“妄想から打ち上げまで”を合言葉に 建築家集団 ハンディハウスプロジェクトとは【自己紹介】
年齢やバックグラウンドも様々。普段は個人で活動をしながら、チームとなってプロジェクトに取り組むこともある建築家集団「HandiHouse project」
「どんな家にしようか」という妄想から始まって、実現する方法をとことん話し合い、共につくり上げる。家やお店づくりのプロジェクトの中心には、最初から最後まで住まい手や店主がいることを大切にし、「プロジェクトオーナー」と呼んで一緒に同じステージに立ちながらつくり上げていくことを提案。その先には、家やお店への愛着が深まっていく楽しみが待っているから…。
では、具体的にはどんな家づくりを行っているのか、どうしてそれぞれの仕事を持ちながらも、ここに所属してチームとなって活動をしているのか。今回は自己紹介も兼ねてHandiHouse projectについてお伝えします!
自分の家がどのように作られたのか どのくらい話せますか
創業メンバーは4人。設計会社、デザイン会社、大手ゼネコンなど、建築関係の様々な会社に所属して働いていました。得意分野も、設計、施工、現場監督など様々。
創業メンバーが建築の仕事をする中で、「自分の家を誰がつくっているのかわからなかったり、作り手が誰のためにつくっているのかわからなかったりするのっておかしいよね」と疑問に思ったことがHandiHouse project(以下、ハンディ)設立のきっかけでした。
家づくりでは、設計者、現場監督、職人、施主と様々な立場の人たちが関わります。近年、効率重視、量産型が進むこの業界では、発注側と受注側、元受けと下請けといった、縦割りの“ピラミッド型の関係”で働くことも多くなっています。
建設現場には設計者が来なかったり、施主が工事現場に入ることが無いこともしばしば。出来上がった後に初めて自分の家を見て、思っていたものと違った…なんてことも耳にすることがあります。
それっておかしくない?
家作りに関わる人はみんなフラットな関係で、住む人も一緒に家づくりに参加したほうが、きっと満足のいく家に仕上がるはず。
そう思って始めたのが、「設計から施工まで、住まい手と一緒につくる」というスタイルの家づくりでした。
合言葉は「妄想から打ち上げまで」
どんな家にしようかという妄想から、完成後の打ち上げまで、全て一緒にやりましょう!といった思いを込めています。
現場では、オーナーさんも共につくることを勧めています。間取りのプランニングから素材選び、工事の過程まで、オーナーさんを中心に行う“ワークショップ形式の家づくり”を始めたのは、2011年。今ではDIYは一般的になってきて専門のお店も目にするようになりましたが、当時はまだDIYをする人はごくわずかでした。
ハンディと一緒に家づくりをしたオーナーさんたちは、どの部分をどんな材料でどうやってつくっているのか、その過程で少しずつ学んでいきます。その結果、住み始めた後に調子の悪い部分を自分で直したり、家族が増えたときには次はここをこんな風に変えたいと自分で妄想してプランを考えたり。与えられた家の中で暮らすのではなく、家に対して自由になり、自分のライフスタイルに合わせて家を変えていけるようになります。
こうして、少しずつ「家を趣味に」できるようになっていきます。
家づくりの過程では、ハンディメンバーがまるで親戚のように近しい関係になることもあり、私たちはいつでも相談できるパートナーになれることを目指しています。
このような家づくりは正直に言うと、手間がかかりますし、もしかしたら完成した状態の家を手に入れる方が簡単なのかもしれません。でも、出来上がるまでのプロセスも含めてオーナーさんに渡すことができれば、供給側がつくりあげる「モノ」になってしまっている住宅を、住まい手の「手」に還すことができると思ってこのスタイルにこだわっています。
ハンディの思いに賛同して一緒に家やお店づくりを行ったオーナーさんは徐々に増え、現在までで約300組以上に。ハンディのメンバーは4人から22人に。加わってくれたメンバーを通して、この考えや思いを全国に広げ、家づくりや暮らしをもっと楽しんでほしいと活動をしています。
