの場所に刻まれているというラストは凄く美しかった。
デーモン・ナイト「むかしをいまに」
まさにセンス・オブ・ワンダー!
イメージから入ってなんだなんだ?とキョロキョロしている間に、その世界に惚れ惚れしている。
言うなれば、結転起SF小説だろうか?
この短編集のなかで1番好きかもしれない。小説でも可能なのか!と驚かされる短編だ。
過去から未来という時間軸で生きていれば、言葉もそれによって規定されていく。
それをひっくり返してみたら…という実験的な小説だった。
事の順序が違えば、このようなラストも鮮やかに描けるのだ。
ジャック・フィニイ「台詞指導」
過去の物には記憶が保存されているとして、それに触れればその時代を過ごすことも出来たとしたら? そして、そこで恋に落ちたとしたら?
という話として読んだ。
カカオ70%くらいの大人な味わい。
時を超えた感情によって、目覚めた感情がバチバチに輝いているような。
冴えない描写を置くことで、あえてラストが引き立つ? ような効果を感じた。
ウィルマー・H・シラス「かえりみれば」
タイトルで話を思い出せない!(読見返す)
精神的なロジックで、成人女性が過去へとタイムスリップする話。
なろう小説でもある展開故に、あんまり印象に残らなかった。
そんな状況になって無双できるわけでもなく(そりゃ人生2回目だからって何もかも上手くいくわけじゃない)
エモいのは、もう2度と会えない人との体験だ。中身が大人なので、健気に恩を返そうとしてびっくりされるのがいい。
バート・K・ファイラー「時のいたみ」
不幸な出来事を取り返すことが出来るのなら?
しかし、その未来の記憶は受け継がないとするのが条件。その場合、あなたは時間をかけるだろうか?
ちょっとビターなラスト。
タイトルと物語がかさなりあってて、いい感じである。こういう展開だと限定設定は必要だよね。
時間変えられるのに、あえてラストの事象を変えないというのは、また味わい深い。
結局、時間をかけるのに必要なのは情熱なのかもしれない。
ロバート・F・ヤング「時が新しかったころ」
Theエンタメである。恐竜宇宙船に乗って時間を超えて、ヒーローになるのだ。
初見なのだけど、根明な作品だと思った。
底抜けに明るい感じがあって読んでいて楽しい。
恩を返すために、そんなことできるのかな!? って感じだけど、結局はパッピーエンドにおさまるので安心感がある。
実はまだたんぽぽ娘を読んでない。読まねば…
チャールズ・L・ハーネス「時の娘」
予言者の母とその娘。不在の父親。同一化する母と娘。母親の恋人を愛した娘は…??
何度か読み返してため息がでる作品。
わたしがいま誰に語りかけているのか?を考えると、なんだか身体がもぞもぞしてくる。
こういうお話って延々とエンドレス状態なのかが気になるところだ。
いや、わたしからすればやっとめぐり逢えた状況だ。ラストから、「わたしの物語」が始まるのかもしれない。
C・L・ムーア「出会いのとき巡りきて」
冒険者と科学者の邂逅から、時間の冒険へと出かける話。相容れない2人の掛け合いが面白い。
そして、意外に健気でエモかった。でも、少女の設定が謎。スーパーガールってことなのかな?
個人的はもうひとひねりが欲しかった。科学者が介入していたとか。
V系SFアンソロジーでも話題なった人なので、『丘』SFを読みたい。
ロバート・M・グリーン・ジュニア「インキーに詫びる」
精神的な時間と、物理的な時間軸が混じりあっている話。
正直かなり混乱するけれど、案外過去を思い出す瞬間の脳内というのはこういうイメージなのかもしれない。
過去の記憶に立体的に触れて行き交うことができるけれど、過去は未来を認識出来ない。
結局どんな仕掛けをしたのか。
そこまでの贖罪を感じるからには、やっぱりインキーをけしかけたってことなのかな?
ちょっと最近小説を読めてないせいか読解力が落ちているような気がする??
骨のある本をじっくり読まねば…
終わり。