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君たちはどう生きるかで描かれていたもの
「君たちはどう生きるか」という作品は、自分自身と社会、さらに人間という全体を客観的に見て考えようとする内容です。
哲学とは、誰かを観察し、社会を眺め、ひとつの答えを導き出しても、また別の人を見たり新たな経験を積んだりして学びを得ると、その答えが変化していくという性質を持っています。
こうした数多の人生の積み重ねから生まれた教えとしては、「置かれた場所で咲きなさい」「配られたカードで勝負するしかない」「彼を知り己を知れば百戦危うからず」「バカになれ。恥をかけ」などが例に挙げられますが、いずれも誰かの人生のなかで導かれた、それぞれの“自分の答え”でもあります。
この作品で語られる「歴史上の人」とは、歴史書や教科書に名を残した有名人だけを指すわけではありません。
文章や写真、映像の片隅にも残らない名もなき人々まで含めて、多様な「ヒト」の姿を見ていくのです。
そこからわかるのは、何百年経っても人間そのものは大して変わらないという現実であり、誰しも大小さまざまな人生を送りながら、順風満帆なまま生き抜いた人などいないという事実です。
人は数多くの間違いを重ねることでようやく成長する生き物であり、格言などは失敗の教訓から生まれたものなので、自ら失敗を経験しなければ、その言葉の本質はなかなか掴みにくいという一面も見えてきます。
そして最終的に重要なのは、自分の頭で考え、自分で選び、それによって生まれる答えを、自らの意思で変えていけるかどうかです。いかに自分の言葉で結論を導き出せるか、まさにそこにこの作品が伝えようとする本質的なメッセージがあると言えるでしょう。