住まい手の幸せも 作り手の幸せも
「家づくりは住まい手の幸せを目指すだけでよいのか」というところも、メンバーは考えました。
細かく分業化された建築業界では、受身で作業をこなさざるを得ない立場のつくり手もいます。ただただ工期に追われながら仕事を進め、精魂込めて仕上げた空間を喜んでくれる住まい手の顔を見ることがない職人たちも。
例えば「寸法決め」という作業ひとつを見ても、現場でお客さんと一緒になって、「ここ?」「もうちょっとこっち」と相談しながら決められれば、図面をつくる作業が簡素化できますし、思ったものと違ったといったクレームが出ることも避けられます。
ハンディの家づくりでは、設計プランも、使う素材も、すべてをオーナーさんと直接話し合って決めていきます。でも、すべてオーナーさんに言われるがままにつくるわけではなく、「こうしたらもっといい」「こっちのほうが面白い」という私たちプロの考えもお伝えして、想像以上に良いものをつくれるよう、意見をぶつけ合いながらつくっています。
実際に現場でつくる人とコミュニケーションをしながら取り組むため、オーナーさんは意見が言いやすくなりますし、そうなると私たちも言いやすくなります。家は住む人のものですが、その家づくりは私たちつくり手にとっても「自分事」として向き合っています。
プロジェクトオーナーも、設計士も、大工も、塗装屋も、電気屋も、水道屋も。みんなが同じ「家づくり」という舞台に立つプレイヤーであり、それぞれがエンターテイナーだと思っています。つくり手は、自分の仕事が誰にどう喜ばれるのかを知ることで、自分の仕事の価値を知り誇りを持てるように。それが仕事にも良い影響となり良い循環が生まれています。
「ハンディハウス」という文化をつくり 全国に広げる
2011年のスタート時は、メンバーそれぞれが独立した個人事業主で、家づくりという「project」ごとに、オーナーさんと職人さんとチームを組んで活動をしてきました。
2018年、HandiHouse projectを会社化すると決めた時、「project」を残すか残さないかについて、メンバー内で議論になりました。そうして決まった会社名は、「株式会社HandiHouse project」。
なぜ「project」を残したかというと、私たちがやりたいことは「家をつくること」ではなく、「住まい手もつくり手も幸せな家づくりの形を、もっともっと世の中に広めていくこと」だったからです。
子どもたちはこれからの時代を生きる術を学び、大人たちは住まい方の未来を広げていく。「つくる」という行為とスタンスを身につけることは、家づくりだけでなく、そこでの暮らしや、生きることの楽しみにもつながると思っています。
2023年春、メンバーは22人に増えてスタートしました。独立して屋号を掲げて活動をスタートさせた人、自分一人ではなく若手を雇い育成する人、その人の元で建築を学ぶ人など。メンバーの働き方や生き方は多様になってきました。
時代の変化とともに自分たちの変化を楽しみながら、“ハンディハウス”という文化を広げていきたい。そんな思いで集まったメンバーは、個々のやり方を尊重しながら、一人ではできないことはチームとなって成し遂げられる強さを持っています。
いつしか全国各地でハンディのメンバーが活動するようになり、全国の人が自分の家について語れるようになっていたら。暮らしだけでなく、生きることへの楽しみにもつながると信じています。
そのためには、オーナーさんと一緒に家づくりに取り組むつくり手を全国に増やし、ネットワーク化していくことも、私たちのビジョンのひとつ。「それってハンディハウス的だね」そう言われるような家づくりの文化を、世の中に生み出していけるように。
つくり手たちがこれからの生業のつくり方と在り方を考え、建築業界全体が良い方向へと向かっていけるような活動も行っていきます。
noteでは、オーナーさんがハンディとの家やお店づくりを通して得た、暮らしの変化やそこへの思い。そして、ハンディメンバーの多種多様な生き方を随時ご紹介していきたいと思います。ぜひ読んでみてください!
HandiHouse project公式サイトはこちら https://handihouse.jp/