見出し画像

お守りを受けに行く

 熱心な仏教徒でもある利用者仲間のSさんに連れられて、この前の週末河内長野にある永命寺(えいめいじ)にお守りを受けに行ってきた。
 Sさんが言うには、お守りやお札を「買う」のではなく「受ける」と言うのだそうだ。
 私はSさんほどの仏教徒ではないというか、仏教のことにはほとんど詳しくない。そんな私だが、身代わり守りを持っておいた方がいいと、古くなったお守りや数珠をお炊き上げしてもらうというSさんに勧められてついて行くことにしたのだ。

 朝食を食べ終えてからすぐに出発した。
 施設の最寄り駅から京橋→環状線で新今宮→さらに南海高野線で三日市町と3回も電車の乗り換えがあった。大阪に出てきてから、ここまでたくさんの乗り換えはたぶん初めてかもしれない。しかも新今宮から南海高野線は同じJRだが路線が変わるようなので、誘導してくださる駅員さんの引継ぎがうまくいくのだろうかと少し不安だった。

 まずは最寄り駅から京橋、そこから環状線に乗り換えた。この電車も初めて乗る路線だった。
 京橋を出て一駅目の大阪城公園という駅名を聞いてはっとした。
 そうか、今後好きなアーティストのライブを見に大阪城ホールに行く時にはここで降りたらいいんだな。施設から大阪城ホールまでそれほど遠くないことがわかって嬉しかった。ただ問題は大阪城公園の駅を降りてからホールまでどうやって行くかである。まあそれはその時に調べればいいや。
 あとこの環状線では、「森のくまさん」や「メリーさんの羊」などの童謡、さらには「焼肉食べ放題」や「あの鐘を鳴らすのはあなた」といったポップスなど、各駅ごとに流れる発車メロディーが違うのがおもしろかった。

 20分ほど環状線に揺られて新今宮に着いた。
 この先は路線が変わるので、三日市町までの切符を買わなければならないようだ。駅員さんがスムーズに対応してくれるのか少し不安だったけれど、南海高野線の改札の前ですぐに駅員さんがバトンタッチしてくれて、券売機で切符を買うのもサポートしてくださったのでとても助かった。やはり大阪は福祉が良い町だと言われているだけあって、どこの駅でも視覚障碍者への対応には慣れているのかもしれない。

 南海高野線に乗って少しすると、だんだん周りの空気や雰囲気が少しずつ変わっているのを感じた。どちらかと言えば都会の京橋や新今宮に比べて、三日市町に向かうほどどんどん田舎になってきているように思った。
 電車が走る感じも、山の斜面を少しずつ登っているように感じる。それは数年前、群馬のみなかみに10か月ほど住んでいた時に、前橋・高崎方面から電車でみなかみに戻る時の感覚にとてもよく似ていた。
 さらに環状線では童謡やポップスなどバラエティに富んだ発車メロディーだったのが、南海高野線では「ブー」とただブザーが鳴るだけで、これぞ田舎の電車って感じの発車音だった。同じ大阪なのに、都会と田舎ではこんなにもギャップがあるんだなあとビックリした瞬間だった。

 そのギャップは三日市町駅に降りた瞬間さらに強く実感させられることになる。
 もうとにかく空気が「山」なのだ。キンと冷えた風はまさに山だった。
 駅から永命寺まではタクシーで向かうことになっていたのだが、駅前のタクシー乗り場に着いても、タクシーは1台も止まっていなかった。先に待っていたおじさんは、もう20分ぐらい待っていると言っていた。
 駅前のタクシー乗り場なのに、タクシーが居ない。これも田舎の駅だなあって感じがした。
 ここまで順調に来ていたけれど、タクシーに乗れなかったら永命寺にたどり着かない。果たして本当にタクシーは来るのだろうか。屋根の無いタクシー乗り場のベンチは寒いし、何だか心細い気持ちになった。

 15分ぐらい待っただろうか。
 ありがたいことに、先に来ていたおじさんが譲ってくださり、どうにかタクシーに乗ることができた。そこから10分ほどで永命寺に着いた。

 永命寺は本当に山の上にあった。
 タクシーを降りたらそこは砂利の上だった。まさに神社やお寺って感じだった。三日市町駅よりもさらに自然豊かな空気感だった。
 予めSさんが連絡を入れていたこともあって、タクシーから降りるとすぐにお寺の人(年配と思われる女性)が出てきてくれた。
 その人は慣れないながらも全盲の私たち二人を親切に案内してくれた。
 お寺の鐘をついたり、お賽銭を入れてお参りしたりした。
 池の水の音や、お線香の香りに、気持ちがほっと癒されていくのを感じた。仏教や神様のことはあまり詳しくないけれど、それでもお寺に来るとなんか落ち着くなあ。
 最後にお目当てだった身代わり守りを受けた。
 結局永命寺には1時間ほど滞在した。

 帰りの電車は本当に山から町に降りてくるという感じだった。新今宮、京橋に降り立った時には、あー都会だなあと強く思った。
 同じ大阪なのに、電車で1時間移動しただけでこんなにも違うだなんて…!やっぱ大阪は広いなあと思った。

 最寄り駅に着いてからは、駅前の王将でラーメンを食べて帰ってきた。キンと冷えた山の空気を浴びた体に、暖かいラーメンは最高に美味しかった。

 ということで、今回もかなり刺激的な外出だった。
 ちなみに受けたおまもりは、いつも外出時に持っていくカバンのポケットにそっとしまってある。

いいなと思ったら応援しよう!