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はじめてのnote|文系の私が院進を決意した理由

「夢中になれるものがあってうらやましい。自分には何にも夢中になれるものがない。どうやってそういうものを探したらいいのかもわからない。」

津村記久子「サキの忘れ物」 p.13

私が夢中になれるものって何?

ワークショップに夢中?私は今のままで夢中と言っていいのかな。

大学3年生10月 就活してみるものの納得いかない

私は周りが就活に励む中、どことなく上の空だった。
親からはいいところに行くようにと無言の圧があり、文系の学部だから周りは就活する人しかいなかった。
私もよくわからないまま、就活アドバイザーの何かに登録し、よくわからないままおすすめされた会社の説明会に出てみた。
全くしっくり来ない。
何か違う、これじゃない。
でも、しなければいけないことはしなければいけないので、
「就活どんな感じ?」と聞かれれば
「もう大変だよ〜」と答え、
「だよね〜」と上辺だけの会話をゼミでひたすら繰り返し、
なんとなく過ごしていたらいつの間にか1月になっていた。
今思えば、自分は何者かになれるとそう信じていたかったのだと思う。
自分のことをよく分かっていないくせに、
会社の説明会に行っては「何か違う」と難癖をつける。
周りは上辺では何もしていないと言いながらどんどん進めているのに。
焦りばかりが増えて、でも自分はどうにかなるだろうという変な傲慢があった。しかし、それは就活の相談に行ったある先生に突然打ち砕かれる。

「あなたはどうしたいの?」
「あの授業でなぜ私があんなにも夢中になったのか、それを知りたいです。」「それはそう設計していたから。じゃあ何を学びたいの?」
「…」
「じゃあ、あなたは何ができるの?」
「…えっと、イラレとか。」

見栄を張る私が絞り出した、その時1番周りの友人と被らない、少しだけ得意なこと。

「はぁ?」

イラレを始めたのは大学1年生の冬からで、文化祭実行委員のパンフレット制作に必要だからという理由だった。
実は小学校、中学校、高校と、図工や美術の成績は常に5段階中の4か3で、デザインができる人に憧れがあった。小学校3年生の時にかわいいイラストを描いていた友達や、中学2年生の時に受賞していた他の友達、高校では自分で作ったアクセサリーを売っている子もいた。
図工や美術が得意な子はやっぱり何かカッコよくて、私もそうなりたかった。色の組み合わせを見るのも、いろんなパッケージデザインを見るのも、デザインの本を買って読むほど好きだった。
本屋さんでもよくその手の本を手に取っていた。
好きこそ物の上手なれ、とはいうものの、そんなに好きかと問われると自信がなくなる。もちろん、経験値があるわけでもない。
そんな私がすぐにバレた。

「じゃあ他には?」
「……。」

私には今まで長く続いた趣味なんて一つもなく、憧れては真似して、ちょっと飽きては辞めて。挑戦しては、他の上手な人と比べて自分には向かないという言い訳をして辞めていた。
私には何もなかった。
そんな自分が恥ずかしかった。

大学3年生1月 先生との修行が始まる

何度も自問自答して、
私は大学生で最も夢中になった「ワークショップ」を先生のもとで学びたいと思った。

ワークショップとは
「講義などの一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学び合ったり創り出したりする学びと創造のスタイル」

中野民夫「ワークショップ」

徒弟制。先生に弟子入りだ。
あれほど夢中になってしまうものを創り出す先生の頭の中を知りたかった。

さあ、修行は何から始まる?とドキドキしていたら
まさかの教室の掃除から始まった。
次に本棚の整理。
ゆるそうな修行?とんでもない。
先生はこだわりがとてつもなく強い。
しかも、それを全て教えてくれるのでもなく、
後からすでに教えたことだろうと言うかのように指摘してくる。
こんなに緊張感のある掃除や片付けがあるだろうか。

でもこの一歩が私にとってはありがたいものだったと今では思う。
掃除や片付けによって「段取り力」が身についてきたのだ。
本棚の整理は先生の頭の中を覗く時間になった。

この合間に自分が何者になりたいのかと質問をされる。
もちろん曖昧なことしか答えられない。
先生と共に自己理解を深めていく。
それをメモする毎日が始まった。
大学3年生の1月から3月の3ヶ月でノート4冊分。
いつか、noteに残したいと思う。

