AI翻訳を検証してみた:フィッツジェラルド、カズオ・イシグロ、金原ひとみ、太宰治
黒鳥社がやっているYouTubeの「blkswn jukebox」を見ていたら、トークの中で若林恵と小熊俊哉がDeepL翻訳すごい、という話で盛り上がっていました。DeepL翻訳(ドイツ発の高精度AI翻訳ツール:ディープラーニングを応用したニューラル機械翻訳:Wiki)はすでに使用していたし、Google翻訳やChatGPTの翻訳と比べたりもしていた。が、そんなにすごいのなら、どんだけすごいのか改めて使い倒してみようと思いました。
で、とりあえず、Chromeの拡張機能にDeepLを登録してみました。拡張機能を利用すると、ウェブを見ているとき、たとえば英語ニュースなどのページで、英語で読むのめんどくさいな、というときなど、文字列をハイライトしてアイコンをプチっと押せば、数秒で日本語訳が出てきます。速いし便利!そしてほぼ正確です。ニュース記事みたいな一般的な文章であれば、9割くらいの正答率でしょうか。ときどき?な箇所が混ざることがあったとしても、おおよそ訳はこなれていると言っていいと思います。
わたしがよく使うのは英語 → 日本語ですが、自分の書いた日本語 → 英語もやります。そちらもかなりよく訳すと思います。自分の書いた文章に筋が通っているか、曖昧さがないかチェックします。きれいに英訳されると、よしよしという感じ。変に訳された場合は、そうならないよう日本語原文に手を入れてみたり。と、日本語の文章の添削のようなところも少しあります。
ブラジルなど英語圏でないところの人から英語のメールをもらって、これひょっとして翻訳ツールつかった?ということも最近はあります。もしそうであればこちらの英文メールも、向こうでは翻訳ツールでポルトガル語に訳して読んでいるのかも、と思います。メールに関しては、言語の壁を超えてそこそこ使えるようになっていると言えるのかもしれません。
DeepL翻訳を使ってウェブの記事を読んでいるときは問題ないですが、テキスト書類などの場合は、DeepLのツールのページに行って、文をペーストして翻訳させます。Google翻訳と同じです(Google翻訳は翻訳したいサイトのURLを入れる機能もあり)。長文でテキストのペーストが面倒というときは、noteなどに投稿テキストとして原文をペーストし、プレビュー画面でDeepLを機能させればいいと思います。下書きモードで使うとフレーム内に訳が出るのではなく、元の文が目的言語に置き換えられてしまうので。
高精度AI翻訳ツールが広まると、翻訳者の仕事は減るのでしょうか。下訳の作業はツールに任せることもできそうです。下訳翻訳者は仕事を失う?のでしょうか。わかりません。
翻訳ツールはすでにビジネスの場面でそこそこ(というか当たり前に?)使われているのでは。以前にNGOの翻訳ボランティアをやっていたとき、Katoという翻訳プラットフォームを使ったことがあります。文章はビジネスタイプのものでした。左側に英語の原文があって、1文ごとにツールによる仮の日本語訳が右側に出てきます。そのままでOKであれば承認し、直すところがあれば修正してから先に進みます。このやり方の場合、文全体のコンテクスト抜きで1文ごとに処理するので、さっきの訳はどうだったかなということも起きます。
では文芸翻訳はどうでしょう。文学的な表現を的確に訳したり、コトの背景を理解した上で言葉にするのは難しそう、という気もします。文学作品を訳すとき、最初から翻訳ツールにかける、という行為は翻訳者にとって少し抵抗があるかもしれません。わたしにはあります。それは何かというと…… なんなんでしょうね。
一つあるかなと思うのは、英文を読んでいるときは意味だけ捉えているのではなくて、書き手のものの言い方とか、用語の使い方とか、リズムとか、そういう文全体の感じや雰囲気を受けとめているので、それでこの文好きだなとか、この書き手いいなとか思ったりするので、その第一印象みたいなものが失われるかも?ということ。
ではここで試しに文芸翻訳がどの程度できるのか、DeepL翻訳をテストしてみることにします。
が、その前に、ニュース記事がどのようなレベルなのか、例を上げたいと思います。以下はガーディアンの最近の記事(2023.8.17)をDeepL翻訳で訳したもの。マウイ島の山火事についての分析レポートです。
DeepL翻訳:
マウイ島で消火用の水がなかったのはなぜか?
