目的のある買い物 ②
初めての自粛で、稽古場が閉鎖され、長らく続けていた体を動かすレッスンに通えなくなった。
翌年は自粛も大方解除されたので、復活させたが、次の年はいよいよ、再就職に不安を拭えなくなってきたことから、自主的にレッスンを自粛したのだ。全て、無駄な出費を減らすためである。
レッスンを続けることは、決して無駄ではないはずだが、外に出られなくなったことで、続けて来たことを休む罪悪感や焦りは、成りを潜めた。過去の自粛で休眠状態を経験した、慣れとも言える。
仕事が決まって収入の目処が立てば、再開させたい気持ちはずっとある。だから時々、借りていた稽古場の、借りていた時間帯が、今もちゃんと空いているか確認している。再開したくても場所がなければ難しいからである。
先日とうとう、去年まで穿いていたジーンズが入らなくなった。元々ぴったりサイズで、伸縮性のない生地だったのだが、腰までは何とか上がったものの、ファスナーもボタンも閉まらない。愕然とした。
余程のことがない限り、今の段階で衣類を増やすつもりはないため、取り敢えず入る服を探して着ている。その日は予定していたコーディネートを変更せざるを得なくなり、元々大きめで、しかもストレッチ素材であるジーパンに穿き替えた。ベルトを付けた方が良いくらいぶかぶかだったはずのウエストに、今回、付属品は全く必要なかった。
愛した子を取り戻したはずだったのだが、今いる彼は、まるで歩かない。彼にとって散歩は、友達に会うか遊ぶか…なので、歩くことが目的にはならないようだ。さっささっさとリズミカルに歩き、時々大暴走し、帰りは「ごはん、ごはん!」と駆けて帰った彼の、生まれ変わりだと信じて疑わないのに、前世の記憶は置いてきてしまったのだろうか?
お陰で、私に負けず劣らず、デブ化しているようにも思える現在の犬との散歩は、ちっとも運動にならない。一緒にダイエット…の期待も出来ないので、やるなら自分ひとりでやるしかない。
その日は確固たる目的を持って、各処を梯子しようと思っていた。
ずっと渡せていなかった妹の誕生日プレゼントが決まったものの、ネット商品にイマイチピンと来ないことから、現物を見ようと、近所に相次いでオープンしたショッピングモールで品を探す。また、先日、新店舗の方で占いの店を見つけたので、空いていれば試しに、ワンコインで診てもらう。そして最後は図書館だ。その日のうちに引き取らなければならない本を含め、6冊が届いていた。
本来、歩くのは好きではない。基本、時短最短主義で体力さえも省エネを目指しているから、近場でも自転車、バイク、車を頼る。しかし今は、歩くことが最優先だ。時間は足りないが、働いていた時ほど追われてはいないし、どの地も犬の散歩コースだから、歩いて行くことに抵抗がないのである。
前回、プレオープンで行った新店舗は、すっかり人酔いしてしまって、もう暫く行かなくて良いと思っていた。まさかこんなに早く、再訪するとは思わなかった。
しかし今回は、めちゃめちゃ愉しかった。新店舗は、プレの時以上に混雑していたが、目的の場所以外覗かなかったから、殆ど疲れなかったのだ。目的の品が見つかり、本人にも連絡が取れてどれを買うかが決まったから、二度手間で戻ることもない。占いも達成して、満足して帰った来られた。
ウォーキング…近年なかなか無いほど、よく歩いた。犬とのだらだら散歩とは違い、ウォーキングの理想型を意識しながら、両腕を振って、大股で、さっさかと…。
唯、鏡に映った自分がデブすぎて、ぎょっとしたのは事実なので、毎日意識的に運動はしていかなければならないと思っている。
デブ化は怠慢だけでなく、加齢も大いに影響していることは認めるが、まだまだ着られる服を、入らないからと処分するのは忍びない。服のためにも、健康のためにも、減量という目標から目を逸らすべからず…と心も新たにしている。