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恋は突然に20XX年1月8日、AM5:25。 画面が完全にブラックアウトしたノートパソコンの前で、私の頭は真っ白になっていた。 神様。 確かに私は、この『彼氏』様と、2年間別れたいと言い続けてきました。 歴史に名を残すメンヘラで、サイコパスで、クッッッッッソきまじめで、超病み系すぎる『彼氏』様と、別れたいと願ってきましたよ、ええ。ええ。そりゃあもうツイッターのタイムラインを毎日「もうむり」「つらい」「逃げたい」といったワードの連続で荒らしまわるくらい、切望してきましたとも
私が米津玄師のアルバムで一番聴いたのは「BOOTLEG」なのだけども、「LOST CORNER」も負けず劣らずっていう感じなので、備忘録がてら。この感想は解釈ではなく私のフィーリングなので、本人のインタビューとかと乖離してても許してくれ。 アルバム全体の印象としては、最初から最後まで、車に乗ってどこかへ行こうとしてなんかいろいろなくしまくって結局どこへも行けませんでした、みたいな感じ。米津の曲がどこへも行けないのはいつものことなんだけど、なんかめっちゃ食ってるし、食べるとい
6月は祝日がないので、特に用事はなかったが有休を取った。惰眠を貪ろうかと思っていたが、陽が昇る頃に起きて、映画「違国日記」を観た。 画面全体の印象としては、是枝裕和監督作品「海街diary」やソフィア・コッポラ監督作品「SOMEWHERE」みたいな感じだった。ヤマシタトモコの原作を既読の私からすると、原作で肝要だった各所のメッセージを薄めているという感覚もあり、率直にいいか悪いかを聞かれたら「作品としては微妙」と言う。 例えば、森本千世が、女性という性別ゆえに蒙る理不尽に
過去5年くらいまともに活字が読める感じではなかったのが今年は毎月読めたので、月ごとに読んだ本のまとめ。感想は殆どツイッターからの再録。 January/山内マリコ『あのこは貴族』 2022年のうちから「2023年の初めに読む本はこれ」と思い、取り寄せた本。 問いは「私が私として生きられる場所はどこか?」ということだと思うけれど、葛藤が浅くていろんな社会課題をつまみ食いするような展開なのでちょっと肩透かしな感じもした。もっと多層的で複雑なテーマだと考えているからかもしれな
BOOTLEGのカバージャケットがエドワード・ホッパーみたいだと人に言われて、見てみたら確かにホッパーのようだと思い、ちょうどそのとき書いていたこの曲に米津は「Nighthawks」と名づけたらしい。シカゴ美術館に所蔵されているNighthawks(夜更かしする人々)はホッパーの最も有名な作品である。どこに建っているかも明らかではない夜のレストランPHILLIESで、一組の男女、一人の男、一人の店員が揃っている。 私は最初、米津がホッパーの作品からインスパイアされてNigh
掌編「La Maja」 北方の山脈の向こう、隣国で勃発した革命の気配が流れ込み始めている危機的な時世、夫である国王陛下が改革派の国務大臣を左遷した。次いで、相対する派閥、生粋の大貴族である公爵をその任に就けたけれども、公爵は何ら有効な手立てを打てず、しばらくして失脚した。代わりに国務大臣に任じられたのは、若干二十五歳の青年である。平民出身、十七の時分に近衛隊に入隊している。陛下に進言し、推挙したのはわたくしである。青年はわたくしの気に入りだった。五年前の話だ。 ますます危
2022年5月16日、米津玄師のデビュー10周年。おめでとうございます。 で、ナタリーの記念特集でAyase、syudou、須田景凪、菅田将暉、Vaundyがプレイリストを組んでいて面白かった。 特にAyaseの選曲はまんま俺すぎて笑った。私が組んだのか……? テーマ「まま流し推奨米津玄師プレイリスト」、わかりみが過ぎるAyase。 春雷、推されている(3)。次点でPale Blue、クランベリーとパンケーキ、死神、メランコリーキッチン、再上映(2)。 Excelにリスト
