男性は「内臓脂肪」、女性は「皮下脂肪」 なぜ?
◆メタボリック・ドミノ
メタボリック症候群という言葉を聞いたことのない人は少ないでしょう。
「糖尿病」「高血圧」「高脂血症」などをいいます。
これらが原因で、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、認知症など、
命に係わる病気が引き起こされます。
有名な「メタボリック・ドミノ」という考えがあります。
メタボリック症候群をドミノ倒しに見立てたモデル図です。
「生活習慣」が発端で、内臓脂肪が増える「内臓肥満」を引き起こします。
「内臓肥満」のドミノが倒れると血糖が上がりやすくなります。
そして、「糖尿病」「高血圧」「高脂血症」のドミノがバタバタと倒れます。
いったん倒れ始めたドミノは、下流に行くほど勢いづき、
止めるのが難しくなります。
一番の対策は、上流で止める、
つまり、生活習慣に気をつけることでしょう。
この「メタボリック・ドミノ」の矛盾点を指摘するのは熊本悦明教授です。
◆メタボリック・ドミノの矛盾
最初のドミノである「生活習慣」とは、
具体的にはどういうことでしょうか。
食べすぎ、飲みすぎ、タバコ、運動不足、寝不足でしょう。
もっと突き詰めれば、「栄養過多」と「運動不足」と言えます。
これが最初のドミノだとすると、男女の平均寿命の差が説明できません。
平均寿命は女性は87歳、男性は81歳と6年の差があります。
しかし、生活習慣に大きな違いがあるのでしょうか。
男性の方が食べすぎで運動不足なのかというと、そうとも思えません。
甘いものに目がないのは女性もですし、
女性が男性より運動しているとも言えなさそうです。
生活習慣は、男女、似たり寄ったりではないでしょうか。
謎を解くカギは、2番目のドミノにあります。
◆内臓肥満のドミノ
2番目のドミノは「内臓肥満」です。
太っている男女の、見た目は同じようですが、大きな違いがあります。
脂肪がついている場所が異なります。
ざっくり言うと、男性は「内臓脂肪」であり、女性は「皮下脂肪」です。
どっちが恐ろしいか。
言わずと知れた「内臓脂肪」です。
「皮下脂肪」は、それほどこわくなく、
「メタボリック・ドミノ」の図にも出てきません。
では、どうして男性は内臓脂肪がたまりやすく、女性は皮下脂肪なのか。
それには、男性ホルモンと女性ホルモンが関係しています。
◆エストロゲンとテストステロン
女性の場合、食べすぎた栄養分はエストロゲンによって皮下脂肪になり、
内臓脂肪はたまりにくいのです。
女性はエストロゲンという女性ホルモンに守られていると言えましょう。
50歳ごろ、エストロゲンが枯渇してからは注意が必要です。
同じようにスイーツを食べていては、大変なことになります。
一方、男性が分泌しているテストステロンにも内臓脂肪をためない作用があります。
しかし、40歳過ぎるとテストステロンは減少し、
それに伴い内臓脂肪が増えてきます。
この差が、平均寿命6年の差と思われます。
男性が女性より長生きするには、
テストステロンの減少を6年以上遅らせればよいことになります。
そのためには、やっぱり「運動」でしょう。
参考文献
1)熊本悦明:『男はなぜ女より短命か』,実業之日本社,2013