頭の中の水風船
次男の頭のなかには、小さな水風船があるらしい。
正式名称は「くも膜のう胞」。
低身長の検査のためにおこなったMRI検査で、偶発的に見つかった。
後頭部のちょうど真ん中あたり。
髄液が溜まった水風船が、彼の脳の中にあるという。
これ自体は先天性の良性疾患で、特に悪さをするものではないそう。
「ほくろと同じような感じで、あること自体は問題ではありません」
丸メガネが似合う若い男性の医師はそういったけど、脳にある水風船と皮膚のほくろの間には、それなりに差があるように感じる。
まあとにかく、次男の頭のなかには生まれた時から水風船があって、それがいま2センチくらいで、多分それ以上大きくなることはなくて、彼は死ぬまでその水風船を頭のなかに入れたまま生きていくってことらしい。
なぜか私はその話を聞きながら、鮮やかな色をした、夏の公園にあるような水風船をイメージしていた。
メガネの先生がいうには、特にそれがあることによる影響はないとのこと。
でもなんとなく、次男の天真爛漫な性格と水風船の存在は、通ずるところがある気がした。
いつもニコニコと屈託がなく、自由でやけに楽しそうな彼の性格が不思議だったんだけど、頭のなかに水風船があるといわれたら、あーそういうことか、みたいな。
だって夏の公園の水風船って、もれなくめちゃくちゃ楽しいじゃん。
実際は因果関係なんて1ミリもないんだろうけどさ。
たぶん、私はこの先、彼の個性的な面を目にするたび、頭の中の水風船を思い浮かべるだろう。
くも膜のう胞の発生率は1000人に1〜3人程度。
ちなみに次男の低身長は度を越していて、同じ月齢が1000人並んでも1番小さいといわれている。
スペシャリティだなぁ、と思う。
スペシャリティな彼は、今日も天真爛漫に笑っている。
その脳内に水風船を携えながら。