マウイ島のいたるところで、ゴルフコースはエメラルドグリーンに輝き、ホテルはプールを満水にし、企業は高級住宅地に売るために水を備蓄している。それなのに、いざ消火活動が始まると、一部のホースは涸渇してしまった。なぜか?
これは記事の冒頭部分ですが、わたしはこの記事をDeepLで通しで読みました。大きな問題はありませんでした。「ホース」というのは、Hose System(消火栓)のことでしょう。ここは「涸渇していた」の方がいいように思います。消火活動にあたった消防士が、消火栓に水はなかったと証言しているようです。(この記事は興味深い考察をしているので、全文読んでみるといいと思います。DeepLを使って。The Guardianはイギリスの新聞で、寄付は求められますが基本、無料で全文読めます)
ニュース記事のような一般的な文章、内容のものは、ほぼこのくらいのレベルと思っていていいと思います。要するに使える、ということ。
では文芸翻訳はどうでしょう。いくつか適当に作品を選んで実験してみました。英日翻訳では既刊の訳書(人間訳)と比較しています。
英 → 日の翻訳
『グレート・ギャツビー』(フィッツジェラルド):DeepL翻訳、野崎孝訳、小川高義訳(村上春樹訳は「サンプル/試し読み」がないため、比べられませんでした)
『クララとお日さま』(カズオ・イシグロ):DeepL翻訳、土屋政雄訳
『オートフィクション』(金原ひとみの英訳版):DeepL翻訳、デイヴィッド・辛島訳
『トーマス・ニペルナーティ』(アウグス・ガイリ):DeepL翻訳、だいこくかずえ訳
日 → 英の翻訳
『腹を空かせた勇者ども』(金原ひとみ):DeepL翻訳
『アッシュベイビー』(金原ひとみ):DeepL翻訳
「川端康成へ」(太宰治):DeepL翻訳
『女生徒』(太宰治):DeepL翻訳
たくさん例をあげたので、以下の目次から興味あるものを選んで見てもらっても。
『グレート・ギャツビー』
原文:(太字は差異のある箇所、疑問箇所)
DeepL翻訳:
若くて傷つきやすかった頃、父が私にくれた助言は、それ以来ずっと私の心の中で繰り返されてきた。
「誰かを批判したくなったときはいつでも、"この世のすべての人は、おまえが持っているような長所を持っていないことを思い出せ "と。
彼はそれ以上言わなかったが、私たちはいつも控えめなやり方で異常にコミュニケーションを取ってきた。[ このあとの訳抜け]
以下は新潮文庫と光文社古典新訳文庫の訳です。
いかがでしょう、DeepL。悪くはないですが「advantage」を「長所」と「unusually communicative」を「異常にコミュニケーションを」と訳していて、的確とは言えません。また何故か最後の文が省かれています。人間の訳の方は、小川訳は短く簡潔、野崎訳は長くて丁寧です。訳された時期に30年以上の差があることも理由の一つでしょう。
『クララとお日さま』
英語の原文:AIロボットと人間の少女との境界を超えた友情物語。
DeepL翻訳:
新店の頃、私とローザは店の真ん中、雑誌のテーブル側にいて、窓の半分以上を見渡すことができた。だから私たちは外の景色を眺めることができた。急ぎ足で行き交うサラリーマン、タクシー、ランナー、観光客、乞食男とその犬、RPOビルの下の方。私たちが落ち着いたところで、マネージャーは私たちがウィンドウ・ディスプレイの真後ろに来るまで、正面まで歩いていくことを許可してくれた。[ このあとの訳抜け]
ハヤカワepi文庫版の訳:
「the lower part of the RPO Building」をDeepLでは「RPOビルの下の方」とそのままの訳でしたが、土屋訳では「そしてRPOビルも、下のほうだけですが見えました」と補足しています。まあ、DeepLの訳が悪いとも言えませんが。「Beggar Man」は土屋訳では「物乞いの人」となっています。「乞食」は日本では放送禁止用語に入るようです。DeepLの基準は日本人の常識とは違うのかも。英語原文ではBeggar ManはBとMが大文字になってます。一般名詞として使っているのではないということか。
『オートフィクション』
これは金原ひとみの小説をデイヴィッド・辛島が訳し、米英で出版されたもの。
以下に日本語の原文をコピーします。
「…零したのはわざと」「…おしぼりで拭いたのもわざと」 この「わざと」のリピートが語り手の思い込み具合を強調してていいんだけどな、とは思うものの、英語の場合は効果というより稚拙な文に見えてしまうかも?「So she could wipe his knee…」とした方がストレートで強い表現になるように思います。
