コテージ_パイ_完成-1_

アメリカ人が見た、あるイギリスの学校給食

私にとって学校給食は、悪夢以外の何ものでもありませんでした。
とにかく苦痛で、苦痛で。
へんてことしか思えない料理、不気味な取り合わせ、強制的に食べさせられること、皆と同じ内容、選択の余地がないこと、給食を学習机で食べること(お弁当や買ってきたものだと気にならないのですが)、etc。
中学校入学とともに解放されたときは、心の底からほっとしたものでした。
(公立の中学校だったのですが、給食ではありませんでした。
 給食に、という話が持ち上がり、保護者へアンケートが配布された際は、親に懇願して、現状のお弁当のままでいい、と回答してもらいました)
学校給食の名誉のために付け加えると、私がおそろしく食が細く、おそろしく食べる速度が遅く、おそろしく食わず嫌い(肉・魚の脂およびそれを感じさせるものがまったくダメ。あっ、今も嗜好でいえばその傾向はあるけれど、食べられます)だったこともあるのですが。

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イギリスの学校給食は(学食自体は体験しているものの)、小学校(イギリスではプライマリー・スクール/primary schoolと言う)の給食については、見学に訪ねたことがある程度です。
日本がそうであるように、イギリスも時代とともに変わってきているでしょうし、おまけにエリアによって考え方が違うので、ひと括りにできない前提であることを、あらかじめご承知おきください。

2000年初夏、私が訪ねたマンチェスター郊外の小学校は、持参か給食か選択できるようになっていました(同年秋から冬にホームステイしたボーンマスの家庭の子どもが通っていた小学校も同じで、彼らはランチを持参していました)。
見せてもらった小学校の給食の様子について言うと、校舎内にカフェテリア(大ホールともいえる食堂)があり、子どもたちはトレイをとって、それぞれのポイントで食事をよそってもらって、着席して食事。それが済んだらプディング(デザート)だったと記憶しています。
その日の食事はラザニアか何かと付け合わせ。メニューは選べた、かなぁ。もう1種類ぐらい用意があったかもしれません。
学習するところと食事を摂るところが区別されているのが、印象としてはとにかく一番強く、本当にうらやましいと思いました。
お腹を満たせばいい、ではなく、大袈裟にいえば、人間としてどうふるまうか、も教育の一貫なのかもなぁ、と感じいったのです。

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日本にいると、とかく混同されて論じられがちな欧米。同じ英語圏ということもあり、とりわけ英米は近しいという印象を持つ人も少なくないでしょうが、まったく、まったく別の文化圏です。英語自体も違うし。
イギリスのメディアを眺めていると、ヨーロッパ大陸の国々との比較はもちろん、アメリカ合衆国との違いも綴られ、イギリス人からみたアメリカ合衆国もあれば、アメリカ人から見たイギリスもあり、同感できる点や新鮮な気づきもあり、なかなか興味深い。
(こういった記事で言われているのは、どっちがいい悪いではなく、違いを浮き彫りにすることに重点がおかれています)

いかにもイギリスなウェブサイト、Anglotopiaにあったのは、イギリスに移ってきた小学生の息子を持つアメリカ人の親が綴った、学校給食についての投稿。
Dispatches from England: A Guide to English School Dinner
http://www.anglotopia.net/british-identity/british-food/dispatches-england-guide-english-school-dinner/

へぇ〜、を記した内容で、なるほどなぁ、と思って読み進めました。
ある1週間の給食メニューについても紹介されており、その内容は以下の通りです。

月曜日:トマトソースもしくはチーズソースのパスタ、サラダ/Pasta with tomato sauce or cheese sauce and a salad
火曜日:コテージパイ、ミックスヴェジタブル/Cottage pie with mixed vegetables
水曜日:ロースト・ギャモン(ハム)のパイナップル添え、ローストポテト、ニンジン、豆/Roasted gammon (ham) with pineapple, roast potatoes, carrots and peas
木曜日: チキン・キエフ、新ジャガイモ、トウモロコシ/Chicken kiev with new potatoes and sweetcorn
金曜日: ソーセージ、チップス(フライドポテト)、ベイクドビーンズもしくはキュウリ/Sausage, chips, and baked beans or cucumbers
※ それぞれプディング(デザート)付き

水曜日はローストの日で、サンデー・ローストを思わせるメニュー(おそらく、ときにチキンだったりポークだったりでしょう)が登場。
金曜日は、このメニューではソーセージとなっていますが、キリスト教の習慣からフィッシュ・フライデーと呼ばれるように、魚料理か、ソーセージとなっているよう。
ほかの曜日に関しては、ヴァラエティ豊かなメニュー群だそうです。
また、アレルギーのある子どもに対しては、別のメニューが用意されます。

私が見学した学校同様、カフェテリアで食事を摂るスタイル。
そこの学校はお弁当という選択肢はなしで、そのことにアメリカ人の親は驚いたよう。
そして、昼食をディナー/dinnerと呼ぶことにも。

なぜ、ディナーと呼ぶのかについては長くなるので割愛しますが、イギリスではディナーは一日の中で重要な食事、という考え方があります。
子どもの場合、一般的なエリアやクラス(階級)の違いからというよりは、一日の中で一番要となる食事は昼食となり、だからディナーと呼ばれるのです。
イギリスでは大人と子どもの世界の線引きがはっきりしていて(今もだと思います)、私がホームステイしていた家でも、子どもの夕食は大人よりも早い時間に摂り、内容も違ってごく簡単なものでした。
また、6歳ぐらいの娘さんを連れたカップルとレストランに食事に行ったときも、大人は3コースをいただいたのですが、彼女はカフェオレボウルみたいのに入ったチップス(フライドポテト)のみ。

アメリカ人の親がほかに驚いたことに、カフェテリアにはスタッフがいて、小さな子どもたちがナイフとフォークをちゃんと使えるよう手助けをするということも。
あっ、そうそう、おやつの時間もあり、果物やビスケットなどをかじります。

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ちなみにイギリスの給食は、子どもたちが配膳することはありません。
また、給食のおばさんはディナー・レイディ/dinner ladyと呼ばれます(こういう呼称を用いるのが、イギリスだなぁ、とつくづく感じます)。
掃除も同様。
現在の法律がどうなっているかわからないのですが(おそらくより厳しくなっているかと思います)、私がイギリスに住んでいたとき、アルバイト(英語ではパートタイム・ジョブ)はトータル週100ポンドが最高額でした。
その条件にも合っていたので、ときどき、授業が終わったあと、近くの小学校に掃除のアルバイトに行っていました。
その掃除を管理していたのは、民間の委託業者だったと記憶しています。

子どもの世界というのは、大人になってからではなかなか覗けないものが多く、また、私自身の記憶と結び付いたことも多く、ふんふん、と納得したのでした。


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