ワークショップを学ぶために先生に弟子入りしたはずなのに、
まだワークショップという文字すら目にしていないまま、大学4年生になる。

大学4年生2月 ワークショップを学ぶために、数学のゼミに移った

先生は定年退職のために、ちょうど私の代からゼミを持っていなかったので、私は2番目に面白そうな街づくりの研究をするゼミにいた。
そのゼミから先生が勧めてくださったゼミに移った。
数学のゼミ。それも、前の年にできたばかり。つまり、1期生。
卒業研究は中学1年生を対象に「数理ワークショップ」をやることになった。
正直なことを言うと、とても大変だった。
ワークショップを0から作り上げる、しかも私は大の苦手の数学。
でも、苦手な私だからできるワークショップがあると切り替えた。
数学を苦手な人(私を含む)は、数学の授業で考えることも話すこともやめてしまう。
それなら、思わず話したくなっちゃう数理ワークショップにしようと考えた。
数学×演劇ワークショップだ。
方程式を題材にして、
方程式を言語化し、それを問題文にし、最後に映像化する
という構成にした。
等号の意味を考えさせられたし、方程式の仕組みも分かりやすくなった。
そして、結構面白いものになった。
この研究で私はずいぶん成長したと思う。

大学4年生4月 長期インターン

ワークショップに関するNPO法人でアルバイト(インターン)をさせていただくことになった。
社会人向けの講座の準備だ。
ワークで使うセットを50個くらい作ったり、
講座で使うときに分かりやすいように配置の工夫をしたり、養生テープでメモをつけたり。
ここで、先生との修行で培った「段取り力」が活きる。
今もこのNPOにとてもお世話になっている。

大学4年生5月〜8月 ワークショップの実践

大学、小学校、劇場などで、子供向けワークショップを5回ほど行った。
ワークショップに参加する側は楽しいことばかりだったが、作る側は大変なことばかりだ。
しっかりと準備しておくのはもちろん、当日の臨機応変さが求められる。
実践しては振り返りをして大反省の4ヶ月だったが、やりがいも感じられ、ワークショップを自分がやる意味が少しずつ見えてきた。

大学4年生9月 院試

先生がおすすめしたのが、まさかの別の大学の先生の研究室だったので
私は院試を受けることになった。
内容は小論文の試験と面接。
8月に卒業研究のためのフィールドワークに行っていたので、
帰ってから10日間くらいみっちり対策をした。
修行のときのように、常にメモを持ち歩き、対策のために読んでいた本の内容やそれに対する意見が自分の言葉のようにすらすら出てくるまで頑張った。
無事、合格した。
一つしか受けなかったからヒヤヒヤした。

大学院1年生4月 オンラインで授業を受けることにした

実は大学3年生の頃から心の病気になっていた私(それもあって、先生のところで修行する道を歩んだのかもしれない)は、オンラインで授業を受けることにした。
社会人大学院ということもあって、ゼミ生は私以外みんな社会人。
授業で討論するときもほとんどが皆社会人。
最初は緊張していたが、だんだんと面白くなっていった。
自分の言葉が増えてきた気がしている。
研究の進捗…。

大学院1年生9月(今) 1ヶ月で就活を終えた

8月の夏休みから就活を始めた私は、運良く素敵な会社と巡り合い、
無事内定をいただけた。
条件は「自分らしく、嘘をつかないで働けるところ」。
見栄っ張りの私じゃなくて、そのまんまの私。
今までワークショップをやってきた自分のこと、
そしてワークショップをその会社でやらせてくださいとプレゼンした。
最後に是非今すぐやって欲しいですと握手していただいたときは嬉しかった。


「何かに夢中な自分」は続けてみると見えてくるのかもしれない

何かに夢中になりたい。
誰もが願うことだと思う。
飽き性な私がワークショップに夢中になり続けているのは、
この3つをやってきたからだと思う。

  1. 最初に感じたワクワク感を信じ続ける
    私の場合:地味だな、大変だなと感じることがあっても、最初の直感を忘れないことが大切

  2. なぜワクワクしたのか、それを自分の言葉で表現し続ける
    私の場合:得た気づきや学びをノートに書き続ける、先生や友人に話すなど他者を通して自己理解を深める

  3. いろんな方法でワクワクと繋がる
    私の場合:先生との対話、ゼミでの議論や研究、大学院での学び、インターンでの経験、就活の中での気づき、本との出会い

大学院に進学して良かったと言える自分になれるように

文系で院進するなんて、と親にも言われたし、友人にも驚かれた。
確かに、友人たちは社会人で私の先にいるように思えて、焦ることがある。
でも、今の私は大学院に進学して良かったと思っている。
学ぶことが好きな自分に出会えたからだ。
そして、自分を説明することができるようになってきたからだ。
社会人になれば、肩書きがついて、それが自分を説明するものになるだろう。でもなんだかそれってつまらない。
自分自身を説明するものがあってもいいじゃないだろうか。
それが、私にとってはワークショップであり、このnoteなどの記録になるのだと思う。


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