では辛島氏の英訳文をDeepLで日本語にしたらどうなるか。
DeepL翻訳:
いいえ、違います。ごめんなさい」と彼女は答える。彼女が私の謝罪に笑顔で応えたとき、私は固まった。
すぐに、彼女が何をしようとしているのかわかった。私の夫を狙っているんでしょ、このビッチ。きっとわざとシャンパンをこぼしたんだわ。彼の膝をタオルで拭くためにね。いつもは、ほんの数滴のことで、こんなに騒がないのに。立ち去る彼女の背中を睨みながら、私は何気なくタオルを広げた。よかった!もしかしたら携帯番号を書いているかもしれないと思ったんだ。
意味としてはOKですね。
では金原ひとみの日本語原文を、人間ではなく、DeepLで訳したらどうなるか。
DeepL翻訳:
No, no, I'm sorry too."
I froze the moment I saw the stewardess smile at my apology. You're after my husband, aren't you, you son of a bitch? In an instant, I understood her intentions. First, she spilled the champagne she was about to hand me on purpose. Then, she wiped his knee with a hand towel on purpose (probably she wouldn't have done that under normal circumstances, even if only a very small amount had spilled). I glared at the stewardess as she walked away and casually unfolded the hand towel. Thank goodness. I had thought that the stewardess's cell phone number might be written on it, but there was nothing on it.
あ、案外いいと思います。改行も含めてDeepLの方は直訳に近いですね。辛島訳は「she replies」と原文にない文章を足しています。英語の小説の場合よくある文型ですね(会話文のあとにいちいち he asked とか she said with surprise など話者が誰か、+その心理を書き加える)。
「on purpose(わざと)」のところ、DeepLでは律儀に繰り返してます。悪くはないですが。「even if」は「if」だけの方がいいのでは? 実際にはほんの少ししか水はこぼれていなかった(のに)、というのが語り手の言い分とすると、「ほんの少ししかこぼれていなかったとしても」という過去の仮定は、「実際にはたくさんこぼれてたのだから」の意味合いにならないでしょうか? あれ、ちょっと頭が混乱してきた。
『トーマス・ニペルナーティ』
次は現在葉っぱの坑夫で連載中の「シバの女王」#7(アウグス・ガイリ著『トーマス・ニペルナーティ』)の原文より。(太字は差異のある箇所)
DeepL翻訳:
日曜日の朝、ヤーヌス・ルーグが到着し、漁師の小屋の前で立ち止まり、こう叫んだ。[ 訳に抜けあり] もし出て行ったのなら、こっちに来て教えてくれ。もしまだ巣の上で鳴く鶏のようにそこに座っているのなら、俺はお前の敷居をまたぎたくない。ペイパスの男は大嫌いだ。[ 訳に抜けあり] それよりもサーヴァステのパブに行って酔っぱらいたい。でも、今夜ここに戻ってきたら、帽子をしっかり持っていてくれ。酔っぱらっているときの私はひどいもので、全能の神が私を手なずけることができず、私の怒りは波立つ海のようだ。おい、ヴァー爺さん、家にいるのか、いないのか?叫び返せ、人を待たせるな!」。
以下は公開中の該当箇所のテキスト:
とまあ、こんな感じです。いかがでしょう。そう悪くもないけれど、文芸翻訳については、今のところ人間訳の方が優れているように見えます。
訳にときどき抜けが出るのはなぜなのか。ニュース記事ではあまりないことなので、何か理由があるのかもしれません。
*
次は日 → 英の文芸翻訳を見てみます。これは英訳版があるわけではないので、すべてDeepL翻訳によるものです。(太字は疑問箇所)
『腹を空かせた勇者ども』