原作・堀越耕平の少年漫画『僕のヒーローアカデミア』の劇場版3作目「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE:ワールド・ヒーローズ・ミッション」を6回観に行ったので感想を書きたいと思う。 実は、8月6日に公開されてからほぼ2週間置きペースでこの映画を鑑賞していたのだけど、ぼやっと日記に書くだけできちんとまとめていなかった。というのも第一に、私はここ10年ほどの少年漫画に疎いので、感想を述べるのにそもそも若干及び腰なところがある。第二に、この原作漫画はMCUにたぶんめちゃくち
セリーヌ・シアマ監督作品、映画「燃ゆる女の肖像」を観た。メニエール病を罹患してからの私はほとんど映画から遠ざかっているので近年の傾向はさっぱり浦島太郎なのだけど(映画館であれ家であれ長時間視聴することに負荷が強くすごく体力と気力を使うため足踏みしてしまうのだった)、2020年に映画好きの中で盛り上がっていたのが鮮明で、久しぶりにあぁ観ておきたいな、と思ったのだ。地元ではもう上映したのだろうかと調べたら、1月15日から2週間だけ上映するというので楽しみにしていた。 1月15日
ヨルシカのストリーミングライブ「前世」を観た。よかった。よかった、という安直な感想しか思いつかないくらい視聴後はわりと放心していて、それでも放心の中、感じたことを手繰り寄せた。「水、海、小宇宙、原初、全てが生まれる場所、だけど水槽は擬似的な空間でしかなく生まれるものなく私たちはどこへも行けない、それでも君といたい、眠るように、春を待って。パフォーミングアーツ、インスタレーション的な、ライブとは思えない芸銃的な作品」。アーカイブ配信があるのはわかっていたけれども、最初の感動はそ
引きこもりも程々にしようとハローワークのついでにサンリオ展に行ってきた。毎日バナーを作っていて知識不足に唸っているのでデザインの引き出しを増やすのにも丁度よいかなと思い。 コロナ禍になってから閉館の2時間前くらいに美術館へ行くようになったのだけど、混んでいなくてよい。殆ど人がいなかったので写真撮り放題だった。撮影可の展覧会増えたなあ、まあ写真を撮っていると思考が疎かになるので良し悪しはどっこいどっこいな気はする。じっと作品をみて対話をする意識は撮影していると結構どこかへ行っ
私は菅田将暉の歌う「まちがいさがし」が好きだ。どれくらいかというと、いっとき(おそらく2ヶ月ほどの間)、朝はこの曲しか聴かず、数日おきに行く一人カラオケで3時間ぶっ通し「まちがいさがし」しか歌っていなかったくらいである。 米津玄師「STRAY SHEEP」には、楽曲提供者である米津自身がセルフカバーしている「まちがいさがし」が収録されている。 インパクトの強いリード曲「カムパネルラ」から始まって、詞とリズムで捉えどころなくフラフラと舞い遊ぶ「Flamingo」、ドラマ主題
「あゆが好きだ」と公言することは、「私は孤独だ」と告白することによく似ていて、私は、親しい友人にもほとんど話したことがない。 ▽▲▽ 2020年7月1日に放送された日本テレビ「今夜くらべてみました」で、社会学者の古市憲寿氏が「浜崎あゆみ」について熱弁しているのを見た。あゆが孤独に築き上げた一時代、その真っ只中で、彼女の音楽に救われて生きていた少女の一人だった私にとっては、氏の解釈には共感しかなかった。 「ayuの曲って、すごく暗くて孤独で、それがやっぱり、当時ウケたなっ
これが愛じゃなければなんと呼ぶのか 僕は知らなかった 米津玄師『馬と鹿』は、夢をあきらめられない人の歌だ。 成功していない、勝利していない、どこにも辿り着いていない、だけど夢を捨てられずに、夢のために生きている人の歌だ。 夢追う人の歩みはけっして明るくない。前途洋々なんかじゃない。努力がかならず報われるわけじゃない。夢は、だいたいいつも、痛いことばっかりだ。叶わないことのほうがきっと多い。花はひらくか。ひらかないかもしれない。それでも「僕」は、あきらめきれずに追いかけてい