推敲してて思うけど、やっぱりこれガチ恋やん

やっぱり何事も生が1番だ、とLINEしようとした手を止めて、思う。

生で会いたい。「早く外飲みしたいですね」なんていいながら、別に外でも家でも、本当はどこでもいいのだ。あなたに会えるなら。あのフワフワでモチモチで、白くて外見は、すべっとしていて、ここまで書いたらポン・デ・リングみたいな、あの人に。

大体、もう四六時中連絡をとっていたい、なんて思う歳でもないし、そもそもそんな間柄でもない。オンライン飲み会はこの自粛期間で2度程したけど、より会いたみを募らせるだけだった。

恋人の他に好きな人がいる。

いや、好きのレベルで言えば、恋人よりも上かもしれない。今や恋人との間にない、片思いのドキドキを、私は味わってしまっている。

その人は私が社員になって初めての店舗責任者だった。
最初は「可愛くて優しい上司でよかった」という、まぁスタンダードすぎる印象だった。3月に私が異動してきて、5月にはもう打ち解けていた。

私の他人への心のバリアが低すぎることを除いても、距離の詰まり方が尋常ではなかった。歳も6つ歳上で、世間的に見たら、“新卒ペーペー社員”と“敏腕店舗責任者”の図のはずなのに、彼女は私をスルッと受け入れてくれた。

仕事中は（？）本当にできる人だった。みんなの能力を把握し見極めながら、適切な業務を、嫌味なく振る。自分がやれば早いことだって「できないからやって～（悩殺スマイル）」としれっと、更には可愛く、部下にやらせて、その間に自分にしかできない仕事を要領よく進める。
アルバイトの頃から、1番下っ端を何度もやってきた私は、上司たちの愚痴も聞き慣れてるけれど、彼女が店舗責任者だった期間、1度も聞かなかった。むしろ全員から好かれていた。女性ばかりのこの職場でそれができることを、単純に尊敬していたし、今でも憧れだし、「自分がどんな店舗責任者になりたいか」の具体像は彼女だ。

そんな敏腕店舗責任者の彼女も、私生活では色々苦労があり...そんなことも教えてくれるぐらい、プライベートでも仲が深まるのに時間がかからなかった。自分よりちょっと歳上のお姉さんが教えてくれる、恋愛のお話は、やけに身近で、リアルな近未来のお話だった。ひよっこの私の話も何度も何度も聞いてもらった。遅番上がりに2人で、駅のホームでお酒を開けるのが日課となっていたあの毎日が愛おしい。

夜に、駅のホームで泣きながら電話をかけてきてくれたことがある。端的にまとめると「恋人とやっと別れられた」という内容だったけど、私がやられたのは、誰よりも先に私に、電話をかけてきたということだ。

わんわん泣く声を聞きながら、「慰めなければ」という気持ちを上回って、世界中に勝利宣言をしたいという欲望が湧いていた。

“選ばれたのは 私でした！！！”と。

自分が弱っている時に、頼られることほど、片思いの恋愛の中で嬉しいことってなくないですか。「そんな顔、他の奴に絶対見せんなよ（苦しい顔）」状態でしたよ。そりゃもう。まぁ実際顔は見えてないんですが。

そんなこと言いつつも、その一月後さすがとしか言えない早さで、彼女には新しい恋人ができ、今も仲良く、結婚の話なんか出ちゃったりして、遠くに嫁いじゃう話なんかでたりして、正直まぁ面白くはない、いや前の彼氏に比べたら今の彼はとてもいい人。分かってるけれども。

でも私は、面白くないなんて彼女には言わない。いつだってニコニコと話を聞くし、私は私で恋人と愛を深める。そんじゅそこらの信者と一緒にされたくない。彼女の幸せを心から願っているし、不幸になろうもんなら助けになりたい。恋愛には終わりはあるかもしれないけど、この気持ちには終わりがない。

お互い異動して、今はもう違う職場で働いてる上に、コロナのせいで「月に1回は必ず飲みに誘う」という私の決心も儚く実現不可になり、去年の今頃の私がとても羨ましくなる。伝えてやりたい。「毎日のように会える日は、限りがあるんだぞ」と。

でもいい事もありました。直属の上司じゃなくなったから、今はもう下の名前にさん付けで呼んじゃってるし、他の部下より1歩リード。
プライベートで遊びに行く回数だって増えたし、落ち着いたら旅行にも行く約束をしたし、なんなら彼女の実家の近くに引っ越したので、いつでも遊びにきてくれる。

私がコロナで苦しめられてるのって、休業より、外出自粛より、彼女に会えないことだと思う。今はとにかく会いたい。会って話をしたい。デートの前のドキドキがほしい。誰とご飯にいくよりも気合いの入ったお洒落とメイクを準備したい。そして誑かされたい、あざとい彼女の手のひらで踊らされたいのだ。

夏には、ビールが苦手な彼女が「ビアガーデンに行ってみたい」なんて言うから、私がお供する予定になっている。だからそれまでには必ず、収束してくれ。でなければ、ビアガーデンは屋外だから見逃してくれ。

恋人とも友達とも上司ともちょっと違う、好きな人の話でした。