最初に選んだのは金原ひとみの最新作『腹を空かせた勇者ども』。これは中学生のレナという女の子が主人公で語り手の小説。いまの中学生ってこんなんなんだ、という面白さがあって、文章もぶっちぎり。いや、別に子ども向けの小説ってわけでもなく、とはいえ中学生が読んでも面白いのかな、と。
DeepL翻訳:
Back in class with Yoli Yoli, we sloppily got ready and left the school. Ah, I'm hungry. That's it. Look look look ...... taran. What, are you holding a koala march, YoriYori? God. By the way, I have in jelly. What the heck, Lena Lena is a god too. Let's eat! The two of us reached for the Koala's March one after the other, and even Corona was having none of it, chugging down the Jell-O in an instant. But I'm not hungry at all. Isn't the school rule against buying and eating seriously crazy? Kichi kichi kichi ku. It's the time of our lives when we need energy the most.
と、こんな感じ。悪くないです。「キチク」は「crazy」になってます。
太字にした部分は修正が必要かも。「全然お腹に溜まらない」が「I'm not hungry at all」になってしまったのは何故なのか。真逆の訳。(コロナもどこ吹く風で)「inゼリーを回し飲みして食料は一瞬で尽きた」が「chugging down the Jell-O in an instant」になってます。あれ、inゼリーがジェロになってしまってるのはともかく、「回し飲み」が抜けてて(ここ重要)、「食料が尽きた」の訳もどこいったのか。「even Corona was having none of it」のところは、コロナが主語になってしまってる? これは原文のせいでしょう。日本語では問題なくても、「私たち」が抜けてると英文では誤解が起きます。
「ちな」は「By the way」になってて「ちなみに」の略だと認識してるよう。ただ「by the way」はちょっと固い感じ。ここは「Me, keep in-jelly」とかじゃだめかな。Google翻訳だと「Hey, I have in jelly.」でした。
この英文を逆翻訳(英訳文をまた日本語に戻す)してみると:
DeepL翻訳:
ヨリヨリと教室に戻り、だらだらと支度をして学校を出た。あー、腹減った。それだ。ほらほら......ターラン。なんだ、コアラのマーチでも持ってるのか、ヨリヨリ。神様。ちなみに私はゼリー入り。なんだよ、レナレナも神かよ。食べよう!2人で次々とコアラのマーチに手を伸ばすと、コロナも負けじとゼリーを一瞬で飲み干してしまった。でも、全然お腹が空かない。買い食い禁止の校則はマジでおかしくないか?キチキチキチクー。人生で一番エネルギーが必要な時期なのに。
この小説の雰囲気はそこそこ出てますよね。ということは英訳もそこそこということか。でもさすがに「crazy」は「キチク(鬼畜)」にはなってない。
「それな」が「 That's it」はいいとして、逆翻訳では「それだ」になってるのがちょっと残念だけど。
『アッシュベイビー』
もう一つ、金原ひとみの昔の小説『アッシュベイビー』の例。なんで金原ひとみばっかり?と思われるかもしれませんけど、単純にこの夏、この人の小説をあれこれ読んでたから、というのとこういう文章はどう英訳されるのかという興味からです。(この小説、アマゾンのレビューを見ると激しく賛否両論してて、こんなの文学じゃないという意見もいくつかあり、おおそれこそが今の文学じゃ?と思いました)
これは主人公の22歳のキャバ嬢とそのキャバ嬢レナが好きになった村野という男の会話。レナは村野が好きで好きでたまらず、レナの究極の願いは彼の手で殺されたいということ、らしい。この会話がおかしいのは、話の中身と関係なく、レナが無意味に「好きです」を繰り返すこと。そして言われた方も何も感じないのか受け流してること。
DeepL翻訳:
Are you off today?
