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記事一覧
選歌 令和6年7月号
幾たびの桜に逢へば満つらむか吾はさびしゑ心さびしゑ渡辺茂子
ちりちりと溶けるチーズを鉄板に泳がしてゐる春愁ひとつ臼井良夫
香ばしいクロワッサンの朝食に形似ている雲を目で追う児玉南海子
皿を洗ふ妖精が来てくれぬかと少女は思ひ今でも思ふ高田香澄
浮き雲にトランポリンのぷあんぷあん捻挫の足とドジな私髙間照子
健啖の妻へひと切れカツ分ち相もかはらぬ夕食風情橋本俊明
ふかぶかと椅子に腰かけ息を吐
選歌 令和6年2月号
喜びも悲しみさへも語り合ふ友の居たりてそれで十分西原 寿美子どちら様の狭庭荒らしの野良二匹糞処理係今朝もいそがし橋本 俊明こらへるといふ事もまた老いてゆくプロセスとして心に収む広瀬 美智子赤ん坊のあーあー泣いてる雨のバス みんな海から生まれてきました森崎 理加点点と湖にか森崎 理加りがね浮くころぞ遠まはりして診察に行く渡辺 茂子作りおきの秋の味覚を並べ置く吾の胃袋ひとつにあらず井手 彩朕子悔恨の
もっとみる選歌 令和6年5月号
まっかな爪消して行くなり雨の中今日の会議は元職の会松下睦子
寒き夜にサクラの精は生れしとふ雪降る今宵しづかに待ちぬ岩本ちずる
程々の疲れセーター身に纏ひ朝のコンビニ午後のコンビニ臼井良夫
恵方から点火されたる左義長の弾ける音は山登りゆく浦山増二
淋しさを重ね重ねて三月の空は未だに白雪散らす児玉南海子
驚きているのは鹿も同じらしふいの出会いに固まっている高田好
白子産一番海苔のあざあざし
選歌 令和5年5月号
映像のダイヤモンドダストに目を凝らす誰かが中にゐると思へて
高田 香澄
切り落とす桜の枝の樹液さえ意志持つ者の恨みなるべし
田口 耕生
大相撲を初めて詠みしは愚庵とか癖のメモ書きまた一つ増ゆ
橋本 俊明
人と犬次々過ぎてその為のごとく静もる一本の道
広瀬 美智子
恋しいと冷たい月夜に身をよじり横たわる君のてぶくろ一つ
森崎 理加
孫とまく鬼やらひの豆朗朗と久しぶりなる夫の良き声
渡辺 茂