Yes, I'm off.
I see you wear a suit on your day off.
I don't know. I'm tired of wearing plain clothes.
I like it.
I don't have much time to go shopping.
I like it. Then, next time you have free time, let's go shopping together.
Yeah, sure.
I like you.
Huh.
レナの言う「好きです」が3回目を除いて「I like it」になってしまってます。原文に「あなたを(が)」がないからでしょうね。この訳だと「私服が面倒」あるいは「休みにスーツを着ること」に対して好きと言っているみたい。
日本語で読んだ場合は、ここまでの二人関係ややり取りを理解していれば、レナが話と無関係に「(あなたが)好きです」を会話に挟んでくるおかしさはわかります。
DeepLによる日→英→日翻訳:
今日はお休みですか?
はい、休みです。
お休みの日はスーツなんですね。
どうだろう。私服はもう飽きた。
好きなんですけどね。
買い物に行く時間があまりないんです。
いいじゃないですか。じゃあ、今度時間が空いたら、一緒に買い物に行こうよ。
ええ、いいわよ。
私はあなたが好きよ。
ふふっ。
ちょっとこれだと、話者Aと話者Bがごちゃごちゃになってる、というか話者の特定ができてない風。日本語と英語の違いとして、女言葉、男言葉が英語にはないというのがあります。あと人の名前で男女が区別できるかどうか、という問題も。ただし女がいつも女言葉で話すことはない、というのもあり。
『アッシュベイビー』からもう一つ。
DeepL翻訳:
Ah, but if the spirit rules the body, does that mean that I have been revolted by both my spirit and my body? Either way, it doesn't matter. But now I'm not sure if I should pull out the fruit knife or go to the hospital with it stuck in me. No, no, no, I can't walk if my nerves are damaged. I mean, am I going to be okay?
こんな感じ、まずまず、いいんじゃないでしょうか。日→英もそこそこできますね、文芸でも。言いまわしでいうと決定的に違ってしまうんだけど、なんか伝わるものはある、という意味で。
とすると、言語間の翻訳ってどうあればいいのかな、と考えたりもします。
「川端康成へ」
次は太宰治です。芥川賞第1回の審査員だった川端康成に、太宰治が書いた手紙だそうです。太宰治は当時26歳だったそうで、なぜ俺の作品を落とした、という怒りから書かれたと言われているみたいです。
DeepL翻訳:(太字は疑問箇所)
…..At the end of August, I read Bungeishunju at a bookstore and found your sentence. The author has a cloud of displeasure over his life at the moment." In fact, I was furious. I had trouble sleeping for many nights.
Is it such an honorable life to keep little birds and watch dances? It stings. I thought so too. I thought you were a great villain. Then I suddenly felt a deep, deep, deep, Nerli-like, twisted, hot, intense love for me. No. I shook my head no. I shook my head and said no, but, I know you're trying to be cool, but Your love, in a Dostoevskyian vehemence, made my body glow. And it's something you don't even notice.
この文以外でもそうなのだけれど、なぜか「 の最初が訳されず、なしになっています。結びの 」の方は「"」と入るのですが。「刺す」は「( I ) sting you」では? 原文に主語も何もないのでわかりにくいですが。「刺す、」と読点になっていたら「そうも思った」に続くのでわかりやすいですが。ただ日本語文学としては断然「刺す。」がいいです。
「ずっと奥底に」が、「a deep, deep, deep,」と三つもdeepを連ねてます。「ずっと」「奥」「底」の訳でしょうか? ま、悪くはないですけど、面白いというか、「怨念みたいな愛」がこもってるようで。
ただ「あなたの私に対する」を正確に訳すなら、「Then I suddenly felt a deep, deep, deep…」のところ「your deep, deep, deep, Nerli-like, twisted, hot, intense love」じゃないかな。どうだろう、なくてもこの後に「for me」とあるから、当然「あなたからの」という意味にとれるのかどうか。
「いや、ちがうと…」のところの訳は何故か同じ文が2回繰り返されています。後の方は余分でしょう。その次の「but,」はどうでしょう。「though」の方がいいような。原文の「その、」を「but」と訳した??
『女生徒』
これも太宰治です。たしか知り合い(読者)の女性の日記を元に、小説にしたものだったと思います。初めて読んだときは、へっ、太宰治ってこういう文を書けるんだ、と思いました。元があるとは知らなかったので。
DeepL翻訳:(太字は疑問箇所)
It was a lie that I would wake up with a snap of my eyes. It's muddy, muddy, muddy, and then the starch gradually sinks to the bottom, and little by little the top layer forms, and finally you get tired and your eyes wake up. The morning is somewhat dreary. Many, many sad things float in my heart, and I can't bear it. I don't like it. I hate it. I am the ugliest person in the morning. Both my legs are tired and tired, and I don't want to do anything anymore. Maybe it's because I haven't slept well. I'm not healthy in the mornings, that's a lie. Mornings are gray. It's always the same. It's the emptiest. In my bed in the morning, I am always pessimistic. I hate it. All kinds of ugly regrets, all at once, all at once, blocking my chest, making me writhe and writhe and writhe.
最初の文、過去形になってますけど、現在形でもいいのかも。一般論として言っているということなら、「I」のところは「you」とか「one」とかの方がいいと思う。
「the starch gradually sinks to the bottom」これは原文の通りではあるけれど、英語で言われてわかりやすいかどうか。だいたいものの例えの表現は、英 → 日でも日 → 英でも難しいことが多いように思う。言っていることはわかったとしても、ピンとこないという感じ。「水槽の濁った水が、砂が沈むことでだんだん水が澄んでくる」みたいな方がいいんじゃないかと。
The muddy water in the tank gradually becomes clearer as the sand sinks, and ….(日 → 英 by DeepL翻訳)
「朝は健康だなんて、あれは嘘」のところ「I'm not healthy in the mornings,
that's a lie.」 これだと「(私は)朝は体調不良、それは嘘」になってしまう。ここも自分がというより一般論として言ってるのでは。「anyone is healthy in the mornings, that's a lie.」とするか。「身悶みもだえしちゃう」が「writhe」の3連呼。
最後の文だけ取り出して翻訳したときは、こうでした。
All kinds of ugly regrets are piling up all at once, blocking my chest and making me writhe and squirm.
こっちの方がいいかもしれません。
と以上です。
DeepL翻訳、役に立つし全体としては悪くないと思います。人間の翻訳スピードよりずっと速いですし。
英文(なり他の外国語なり)を読むとき、訳すとき、アシスタントとして使えるんじゃないでしょうか。ただしチェックは必要です。勘違いや抜けは普通にありますから。
文芸作品については、たとえば外国語の小説をDeepL翻訳で日本語にして読む、ということになるのかどうか。でも、Kindle版の本に機械翻訳機能が追加されて、それで小説を読むようになるという日が来るのかもしれません。で、人間訳で読むか、AI翻訳で読むか、どっちにしようかと迷うとか?
*タイトル画像:イギリスの詩人グボイェガ・オドゥバンジョが失踪した事件についてのガーディアンの記事。数日後、遺体で発見されたそうだが、何が起きたのかは今のところ不明のよう。オドゥバンジョは近刊の詩集で、イギリスにおける黒人の失踪事件の捜査に不平等があると訴えていたとも聞く。
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